Steve Lehman "Sélébéyone"

stevelehmanslebeyone.jpg


Artist: Steve Lehman
Album: "Sélébéyone"
Label: Pi Recordings
Year: 2016

Tracklist
01. Laamb (6:07)
02. Are You In Peace? (5:57)
03. Akap (2:16)
04. Origine (4:49)
05. Cognition (5:52)
06. Hybrid (4:00)
07. Dualism (4:36)
08. Geminou (1:31)
09. Bamba (6:19)


清々しいほどに問題作です。
NY出身のサキソフォニスト、スティーヴ・リーマンの新作は、セネガル出身のガストン・バンディミック(ウォロフ語担当)と、Antipop Consortiumというグループの一員でもあった(ある?)HPrizm(英語担当)という2人のMCを迎えた作品となりました。
その他の面子はソプラノでマチェク・ラッサール(か?Maciek Lassarre)、鍵盤でカルロス・オムス、ベースにドリュー・グラス、そしてドラムにダミオン・リードという布陣です。

この作品、どこから話したものか途方に暮れてしまいそうになるくらい、とにかく色々な要素がこれでもかと盛り込まれています。
まずは作曲からですが、1,2,5,8,9曲目の作曲/シーケンス/プロデュースをリーマン本人が、3,4,6,7曲目をマチェクが担当しており、かなりはっきり色が分かれています。
リーダーでもあるリーマンはやりたい放題といいますか、ラッパーを迎えていながらオーソドックスなHIPHOPをやろうという気は全く無いようです。
ループするピアノは無調で現代音楽みたいだし、ダミオン・リードには複雑すぎる拍子を叩かせるし、自分(とマチェク)はソロを遠慮なしに吹きまくるし…といった具合で、本作はどこをどう切り取ってもカッティングエッジでないところが見つかりません。
マチェクの方もやはりトンガッてはいますが、それでもリーマンに比べると大人しく、HIPHOPらしい瞬間も散見できます。('Origine'や'Hybrid'なんてメチャクチャかっこいい。)
もちろん、リーマンのトラックでも'Are You in Peace?'などは、ちょっと間違いが起これば(笑)チャートインしてしまいそうなくらいカッコ良いHIPHOPに仕上がっていると思います。

続いて、先ほども少し話題に出ましたが、ダミオン・リードの叩きだすビートがあまりに複雑なことも特筆に値します。
変拍子とかクロスリズムとか、色々思い浮かぶことはありますが、もはや何をどう叩いているのか、どう拍子を割ってるのか分かりません。
彼の参加作というと、グラスパーの"In My Element"などが浮かびますが、あっちでのスムースで洒脱なドラミングからすると随分野性的で挑戦的な演奏です。
本作のカッティングエッジな部分の大部分を彼が担っているといっても過言ではありません。

そして最後に、2人のMCによるラップとリーマン(とマチェク)のサックスの対比です。
ガストンはウォロフ語のひっかかるようなアクセントを存分に活かして、演奏隊の作る複雑なリズムを叩き伏せるかのように野性味溢れるラップを聴かせますし、HPrizmの方はリズムの間隙を縫うような、知的なフロウを聴かせてくれます。
ウォロフ語と英語の違いがよく分かるといいますか、彼らのスタイルの違いが恐らく彼ら自身がメインに扱う言語から来たものなのだろうということが推し量られるような気もします。(ウォロフ語というか、セネガルのHIPHOPシーンはよく存じてませんが)

この2名の対比だけでもかなりの面白さがありますが、そこにリーマン/マチェクのサックスが加わることによって場はより一層混沌としていきます。
2人のサックスはM-BASEらしい旋律転換法の跡を感じさせるフレーズで螺旋を描きながら演奏とラップの橋渡しをすることも多いですが、いざソロを取り始めるとまるでエリック・ドルフィーのようにアブストラクトで、聴き取るそばから逃げていってしまうようなプレイで聴き手を幻惑し、時にMC2人の舞台を完全に奪ってしまっています(笑)

と、色々と書いては見ましたが、これらの様々な要素について、整合性を取ろうと言う気はリーマン(とマチェク)にはなさそうです。
HIPHOP/ラップをジャズにどう取り入れるか、という試みの一つとして捉え、グラスパーらJTNC的な動きと対比させることもできるのでしょうが、私自身にはリーマンが「HIPHOP」に拘っているような印象はそれほどないというのが正直なところです。
むしろ、今回述べたような様々な要素をごった煮にしてそのまま吐き出すことを楽しんでいるような、無邪気な所作すら感じるように思います。
ここで得られたものが彼の中でどう昇華されていくのか、これから先が非常に気になる作品だと思います。
まずは過去作を掘っていかないと…(実は今回が初リーマンでした)


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