Oto Hiax "Oto Hiax"

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Artist: Oto Hiax
Album: "Oto Hiax"
Label: editions Mego
Year: 2017

Tracklist
01. Insh (2:29)
02. Flist (3:47)
03. Dhull (1:46)
04. Eses Mitre (6:33)
05. Creeks (5:15)
06. Bearing & Writhe (1:34)
07. Littics (2:35)
08. Thruft (3:48)
09. Lowlan (4:42)
10. Hak (3:39)
11. Hok (3:37)
12. Loyal Odes (5:47)


Seefeelのマーク・クリフォードとLoops Hauntのスコット・ゴードンによるエクスペリメンタル・プロジェクトOto Hiaxが、2011年の結成以来6年の歳月をかけ、満を持して発表したセルフタイトルの1stは、実に様々な音(正に"Oto"?)が絶妙にレイヤーされ、ミニマルに反復しながらもポップネスを滲ませる快作でありました。

お恥ずかしながら、私はSeefeelもLoop Hauntも聴いたことがないので、彼ら二人がそれらメイン・プロジェクトで聴かせる音は存じ上げていないのですが、今作に収録された楽曲においては、多くの箇所で人懐こいメロディが慎ましやかに鳴り響いているのが聴き取れるでしょう。
それらのメロディは、00年代のエレクトロニカ/電子音楽(特に、個人的に偏愛している12K)にも通じるような牧歌性を帯びていますが、(特にそれらの類の音楽がそこそこのムーヴメントを形成した際に、雨後の筍のように現れた)創意工夫の感じられない凡庸な
ユニットが漫然と羅列し、それに乗っかったリスナーが「美メロ」的に持ち上げたような安易な鳴り方はしていません。

それらメロディは決して楽曲の主要素となることなく、室内楽的で優雅なテクスチュアを持った楽音や、サイケデリック・ロック/クラウト・ロックを想起させるような軽く薄いディストーション・サウンド、ディープで透き通ったドローン、アナログシンセと思しきオールドスクールな質感の電子音、そしてゴトゴト・ゴツゴツとした具体音などと並置され、その中に埋もれ、そして時に浮かび上がります。

それらは入れ代わり立ち代わり浮かび上がっては消え、まるで万華鏡のようにサイケデリックな酩酊感を聴く者に経験させるでしょう。
さらに、随所に即興的な空気を滲ませるような展開を見せつつも、楽曲はミニマルな反復を基本的な骨子として成り立っているものばかりで、そのストイックな所作にはやはりeMegoらしい前衛的な姿勢が見て取れるように思います。

しかしながら、冒頭でも述べましたように、主要素として押し出されることなく、控えめに仕込まれた牧歌的なメロディが本作を単なる実験的な作品だけでは終わらせず、ポップネスとの両立を達成しています。
ここにある音は、最先端の、カッティングエッジなものではないかもしれませんが、非常に豊かなものだと思いますし、00年代の電子音楽の、理想的な模範解答(の一つ)と言っても、間違いはないでしょう。


Andrea Belfi "alveare"

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Artist: Andrea Belfi
Album: "alveare"
Label: IIKKI
Year: 2017

Tracklist
01. Vano (7:38)
02. Statico (3:32)
03. Grigio (9:24)
04. Abito (5:20)
05. Passo (8:34)


近年デヴィッド・グラブスとのコラボレーションなどでも注目されているアンドレア・ベルファイの新作が、アートブックとレコードというコラボレーションによる美術作品を展開するイタリアのレーベルIIKKIの第二弾作品として発表されました。

『蜂の巣』を意味するイタリア語を冠する本作は、第二次世界大戦後のイタリアで、先進的な建築家達によって建造された巨大集合住宅(Nuovo CorvialeやRozzol Melara)をテーマにしたもので、アートブックの方はマティアス・ハイデリック(Matthias Heiderich)という方による、それら建造物の写真集となっているようです。

多くの人が住まうことができるよう、合理性を追求したと思われる巨大集合住宅は、日本で言えば都営住宅・市営住宅のようなものに似ているのではないかと、写真を見る限りでは思われます。
近未来的ではありつつもどこか画一性からくる不安を煽るような建造物の雰囲気は、湿気の多い日本ではなにか淀みが生まれ、ホラー映画の舞台として多用されるものであるのは皆様御存知でしょうが、マティアスや、そしてベルファイらイタリア人にとっては少々趣が違うようです。

このアートブックに対してベルファイは、自身による呪術的なドラム/パーカッションと、シンセサイザーによって生み出されたひやりとした音響でもって形作られた音楽を提供しています。(3及び4曲目にはゲストミュージシャンが参加)
打楽器の有機的な響きと、シンセの無機質な響きとが絶妙に和合しながらリヴァーブをかけられ、まさにマティアスがNuovo CorvialeやRozzol Melaraを表現して言うところの「無限の廊下」にて反響し続けているようにも思える音空間を作り出しています。

シンセサイザーによるドローンが描く音程の推移は、非常に弱々しくもノスタルジックな感情を喚起し、その上を舞うパーカッションや電子音はかつてそこに住まう人たちが見た夢の断片のようでもあります。
そこには、人の生活という「自然」と画一的な住居という「不自然」が同居したがゆえの、一種独特な魅力が存在するようにすら思えます。

ベルファイの音楽だけでも非常に素晴らしいのですが、アートブックの方も買おうかな、なんて迷ったりもしています。
どうしようかな…(笑)


2017年2月の新譜

早いものでもう2月ですか。
今年も残す所あと11ヶ月を切りましたね(笑)…なんて、よくあるジョークはおいておいて、今月の購入予定です。

Daniel Herskedal "The Roc" (Edition Records)


Joshua Sabin "Terminus Drift" (Subtext Recordings)

※昨年末に配信のみで先行リリースされた、アルバム未収録曲です。

Kassel Jaeger & Jim O'Rourke "Wakes on Cerulean" (editions Mego)


The Necks "Unfold" (Ideologic Organ)


Taylor Deupree "Somi" (12K)


yMusic "First"(Communal Table Records)


Σtella "Works for You" (Inner Ear Records)


水曜日のカンパネラ "Superman" (Warner Music Japan)


今月はテイラー・デュプリーの3年ぶりの新作に始まり電子音響もの、北欧ジャズ、ミニマルバンド、インディークラシック、邦洋ポップスなど、かなり幅広い月になりそう。
いずれも楽しみであります。

【追記】
カセル・イェーガーとジム・オルークの共作が発売日早まったっぽいので追加しました。

Arto Lindsay "Cuidado Madame"

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Artist: Arto Lindsay
Album: "Cuidado Madame"
Label: P-Vine./Ponderosa
Year: 2017

Tracklist
01. Grain By Grain (3:30)
02. Each To Each (3:06)
03. Ilha Dos Prazeres (3:46)
04. Tangles (3:52)
05. Deck (3:22)
06. Vao Queimar Ou Botando Pra Dancar (3:31)
07. Seu Pai (4:05)
08. Arto Vs Arto (2:12)
09. Uncrossed (4:04)
10. Unpair (3:54)
11. Pele De Perto (2:30)
12. Nobody Standing In That Door (4:18)
※12は日本盤のみのボーナストラック


NYのノー・ウェイヴ・シーンでデビューし、一筋縄ではいかない遍歴を辿る音楽家アート・リンゼイの、前作"Salt"から実に13年ぶりとなる新作が、今年頭にリリースされました。
これが今年一発目の新作となった方も多いのではないでしょうか。(私はHelmでしたけど)

そもそも、彼の音楽的なルーツにあるのは、やはり多感な幼少期~青年期を過ごしたブラジルの音楽にほかならないと思います。
キャリアの最初期を飾るDNAでの演奏こそギターの調律無視(≒パーカッシヴ)な奏法によるアヴァン性が突出したものでありましたが、彼の根底にはブラジル音楽が、ひいてはそれにおいて後ろ向きな感情(サウダーヂ)がクールに歌われることで醸される独特の情感(多く見られる表現を借りて「官能」というのが適当かもしれません)があったのは間違いないでしょう。
そう思えば、今作の歌詞の多くにおいて何らかの「不在」が歌われているように思えるのも不思議ではないように思えます。
なぜなら、サウダーヂという感情の本質は「幸せだった過去」が「今は存在しないこと=不在」にあるのですから。

Ambitious Lovers以降はそういった自身のルーツを素直に出し、ソロの諸作においてその傾向はいっそう強まりました。
特に前作"Salt"はその極地とも言える作品で、ノイジー/インダストリーなビートによるグルーヴと残響の生み出す奥行きとが、彼の紡ぐメロディ/歌詞をいっそう引き立てる、重厚な雰囲気の感じられるものでした。

今作はそれに比べるとさらに歪さを感じさせる音が増え、DNA期を思い出させるノイズギターも今まで以上にフィーチュアされているように思いますが、「不在」を歌うという内容とは裏腹に、その感触はとても軽やかで小気味良く、どこか爽やかにすら思えます。
今作で彼は「カンドンブレとゴスペルの融合」というテーマを念頭におきながら作成したとのことですが、実を言うとカンドンブレ音楽を特徴付けるリズムというのは、彼が昨年プロデュースしたロウレンソ・へベッチスのデビュー作でも非常に効果的に使われており、あの作品に参加した打楽器奏者3名は今作にも名を連ねています。
ヘベッチスの作品では「ビッグ・バンド・ジャズ/ラージ・アンサンブル」との組み合わせが試みられたカンドンブレ音楽は、今作ではゴスペル、つまり「歌」との組み合わせが試みられたというわけです。

複数の打楽器が複雑に絡み合い、速いのか遅いのか、スピード感覚を狂わせるようなサイケデリアを生み出すカンドンブレのリズムは、アートのギターを始めとするや様々なノイズ、盟友メルヴィン・ギブスによるベースライン、デジタルビート、そしてアート自身のか細い歌声など、音楽的/非音楽的に関わらず全ての音を飲み込み、統合するかのようにも聴こえてきます。
そういった印象に起因するのだろうと思いますが、「実験と官能」という表現であたかも彼がそれを両立しているかのような評がそこかしこで見られるなか(事実私も前作のレビューでそういったことを述べたようにも記憶しているのですが)、今作を聴いていると彼にとって主たる目的なのは「官能」の方で、「実験」は(「非実験」も含め)それを効果的に表現するための手法に過ぎないのかもしれない、と感じました。

「実験と官能の使徒」ではなく、ただ純粋な「官能の使徒」あるいは「マエストロ」として実験的/非実験的に関わらず効果的な「音」を効果的に活用することで生まれた「職人的な快作」こそが、今作の本質なのかもしれません。

The Most 10 Discs of 2016

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さて新譜/再発モノときてラストは旧譜ベストということで、2016年の総まとめも漸く終了です。
新譜中心のリスニングだったこともあり、あまり旧譜は聴けていないのですが、5枚ずつコメントを入れて発表させていただきます。(( )内は発表年または発売年)

David Bowie "Scary Monsters" (1980)
Pierre Boulez "Le Domaine Musical 1956-1967" (2015)
Prince "Lovesexy" (1988)
Tony Conrad with Faust "Outside the Dream Syndicate" (1972)
冨田勲 "月の光 Ultimate Edition" (1974/2012)


昨年は様々なミュージシャンが亡くなった関係もあり、それらミュージシャンの作品を聴くことが多かったように思います。
ボウイプリンス(殿下)はここ数年離れていたのですが、ディスコグラフィを聴き返す切欠が彼らの死であったということに申し訳無さを感じつつ、やはり素晴らしい、良質な作品を何枚も残したレジェンドであったと改めて実感しました。
ボウイについては新作"★"も素晴らしかったですし、改めて聴いた中では"Hunky Dory"などにも心惹かれましたが、やはり個人的な偏愛盤を、ということで1980年作の"Scary Monsters"を。特に、'Ashes to Ashes'は自分のキャリアをメタ的に、アートに昇華してしまうという彼の技法の最たる名曲であり、彼が自分の死を(不確定要素はあったとしても)アートとしてしまったことに通底するのではないかと思います。
殿下の方は新作を聴けなかった(罰当たり)のですが、改めて聴き直した中ではやはり"Lovesexy"が最高傑作かな、という結論にいたりましたので選ばさせていただきました。
さらに、2016年の訃報で改めて初期のドメーヌ・ミュージカル時代のBOXに触れることができたブーレーズ、元素記号表レーベルのデラックス・エディションを持っていたので購入は見送りましたが、改めて再発のなされたトニー・コンラッド、そして聴こう聴こうと思いながら聴けていなかった冨田勲など、改めて、素晴らしい芸術家達が何人も亡くなり、一時代の終わりを感じさせる一年であったと思います。
ここに作品を挙げていない方も含め、改めてご冥福をお祈りいたします。


Grateful Dead "Blues for Allah" (1975)
菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール "戦前と戦後"(2014)
KOHH "Dirt" (2015)
水曜日のカンパネラ "ジパング" (2015)
THA BLUE HERB "Stilling, Still Dreaming" (1999)


そして、昨年になってようやく手を出した作品も数多くありました。
年始辺りから日本のHIPHOPにちょろちょろ手を出しており、キングギドラなど王道なところから抑えていっておりましたが、THA BLUE HERBのヒリヒリとした緊張感にはまずやられましたし、好評は聴いておりましたが宇多田ヒカルの新譜への参加もあってやっと聴いたKOHHも、リアルな閉塞感や諦念がパッケージされた鬼気迫る作品だったと思います。
そんな中、HIPHOP枠に入れていいかどうか分かりませんが水曜日のカンパネラにもハマり、ギャグすれすれ(というかギャグ)の言葉と以外にシリアスなトラックのギャップを楽しみました。
他には、2016年の新譜として出たコンピ"Day of the Dead"に触発されて改めて未聴作品にアプローチしたThe Grateful Deadや、ふと聴いた菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールなども素晴らしい作品でした。


こうやって見ると邦ミュージシャンが多いですね。
やはり個人的に未開のジャンルだった邦HIPHOPに手を出したのは大きかったのかもしれません。

今年の旧譜はどうなるか、と思いますが、年始から突如カンタベリー・ミュージック(というかソフツ)がキテるのでそっち関係から掘り下げることになる…のかな?
何にせよ、素晴らしい旧譜との出会いも、新譜同様期待したいと思います。

改めまして、本年もよろしくお願い致します!
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