Hamasyan, Henriksen, Aarset & Bang "Atmosphères"

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Artist: Hamasyan, Henriksen, Aarset & Bang
Album: "Atmosphères"
Label: ECM
Year: 2016

Tracklist
Disc 1
01. Traces I (6:52)
02. Tsirani Tsar (5:44)
03. Traces II (4:32)
04. Traces III (5:46)
05. Traces IV (5:15)
06. Traces V / Garun a (12:39)
07. Traces VI (4:50)
08. Garun a (var.) (3:51)

Disc 2
01. Traces VII (9:28)
02. Traces VIII (5:59)
03. Shushiki (4:41)
04. Hoy, Nazan (3:51)
05. Traces IX (5:53)
06. Traces X (5:56)
07. Angel of Girona / Qeler Tsoler (3:35)


アルメニア出身のピアニスト ティグラン・ハマシアンと、トランペッターのアルヴ・アンリクセン、ギタリストのアイヴァン・オールセット、エレクトロニクスのヤン・バングという3人のノルウェー出身のミュージシャンによりECMから発表された"Atmosphères"は、まさにそのタイトル通り、空間に音を満たしていくような繊細なインプロヴィゼーションを基軸とした作品だと言えるでしょう。

メインで旋律的な部分を担当するティグランとアンリクセンに、ライヴ・エレクトロニクス(特にドローン)によりその底部を支えるバング、あるいは2人に対してアブストラクトなカウンターラインをぶつけたり、スライドノイズを加えたりするオールセットという感じの役割分担が全編を通してなされ、そこから生まれた楽曲は'Traces'というシリーズ作(組曲とも、変奏曲ともちょっと違う感じなので…)として本作の大部分を占めています。

その他では、アルメニア出身の司祭兼作曲家であるコミタス・ヴァルダペットの楽曲(ディスク1の2・6(後半)・8曲目とディスク2の3・4・7(後半)曲目)と、スペイン出身の作曲家イサーク・アルベニス(ディスク2の7曲目(前半))という、19世紀後半の作曲家の楽曲を盛り込むことで、演奏家である彼らを合わせると北欧(アンリクセン、オールセット、バング)、東欧(ティグラン、コミタス)、西欧/南欧(アルベニス)という汎ヨーロッパ的な空気を存分に漂わせています。

興味深い点としてまず挙がるのは、やはりティグランとアンリクセンの紡ぐメロディの微細な違いではないかと思います。
どちらも辺境ヨーロッパに強く感じられる神秘性/霊性を存分に湛えたラインを聴かせてくれるのですが、北欧の寒々しい空気に起因する透明感と鋭さ、そして温もりを求めるかのような情感的なラインを聴かせるアンリクセンと、じめっとした呪術性やどこか妖艶な空気を孕んだ、なんとも色気のあるラインを聴かせるティグランとは、好対照でありながらもどこか根源的なセンスはつながっているように感じられます。

そして、完全にその2人をサポートする側に回っているオールセットとバングの、いぶし銀なプレイも特筆に値します。
今作が、ティグランとアンリクセンの単なるデュオであったなら正直"Atomosphères"というタイトルはここまでマッチしなかっただろう、と思えるほどに、2人の演奏の霊性を補強し、空間に滲ませる橋渡しをするかのような好サポートです。
先述したように、バングのエレクトロニクスはドローンなどにより底部を支えることを目的とするほか、オーリセットはアブストラクトなカウンターラインをぶつけることで2人の(自身に比べれば大分)はっきりとしたメロディの輪郭を融解させているように聴こえます。

音が空気に溶け出すような作風という共通点、そして出身国という相違点から、個人的には、中欧であるドイツ出身のステファン・マシューや、西欧ではありますが中欧よりのフランス出身のカセル・イェーガー、そしてアメリカ出身のアキラ・ラブレーという3人により制作された、今年度屈指の名作の1つである"Zauberberg"と、まるで鏡写しのように好対照をなす作品なのではないかと思っています。
個人的にはあちらと同様1時間以内にカチッとまとめることができればもっと名作度(?)があがったように感じますが、逆に2枚組という長大な形にすることで、あちらには少し足りなかった重厚さが加わっているととることもできるでしょう。

便宜上カテゴリはジャズとさせていただきましたが、アンビエントや実験音楽などを好む層にもオススメできそうな作品だと思います。


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