Bonjour "Bonjour"

Artist: Bonjour
Album: "Bonjour"
Label: Cantaloupe Music
Year: 2016
Tracklist
01. Friday 3pm (6:48)
02. Wednesday (6:35)
03. Thursday Afternoon (6:02)
04. Sunday (9:18)
05. Monday Morning (8:04)
06. Thursday Morning (6:52)
07. Tuesday Noon around 12:21 (5:57)
フランス出身で、NYのブルックリンをベースに活動するベーシスト/作曲家フローレン・ジーズをリーダーとしたストリングス・バンドBonjourのデビュー作が、Bang on a Can主宰のCantaloupe Musicよりリリースされました。
このBonjour、チェロ、クリーン・トーンのエレキ・ギター、ベース、アルト・ベースといった4種の弦楽器と、ドラム/パーカッションという編成になっています。
ジーズとメンバー達はストリングス(とメンバー全員による声)をミニマルに反復していくことにより楽曲を形作っていきます。
彼らは非常に厳格で、装飾性を感じさせない程のストイックさでひたすら音を反復させていきますが、4本のストリングスとリズム、そして声が多層的にレイヤーされ、抜き差しされることにより楽曲はミニマル・ミュージックとは思えない程の表情を獲得しています。
ピンと張られた弦を擦る音そのものが孕む緊張感と、4つのラインが複雑に重なりあう緊張感とを全編にみなぎらせつつも、エレキ・ギターのドリーミーなサスティンやベースのドローンなどによりストリングス・バンド特有の浮遊感も持ち合わせた演奏はクラシカルでありながらも非常にポップです。
また、楽曲構造としても、ゆったりとではありますが和声的な展開を持たせており、非常に構築的な印象も同時に受けます。
そして、本バンドにおいて唯一ストリングスではない、ドラマーのオーウェン・ウィーヴァーが繰り出すリズムは一聴しただけでは(バンドの性格に合わせた部分も大きいのですが)シンプルで音数を絞ったプレイのように思えます。
しかし、そのビートの組み立て方からは昨今のインディー・クラシック/ポスト・ミニマルだけでなく、現代のジャズやHIPHOPなども視野に入れた、ポリリズミックで細かく分割されたリズム感覚を感じることができ、ストリングスや声のテクスチュアが強く漂わせるクラシカルな雰囲気をポップ・ミュージック的に聴かせる、橋渡しのような役割を担っているように思えます。
ミニマル・ミュージック(あるいは現代音楽)というとどうしても長く、退屈で、難解な印象を受けると思いますが、Bonjourのサウンド/演奏/楽曲は何度も述べている通り非常にポップで聴きやすいものです。
1曲あたり5~9分ということで、長すぎず短すぎず、ミニマルな演奏の醍醐味をポップ・ミュージックとして味わうにはちょうどいい曲の長さも職人的に思え、ジーズ本人の意識が単なる現代音楽/クラシックファンのみならず広汎なリスナーに向けられていることが窺える気がします。
「クラシカルなストリングス・バンド」と「現代的なポップ・バンド」、「現代音楽の系譜に連なるミニマル・ミュージックとしての先鋭性」と「ポピュラー・ミュージックとしてのとっつきやすさやレンジの広さ」などを折衷したような本バンドの在り方はまさにインディー・クラシックと呼ばれるシーンを代表するものだと思いますし、そうであるからこそこのデビュー作は、インディー・クラシックのこれからに対する期待を強くするのには十分すぎるほどによく出来た作品に仕上がったのだと思います。
このシーンを追いかけている方にとってはマストとも言える作品でしょう。
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