Frank Zappa/The Mothers "Roxy & Elsewhere"

Artist: Frank Zappa/The Mothers
Album: "Roxy & Elsewhere"
Label: DiscReet Records
Year: 1974
Tracklist:
01. Penguin in Bondage (6:48)
02. Pygmy Twylyte (2:13)
03. Dummy Up (6:02)
04. Village of the Sun (4:17)
05. Echidna's Arf (Of You) (3:52)
06. Don't You Ever Wash That Thing? (9:40)
07. Cheepnis (6:33)
08. Son of Orange County (5:53)
09. More Trouble Every Day (6:00)
10. Be-Bop Tango (Of the Old Jazzmen's Church) (16:41)
「フランク・ザッパって何から聴いたらいいの?」なんて疑問を持つ人は結構いると思います。
なにせ生前に残した作品60作以上(死後発表されたものも合わせるとなんと90以上!)、そのいずれもが方向性の違いこそあれど物凄く濃い内容なので、入り口を誤ると物凄い拒否反応で二度と聴かない、なんてことになりかねません。
当然、最初から現代音楽バリバリの"The Yellow Shark"や、60年代の実験的なオリジナル・マザーズ、あるいは80年代後半からの彼の音楽人生の集大成的なライヴ作品などを薦めるのは間違っていると言わざるをえないと思います。
いずれもザッパマニアとしては捨てがたい作品ではありますが、ザッパ世界の入り口としては少々難解、あるいは偏りすぎたり、下品すぎたりするかなぁ、と。
では、何から聴くべきか、というとまず最大公約数的な作品としてプログレ/ジャズロック作品としての金字塔"Hot Rats"や70年代後半の脂ののりきった時期の作品("Sheik Yerbouti"など)が挙げられると思いますが、それと並んで薦められることが多いのが70年代前半の「うたものジャズファンク~超絶技巧ジャズファンク」期の作品なのです。
この時期には"Over-nite Sensation"、"Apostrophe"、この"Roxy and Elsewhere"とそして"One Size Fits All"の四作が該当し、そしてそのどれもが名盤としての風格と、ポップさ/聴きやすさを備えているのです。
前置きが長くなってしまいましたが(ザッパを語るのって本当に難しいと思います汗)、これは丁度「うたもの」から「超絶技巧」へとシフトした時期のライヴ作品です。
「技巧的である」というのは、ことポップスの世界においては良いことであるとは限りません。
パンクやノーウェーヴなんかはその最たる例でしょう。あれらはむしろ下手であればあるほど良いとされる部分がありますし、下手をすれば「下手でないといけない」とまで言われてしまいます。これらのジャンルは既存の価値観の破壊を目的とする側面があるので過激に、カオスになっていくのは当然と言えるでしょう。
ここにあるのはそんな「激しさ」や「無秩序さ/カオスさ」とは全く以って正反対の世界です。
ザッパによる完全な制御のもと、全てのメンバーが一丸となり、もてる技巧を全て駆使しながら一つのグルーヴを形成していく…
10人以上の大所帯でありながら、一糸乱れぬそのアンサンブルには感嘆します。
ことLP時代のディスク1のB面(四曲目から六曲目)のメドレーは本当に素晴らしい。
美しいうたものから変拍子ジャズロックへとなだれ込んでいくとき、様々な音が確実に一つのうねる太い「線(グルーヴ)」を形作り、言い様のない「熱」を発生させるその様は、理想的なファンクの一形態として捉えることも、どこまでもプログレッシヴなロックと捉えることも、さらには極上にスウィングするジャズとして捉えることも拒みません。
ビート/リズムの快楽の一つの形が極限まで研ぎ澄まされて提示されているのがこの作品なのです。
めまぐるしく変わる拍は幻惑的であり、サイケやアシッドな感覚はなくとも聴き手の意識を弛緩させることでしょう。
次作はこの路線の集大成として比するもののない名盤ではありますが、しかしながらこの作品はライヴ特有の「熱」がパッケージングされているという一点だけで、次作をある意味では遥かに凌駕するのです。
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