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Natasha Llerena "Canto Sem Pressa"

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Artist: Natasha Llerena
Album: "Canto Sem Pressa"
Label: Self-Product
Year: 2016

Tracklist
01. A Esperança Que Carrego em Mim (3:03)
02. Pra Bebel (3:20)
03. Giros (3:53)
04. Canto Sem Pressa (4:02)
05. Sons do Maranhão (3:33)
06. Desenhando (3:37)
07. Castelo de Cartas do Rei (3:13)
08. Dança do Tempo (2:33)
09. Recomeçar (3:35)
10. Sertão (3:17)


ブラジルの新人SSWナターシャ・レレーナの初めてのフル・アルバム"Canto Sem Pressa"(『ゆったりとした歌』?)は間違いなく今年度最優秀デビュー作の筆頭でしょう。
2012年に活動を開始した彼女ですが、本作はここ2年で生まれたサウンドをプロデューサーのエドゥアルド・アンドラーデと共同でまとめあげたものということですが、今作では現代ブラジルのポップ・ミュージックの様々な影響源(ルーツ)が一堂に会しており、ブラジル音楽の総まとめといっても過言ではないような、素晴らしい作品にしあがっています。
1曲目における、ムビラ(親指ピアノ)の神秘的な響きでの導入は正に今作を導入していると言えますが、それは彼女自身が歌うメロディはもちろんのこととして、リズム/ハーモニー/アレンジメントなど様々な側面で感じることができると思います。

まずはリズムです。
複数の打楽器の音をポリリズミックに同期・クロスさせて、非常に有機的で複雑な動きを描きながらも、全体で大きなグルーヴ/うねりを創りだすようなリズムが本作の豊かなサウンドの根底部分を形成しています。
このリズムからはいわゆるサンバ/ボサノヴァ的な1・4拍目にアクセントを置きつつシンコペイトを交える情熱的なリズムとは違い、もっと土着的な空気を強く感じます。
これは間違いなくバイーア州にアフリカから持ち込まれ、ブラジル音楽の奥深くに根をおろしたアフロ・リズムが持っていたものですが、ナターシャはそれを自身のコンポジションの中に見事に織り込み、単にアフロ・リズムの土着性/ルーツ性を誇示するのではなく、より旋律との相互関係を強く結ぶように配置し、使いこなしています。

そして、そこに加えられる(特にヴォーカル/コーラスの)ハーモニーの力強さも特筆すべきです。
リズムを自在に張り詰め、あるいは弛ませながらスキャットを織り込む部分には、先述のリズムと同様アフロ的なものを感じますが、こちらにはさらに西洋音楽的な和声法の影響も垣間見せています。
ナターシャ自身の艶かしい色気を持った美しい声が、楽器群のハーモニー/リズムにに応じて自由にその動きを変えスピリチュアルな美しさを見事に描き出していますし、男女混声のコーラスが、過不足ないハーモニーの追加によりそれを強力に補強する様子には、ハーモニーそのものの土着的な神秘性と同時に強い構築性を印象づけられることでしょう。

構築性、という部分のみについて言えば、アレンジメント(特にストリングス)の方が好例かもしれません。
一曲目の後半で聴かれる、一聴しただけでもあきらかに英米の音楽からの影響を匂わせる、まるでソフト・ロックやバロック・ポップのような空気もまとった力強く美しいストリングスなどに顕著ですが、ナターシャはリズムやハーモニーで母国の伝統的な音楽のルーツ(アフリカやポルトガルを始めとした西洋)を掘り下げていくと同時に、ポピュラー・ミュージックに強い影響を与えた英米のポップスや同郷のミナス音楽などにも目配せを忘れません。
アレンジメントはメロディ/ハーモニー/リズムを最も適したタイミングで、最も華やかに魅せつけるような精緻なもので、その素晴らしさにはポール・マッカートニー~ジルベルト・ジルという系譜に並べても遜色のないような、ポップ・マエストロのような風格すら漂っているように感じます。

そして、ナターシャをサポートするミュージシャン達の貢献にも触れないわけにはいかないでしょう。
現代ブラジル音楽を語る上で欠かせないピアニストのアンドレ・メマーリを筆頭に、「最も革新的でエキサイティングなフィンガースタイル・ギタリスト」と評されるUSのアンディ・マッキー、ジョビンやカエターノ・ヴェローゾ、さらには坂本龍一などとの共同作業でも知られるプロデューサ/アレンジャー/チェリストのジャキス・モレレンバウムやサックス/フルート奏者のエドゥ・ネヴェス、リズム隊にミシェル・ナシメント、ペドロ・アンパロ、アレシャンドリ・ベレルディなど、有名無名問わず全てのプレイヤーが彼女のコンポジション/アレンジメント/ヴォーカリゼーションを最適な形でサポートし、一糸乱れぬアンサンブルを全編で聴かせています。
本作がここまで素晴らしい作品に仕上がったのも、彼らメンバーの尽力による部分が大きいのは間違いありません。

以上の通り、アフロやポルトガル(西洋)に同郷のミナスや、あるいは英米のポップス等、ブラジル音楽を取り巻く様々なルーツから得たものを最適な形で用い、見事なコンポジション/アレンジメントでまとめあげた本作は、活動開始から4年そこらの新人の(しかもデビュー)作品としては異例なほど完成度が高いものであると思います。
この素晴らしいSSWのデビュー作を聴かずに、2016年の音楽は語れないでしょう。
直にCD化されるようですが、本人のサイトより無料でMP3がDLできるのでとにかく聴いてみてください。


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