Robert Glasper "Everything's Beautiful"

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Artist: Robert Glasper
Album: "Everything's Beautiful"
Label: Sony Legacy/Blue Note
Year: 2016

Tracklist
01. Talking Shit (3:09)
02. Ghetto Walkin [feat. Bilal] (3:43)
03. They Can’t Hold Me Down [feat. Illa J] (2:14)
04. Maiysha (So Long) [feat. Erykah Badu] (7:30)
05. Violets [feat. Phonte] (3:24)
06. Little Church [feat. Hiatus Kaiyote] (6:35)
07. Silence Is The Way [feat. Laura Mvula] (5:18)
08. Song For Selim [feat. KING] (2:40)
09. Milestones [feat. Georgia Ann Muldrow] (4:17)
10. I’m Leaving You [feat. John Scofield and Ledisi] (3:14)
11. Right On Brotha [feat. Stevie Wonder] (5:01)


ロバート・グラスパーによる最新作は、ジャズの帝王マイルス・デイヴィスをテーマとしたものです。
今年はマイルスの生誕90周年かつ没後25周年ということで、75年の一時引退後、79年に復帰するまでの間を描いた映画『マイルス・アヘッド』も制作され、そちらのサウンドトラック盤もグラスパーが監修しているようです。(未聴)

マイルス・デイヴィス本人はグラスパーが13歳の時になくなっていますので、正直な所彼にどこまでの実感を持ったトリビュートができるのか、というのがやはり気になるところですが、何度も聴いてみると「ジャズの帝王」という威厳ある、偶像化されたイメージではなく、ポピュラー・ミュージック界におけるヒップなスターとしての存在感を示した1人のミュージシャンとしてのマイルスを描写しているような雰囲気で、逆に良かったのではないかな、と思います。

本作においてグラスパーは、単純にマイルスの演奏/作品からのサンプルを持ってくるのではなく、サンプルするにしても自分やゲストミュージシャンの演奏を重ねることで、マイルスのカヴァーやマイルスを素材とした作品を作るのではなく、マイルスにインスパイアされたグラスパーの作品として仕上げることを選んでいます。

そしてまたテーマにした楽曲がまたマニアックというか渋いというか…(笑)
ソニーレガシーの倉庫を自由に使わせてもらえたから、ということもあるのかもしれませんが、いわゆる「大ネタ」的なものはありません。
先行で公開された'The Ghetto Walkin'からしてそうですが、名作"In a Silent Way"…のセッション曲'The Ghetto Walk'の冒頭の演奏を拡大し、そのにHIPHOPビートやビラルの歌声を組み合わせることで一つの楽曲として構成し直しています。(ちなみに、'The Ghetto Walk'はレガシーから出ている3枚組BOX"The Complete In a Silent Way Sessions"で聴けます。)
その他にも、"Get Up with it"にて怪しげなセンチメンタリズムを醸していた'Maisya'のボサノヴァ由来の部分に焦点を当ててみたり、名曲'Blue in Green'のスタジオ録音の際のミステイクをループさせてみたり、あるいはなぜか"Live-Evil"の中で、大曲でなくあえて小品の'Selim'を引っ張ってきて今をときめくコーラス・グループKINGに歌わせてみたり…とかなり好き放題やっています。

その姿勢には、一定の評価がなされているものでなく、現在の音楽シーンの中を生きるリスナーの1人としてのグラスパー自身がヒップである、クールである、と思える素材を使いたい、という意志が見て取れます。
そしてそれは、音楽家として物心がつく前に亡くなってしまった大いなる先達に対するトリビュートの姿勢として非常に正しいのではないかと思いますし、常にシーンの前衛(ヒップという意味で)に立とうとしたマイルスに対するグラスパーなりの敬意として評価すべきなのだと思います。

全体的には9曲目以外ではソロを弾くこともなく(9曲目もゲストのジョージア・アン・マルドロウの要請があったからのよう)、鍵盤をプレイはしつつもあくまで全体のプロデュースに専念しているような印象が強いのですが、そのことと、楽曲ごとに異なったゲストを迎えているためにそれぞれ個人の「意志」みたいなものが強く表出することがなかったのはこの手のなめらかな聴き心地のあるHIPHOP作品にはとても良かったのではないでしょうか。

グラスパー本人の演奏家としての、あるいはジャズ・ミュージシャンとしてのプレイアビリティやプライドは控えめに隠しながら、あくまで偉大な帝王へのトリビュートとして、彼なりの姿勢で臨んだ作品として一聴の価値がある作品だと思います。


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