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坂本慎太郎 "できれば愛を(Love If Possible)"

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Artist: 坂本慎太郎
Album: "できれば愛を(Love If Possible)"
Label: Zelone Records
Year: 2016

Tracklist
01. できれば愛を(Love If Possible) (5:26)
02. 超人大会(Tournament of Macho Man) (3:42)
03. べつの星(Another Planet) (4:39)
04. 鬼退治(Purging The Demons) (3:25)
05. 動物らしく(Like an Animal) (3:56)
06. 死にませんが?(Feeling Immortal) (4:04)
07. 他人(Others) (6:17)
08. マヌケだね(Foolish Situation) (4:00)
09. ディスコって(Disco Is) (4:57)
10. いる(Presence) (3:44)
※初回版・通常版ともに上記のインスト盤(Disc 2)が付属


坂本慎太郎の新作を聴く度、学生時代に先輩が彼を評して言った「現代の妖怪」という言葉に納得しているような気がします。
最新作の"できれば愛を"でもそれはいつも通り、あるいは、もしかするとこの作品は今まで以上に彼の「妖怪」感=底知れなさを物語る作品なんではないかな、と思えてきます。

前作"ナマで踊ろう"は、あえて強烈にポリティカルな言葉を使い、それを政治など全く関係ないかのようなサウンドと組み合わせることで、言葉そのものを「一種のステレオタイプなイメージ」と「本来の意味」の2つの側面で認識させ(あるいは認識させなくさせ)、ユートピア/ディストピアが反転しながらないまぜになるようなサイケデリアをリスナーにつきつける、非常にコンセプチュアルな作品であったと思います。
正直鬼気迫るほどの完成度だったと思いますので、次の作品が大層作りづらいだろうなぁ、とは思っていたのですが、当の本人はこんな一リスナーの心配などどこ吹く風といった雰囲気で、さらりと本作のような作品をドロップしてくるのだから、もう降参です(笑)

まず、アルバム開始と同時に強く意識されるのは、音の鳴りではないでしょうか。
坂本がインタヴューで「部屋鳴りとかも一緒に録った」と言っている通り、本作は全編通しスタジオの部屋/壁の存在、そしてそこで演奏しているメンバーの息遣いを感じさせるような生々しい音で録音されることで、非常に印象深いサウンドに仕上がっています。
最初のドラムが入ってきた瞬間から、まるで彼らの演奏するスタジオに招かれたかのような錯覚に陥るのですが、同時に、スタジオの外の世界は全く存在していないかのようでもあり、かなり地下室っぽい、密室感のあるサウンドでもあると思います。

楽曲については今回も、ゆらゆら帝国時代の"空洞です"から地続きの「宙吊りのサイケデリア」を強く感じさせるものになっているように思います。
重心低めでちょっぴりレゲエ/ダブっぽいゆるさのあるドラム、モコモコとした音像で這いまわるベース、ドリーミーな音色で浮かんでは消えるキーボード、艶やかなサックス、おどけて転がるマリンバ、そしてもはや彼のソロ作品でのトレードマークとも言えるラップスティールギターが織り成す音は相変わらずファンク/AOR/ソフトロックを視野に入れたスムースなものです。
かなりシリアスな感のあった前作に比べるとメロディも人懐っこいものが多い印象で、全体的な雰囲気には、むしろ1st"幻とのつきあい方"とその後のシングル"まともがわからない"あたりに通底するようなものがあります。

坂本の声には相変わらず思慮深さとエロスが宿っておりますので(笑)、彼が歌い出すとどうしても得も言われぬ不気味さが漂うようには感じますが、歌われる歌詞については対立する2つの要素のどちらにもよらない、というような内容のものが多く、そういった部分でも相変わらずの「宙吊り感」が強く感じられます。
正直、歌詞については多くの人がシリアスにとりすぎというか、むしろ「声」という独特のテクスチュアを持った楽音だと思った方がいいのかな、なんて思ったりもするんですよね。
なんと言っても、バンド時代の'空洞です'では「通ってごらん」なんて言ってた「空洞(穴ぼこ)」について、今回はそこに「何か入れてくれ」なんて歌ってるんですから(笑)

この「意味があるようでないような(それでやっぱりあるような)感じ」が、何度も申しますように「宙吊り感」につながっているわけです。
坂本自身、「朝起きて、「ああ今日から夏休みだ」と思って。「まだ寝てていいんだ」って思う。その思った瞬間を引き延ばしたような音楽」なんて語っていますが、密室感の強い、外界を意識させないサウンドと彼の歌とが合わさって、今作を聴いている間はまるで時間が止まっているような感覚に陥ります。
前作は全てが過ぎ去った後の世界を設定することで時間を超越した部分に作品を置くことに成功しましたが、今作はむしろ「今」という一瞬にフォーカスして、それを永遠に思えるまでに引き伸ばすことで時間そのものを無化しようとしてるのかもしれません。

彼の声、歌詞、そしてメンバーたちの生み出すサウンドは正にそれを達成していると思いますし、そのおかげか今作は聴いていて、嫌なことを全て忘れさせてくれるようでとても心地よいです。

また、前作についてはSly & The Family Stoneの"There's A Riot Goin' On(暴動)"とつなげるような評が多かったような記憶があります。
それになぞらえれば、前に比べればポップだけど、それでも閉塞的で密室的な空気を存分に香らせる今作は坂本なりの"Fresh!"であるようにも思えます。

聴けば聴くほど、彼が普通の感覚で作品を作っていないんだということをつきつけられている気分ですね。
やはり「現代の妖怪」は伊達じゃない、といったところでしょうか(笑)


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