Thomas Brinkamann "A 1000 KEYS", "A Certain Degree of Stasis"

brinkmann1000keys.jpg

Artist: Thomas Brinkmann
Album: "A 1000 KEYS"
Label: editions Mego
Year: 2016

Tracklist
01. PSA (3:12)
02. LHR (5:48)
03. SYD (4:36)
04. VIE (6:58)
05. JFK (5:50)
06. KGD (7:24)
07. TLV (3:26)
08. TBS (3:24)
09. SFO (0:45)
10. MEX (3:27)
11. HEL (0:44)
12. CGN (3:35)
13. LAS (8:12)
14. YWG (4:37)
15. LED (2:17)
16. NRT (3:59)
17. MAD (5:52)
18. KIX (1:27)


brinkmann-acdos.jpg


Artist: Thomas Brinkmann
Album: "A Certain Degree of Stasis"
Label: frozen reeds
Year: 2016

Tracklist
Disc 1
01. A Certain Degree of Stasis (Part I) (48:27)
Disc 2
01. A Certain Degree of Stasis (Part II) (48:45)


ドイツ出身のミニマリスト トーマス・ブリンクマンがこの9月に2つのレーベルより新作を発表しました。
1つはピーター・レーバーグ主宰のeMegoより発表された"A 1000 KEYS"で、もう1つはヘルシンキのfrozen reedsより発表された"A Certain Degree of Stasis"です。
この2作について、まずざっくりと概要を述べますと、前者は同レーベルからの前作"What You Hear (Is What You Hear)"から地続きとも思えるミニマルな作品で、後者はドローン作品ということになります。

ドローンもミニマルの一形態と考えると、両作ともにミニマリズムに基づいた作品であるというようにとることができますが、そのアプローチはまるで正反対であると言えます。(そもそも、"A Certain Degree of Stasis"をディストリビュートしたfrozen reedsというレーベルは、作品数こそ少ないもののモートン・フェルドマンや、アーサー・ラッセルとも信仰のあったアフロ・アメリカンの現代音楽/ミニマリストのジュリアス・イーストマンなど、かなり厳格なミニマリズムを志向した作品を発表しているレーベルですから、本作にはミニマリズムというものに対する何らかの意図があることは明白だと思います。)
グランド・ピアノの音をバイナリ・コード化し、「ミニマリズムに対する破壊的なオマージュ」を意図したとされる"A 1000 KEYS"と、硬質で怜悧な質感のドローンに、まるで灰野敬二(や、twitterでのフォロワー様とのやりとりでは大友良英なんて名前も出てきました)のギターのように極度の緊張感を孕んだ即興性の強いディストーション・サウンドが漂う"A Certain Degree of Stasis"と、両作を聴いてみるとその印象の違いに驚かされることでしょう。

私が先に聴いたのははfrozen reedsからの"A Certain Degree..."の方なのですが、この作品には驚かされました。
2012年のアンバーチとの諸作や昨年の"What You Hear (Is What You Hear)"など、ストイックに、そうであるがゆえに執拗に反復されるサウンドそのものが生成する、フィジカルな美を表現しようとするような所作を見せていた彼からすると、こちらで聴かれるディストーション・サウンドは非常に抽象的で空間的(?)に過ぎるように思えたのです。

しかし、その抽象的なディストーション・サウンドの隙間から、延々と鳴り続けるドローンが聴こえるという状況は、即興という極度に有機的で流動的な所作が前景化しているにも関わらず、タイトル通りの『停滞(stasis)』を強く意識させます。
2曲とも通すと1時間半を超える即興的なサウンドを経た後ですら、時間や自分を取り巻く状況が何も変わっていないような、ただ濃密な美を更に凝縮して見せられたかのような感覚が残るのです。
こちらで試みられているのは、即興演奏(?)という異物を混入させることで、むしろドローンの「変化が極端に少ないか、全くない」という性質を際だたせるようなアプローチであるように思えます。

そしてその後、"A 1000 KEYS"の方も聴いてみるとこちらもこちらで、レーベルの解説にある「破壊的なオマージュ」という言葉がまさにぴったりな、パンキッシュと言っても過言ではないサウンドが全編通して展開されておりました。
グランド・ピアノの音の質感はそのままに強烈な打鍵のテクスチュアがほぼ全ての曲を覆っており、その様子からはまるでハンマービート的とも言える強烈さが感じられ、改めて彼の出身であるドイツ、ひいてはクラウト・ロックを思い出させるようですらありました。

正確無比に、音量の強弱以外の一切の変化を拒絶するように繰り返されるサウンドは聴き手の意識を弛緩させ、ただこの音そのものと向き合うことを要求します。
わずか数分の楽曲が永遠のように感じられながら、そのハンマーな音から生まれる暴力的な美しさに徐々に意識が向けられ、それ以外のことを考えられなくなるような感覚に陥ることはまず間違いないでしょう。
前作が執拗な反復そのものから立ち現れる、フィジカルな美を志向した作品であるとすれば、今作はその方法論をさらに一歩進め、これ以上はないとすら思えた前作を凌駕するほどにストイックな反復から、改めてただ音と向き合うことを聴き手に提示した作品であると言えるでしょう。

改めて、前作のレビューでも述べた言葉を繰り返すと、この2作はブリンクマンによる、ミニマリズム(とそれをファッションとして消費しがちな現代の音楽シーン)に対する強烈な批評性を伴った音楽であり、その力は2つの異なった(相反する)アプローチを取ることで前作からより研ぎ澄まされているように思えます。

ただ「繰り返す」ということの原始的な美しさを、我々は改めて心に刻まねばなりません。


'CGN + KIK Megobounce'


'A Certain Degree of Stasis (Excerpt)'
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

vuoy

Author:vuoy
音楽好きです。
情報に間違いなどありましたらコメント欄で結構ですので気軽に連絡ください。
Last.fm
twitter

【注意事項】
まれに、当blogの記事をオークションの商品説明に引用またはURL貼付されているページを見ることがあります。
当blogの記事はあくまで個人の感想であり、ミュージシャン本人以外の利益に供する目的はありませんので、商用目的での無断引用/URL貼付はご遠慮願います。
どうしてもという場合には、twitterなどでご相談いただければ検討しますので何卒ご理解いただきますようよろしくお願いします。

アクセスカウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
vuoy's Profile Page
Twitter
検索フォーム
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
193位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
50位
アクセスランキングを見る>>
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR