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Joanna Wallfisch "The Origin of Adjustable Things", "Gardens in My Mind"

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Artist: Joanna Wallfisch with Dan Tepfer
Album: "The Origin of Adjustable Things"
Label: Sunnyside Records
Year: 2015

Tracklisting
01. This Is How You Make Me Feel (3:36)
02. Satin Grey (4:30)
03. Satellite (5:12)
04. Song To A Siren (4:07)
05. Creep (3:51)
06. Time Doesn't Play Fair (5:18)
07. Anonymous Journeys (3:49)
08. Brighton Beach (2:25)
09. The Origin of Adjustable Things (2:05)
10. Wild Is The Wind (5:14)
11. Rational Thought (3:27)
12. Never Let Me Go (5:10)


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Artist: Joanna Wallfisch
Album: "Gardens in My Mind"
Label: Sunnyside Records
Year: 2016

Tracklisting
01. Moons of Jupiter (4:35)
02. All I Want (4:28)
03. Gardens In My Mind (4:27)
04. Satellite (7:16)
05. Distant Shore (3:43)
06. Anonymous Journeys (4:01)
07. Patience (5:07)
08. Satin Grey (3:42)
09. This Is How You Make Me Feel (4:10)
10. Song To The Siren (4:26)
11. Rational Thought (3:47)
12. Dreams Of A Carousel (1:02)
13. Brighton Beach (3:32)
14. Lonely Road (All I Want Reprise) (1:26)


ロンドン出身NY在住の歌手ジョアンナ・ウォルフィッシュが昨年発表した"The Origin of Adjustable Things"と、今年発表した"Gardens in My Mind"は、多くの点において正に双子のような作品と言うことができるでしょう。
この2作を双子と見做す理由のまず一点目はリー・コニッツとの仕事で有名なフランス出身のピアニスト ダン・テファーとのコラボレーションを軸として作られていること、二点目は多くの曲が重複(正確には"The Origin..."から"Gardens..."への再録)していること、そして三点目はウォルフィッシュが自身の音楽的素養や歌曲というものに対して、それぞれ違った視点からアプローチしている作品だということです。

一点目については、どちらの作品においてもテファーの活躍には目を瞠るようなものがありますが、それが特に感じられるのはやはり完全にデュオ作品として制作された"The Origin of Adjustable Things"だと思います。
"Gardens in My Mind"でも聴かれますが、プレイそのものは非常に多彩で、ミニマルな反復やなめらかなスラーで聴き手を幻惑したり、あるいは音数を絞ったプレイで残響と音が響く空間にを繊細に強調することでウォルフィッシュの歌声が辿るラインを全力でサポートしながら、時折(あえて)脈絡を無視した不協和音を盛り込んだりすることで楽曲にスパイスを加えて引き締めしたりもします。
それに加えて"The Origin..."ではウーリッツァーやメロトロン(!)、ハーモニウムなども用いて音色の面でもウォルフィッシュをサポートし、ストレートでピュアな響きを持った歌声との相乗効果で楽曲、ひいてはアルバムにディープな深みをもたらしています。

二点目については'This is How You Make Me Feel'、'Satin Grey'、'Satellite'、'Song to the Siren'(ティム・バックリィ"Starsailor"からのカヴァー)、'Anonymous Journeys'、'Brighton Beach'、'Rational Thought'という実に半数以上の楽曲が両作品に収められ、それぞれのヴァージョンにおいて違った輝き/魅力を放っています。(ちなみに"The Origin..."の表題曲も'Patience'と改題されたリアレンジ版が収録されています。ウーリッツァーとスキャットでドリーミーな世界観を作り出している前者と、ストリングスにより完全にクラシック作品に再構成された後者とを聴き比べるのも非常に面白いです)
テファーとのデュオで静謐に、UK出身らしい陰影に富んだ"The Origin..."のヴァージョンと、そこに弦楽四重奏のサッコーニ・カルテット(The Sacconi Quartet)によるストリングスで華やかな彩りと力強い推進力を与えた"Gardens..."のヴァージョンのどちらもが非常に魅力的ですが、唯一惜しく思うのは前者に収録された、完全にピアノとのデュオでメロディの美しさを際立たせた'Creep'(Radioheadのカヴァー)や、後者に収録された、原曲のロードムーヴィー的な旅情をストリングスの澄んだ響きで純化した'All I Want'(ジョニ・ミッチェルのカヴァー)あたりのカヴァー曲をもう一方のアレンジでも聴いてみたかったということでしょうか(笑)
ちなみに'All I Want'に至ってはアルバムのラストでヴォーカルの多重録音によるアレンジでさらに再演されますが、こちらもまたアブストラクトな霊性に満ちていて非常にスピリチュアルです。

そして三点目についてはウォルフィッシュの家庭環境や生まれた場所、あるいは現在の拠点などといった全てが味方したといっても過言ではないのではないかと思います。
ウォルフィッシュはそもそも両親兄弟ともにクラシックを中心として活動する音楽家だそうで、当然、まず彼らから手ほどきを受けたであろう彼女の基礎にはクラシカルな構築美や、そこに起因する歌曲に対する問題意識があります。
実に無駄のない、明快で力強い楽曲展開や各楽器のハーモニーの美しい組み立て方などからは前者(構築美)を強く感じますし、楽曲の途中に挿入されるぎょっとするような不協和音/効果音風の楽音や、"Gardens..."の冒頭'Moons of Jupiter'で聴かれる突然の暴力的(とすら言ってもよい)コーダなどは後者に起因するのでしょう。
そしてその基礎はコンポジションにおいてだけでなく、他者の曲のカヴァーや、弦楽四重奏を交えた再録といったアレンジメントにおいても十分に発揮されています。

次に、UKロンドンの生まれという部分は彼女のメロディセンスや曲想に強い影を落としています。
ふくよかでストレートな歌唱にて歌われるメロディには常にロンドンの曇り空を想起させるような陰鬱な陰影に富んでいますし、本国のRadioheadはもちろん、USのティム・バックリィやカナダのジョニ・ミッチェルの名曲/メロディの新たな魅力を照らしだすことにも役立っているように思います。
雄大な(繰り返すならロード・ムーヴィー的な)旅情が、彼女の手によれば途端に人生における深い悲しみ(とそれを乗り越えたことによる希望)を漂わせ始めるのですから脱帽です。
なお、オリジナル曲(特に"Gardens..."の方)ではブロードウェイ的(=アメリカ)な曲想も感じますが、それは後述する移住に端を欲するのではないかな、と思います。

そして最後に、"Gardens..."において導入された弦楽四重奏についてですが、彼女は2011年に"Wild Swan"と題された作品でデビューした翌年の2012年にNYへと移り住みました。
2015年の"The Origin..."の後に参加したサリスバリー・フェスティヴァルがThe Sacconi Quartetとの出会いとなったようです。
サリスバリー自体はメリーランド州ですが、彼女が移住したNY(の更に言えばブルックリン)は正に現在インディークラシックと呼ばれる動きが活発な地域でありますし、また、インディークラシック系でここ数年注目を浴びているレーベルCantaloupe MusicやNew Amsterdam Recordsなどが居を構える場所でもあります。

もちろん、ウォルフィッシュがこの2作で見せた音楽はインディークラシックのように音楽の在り方/構造/アレンジメントに対する挑戦・問題意識こそが創作の中心になっているわけではなく、シンプルにSSWとして良い曲を良く演じようとしているシンプルなものであるとは思いますが、The Sacconi Quartet導入の背景に、土地柄といいますか、同じ街で活動する若き俊英達が影響している可能性は十分にありえるように思います。
実際、The Sacconi Quartetの参加により(当然のことですが)"Gardens..."の方はチェンバー・ミュージック的な聴取も可能になっていると思いますし、また、彼らが底部を支えることによりピアノ担当のテファーもウーリッツァー他の特殊鍵盤を使わずとも(一部でメロディカだけ使ってますが)自身の色を出した演奏とウォルフィッシュのサポートとの両立を十全に自由に行えているようにも思えます。

改めて2作を比較しながら聴き返してみると、どちらも実に(良い意味で)分類不能といいますか、ポップであり、ジャズであり、クラシックであり…とウォルフィッシュがこれまでの人生で受けた様々な音楽的影響が非常に深い部分で結び付き、混じりあったものが現れているのは明白で、結局のところこれらの作品についてはああだこうだとジャンル名で遊ぶよりも、端的に「非常に美しいメロディとアレンジを聴かせるSSWもの」と言ってしまうのが一番分かりやすいかな、なんて思ったり(笑)

何にせよ、どちらの作品も非常にオススメですし、冒頭で触れたように間違いなく双子的な作品ですから、ぜひともセットで聴いてみてもらいたいと思います。


'Satellite' ("The Origin of Adjustable Things"収録)



'Gardens in My Mind'("Gardens in My Mind"収録)
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