Annabel "slow light, slow glass"

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Artist: Annabel
Album: "slow light, slow glass"
Label: Self-Product
Year: 2016

Tracklist
01. takeoff climb (3:08)
02. 夏の沫 (3:23)
03. 遠雷 (2:55)
04. 嗄れる (3:14)
05. vidrio (4:28)
06. スローライトバード (3:35)
07. 海まであと少し (3:42)


binariaanNinaでも活動しているアルゼンチン出身の歌手/ソングライターAnnabelによる、自主制作としては(恐らく)久々のミニアルバム"slow light, slow glass"は、他の名義での活動や、ソロでの以前の作品で見られた耽美的で艶のある世界から飛び出すかのように溌溂としていて、かつ瑞々しく、そしてほのかな実験性を帯びた好盤に仕上がったように思います。

本作は、全7曲約24分というコンパクトな作品ではありますが、Q flavorと田口囁一(ロックバンド 感覚ベクトルのヴォーカル)という二人のソングライターを迎え、奇数トラックにQ曲を、偶数トラックに田口曲を配することでコンポジションの差異をくっきりと示し、アルバム全体にメリハリを感じさせる構成になっています。
ちなみに、同時に発表されたシングル"warehouse 160814"(未聴)でも2人が1曲ずつ提供しているようです。

肝心の、ソングライター2人のコンポジションの特徴はといえば、Q flavorの方はグリッチーなビートや電子音、ノイズなどを多層的にレイヤーした実験的な作風、田口の方はジャジーなドラムやループするピアノと、飛翔するようなストリングスを軸にしたポップかつ瑞々しい作風と表現することができるでしょう。
今までのAnnabelのイメージでいえばQ曲の方が近いように思うのですが、今作では田口曲の生っぽい音のテクスチュアと、Annabelのふくよかで透明感のある、そしてほんのりハスキーな歌声が非常によくマッチしており、本人の語る通り「夏と弦」というテーマがサウンドや歌詞、メロディ、さらには楽曲のトータルな雰囲気からも感じられて、この美しい声を持ったシンガーの新たな魅力に気付かされるような印象を受けました。
特に2曲目は本作の最初の白眉ともいえる、ブレイクビーツっぽくはねるビートや、こっそり配されたファンキーなギター/ベースと、ストリングスが好対照をなす美しい楽曲だと思います。

そして、Q曲の実験性/複雑さも特筆すべきです。
binariaにせよソロ作(メジャー作はフォローしていないので、イメージとしては"Noctilca"あたりのイメージ)にせよ、メランコリックで優しげな空気を漂わせたエレクトロニカ~フォークトロニカ的なサウンドを得意としていた彼女ではありますが、今作のQ曲についていえばそれらのイメージを根底から覆すようにノイジーなものに仕上がっているように思います。(Annabelの声が、エコーやディストーション(というかファズというか)といった加工がなされているのも特徴的です。)
1曲目こそダンサブルなビートとグリッチーで薄っすらシューゲイズな電子ノイズが飛び跳ねるようにメロディ/歌声を補強するようなポップネスの感じられる作風ではありますが、3曲目で少しずつ先述のような多層的なレイヤー/ノイジーなテクスチュアによる実験性が首をもたげ、5曲目でそれは極限に達します。
もはや歌詞が聴き取れないほどに融解したAnnabelの声、和声など全くなしでデジタルビートとノイズが反復された果てに悲壮なストリングスが唸りをあげる、なんともプログレッシヴな作風で、本作のクライマックスといえる楽曲で、シリアスな美しさが漂っています。

このように、2人のコンポーザーによる楽曲の対比で進んでいく本作ですが、7曲目ではそれが一転して、構造的にはやはり実験的なQ曲でありながら、田口曲の生っぽいテクスチュアなどの特徴も取り入れたかのような、本作の総まとめともいえる展開が繰り広げられます。
これのおかげで本作は、2人の楽曲を行き来しながら徐々に徐々に盛り上がり、ラストでは2人のサウンドを統合しつつライトな感触でアルバムを占めるという、EP/ミニアルバムとしては理想的なものになっているように思えます。

30分に満たない、あっさりとしたサイズではありますが、内容は非常に充実した作品ですし、Annabelの声は相変わらずの美声ですし、Q flavor/田口囁一というコンポーザーの協力により彼女の新たな魅力も感じられます。
特殊パッケージの初回盤は販売終了したようですが(買えてよかった 笑)、通常盤がそのうち通販開始されるようですので、気になる方はぜひ聴いてみてもらいたいと思います。


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