Simon Scott "Floodlines"

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Artist: Simon Scott
Album: "Floodlines"
Label: Touch
Year: 2016

Tracklist
01. Floodlines (30:51)


UKのケンブリッジ出身で元(現?)Slowdiveのサイモン・スコットの新作がTouchより発表されました。
彼のTouchからのフィジカル・リリースは今回が初となります。
昨年の"Insomni"がなかなかの好評を得ていたように記憶していますが、私自身はあの作品は未聴でして、彼の作品を聴くのは2012年に12Kから発表された"Below Sea Level"以来4年ぶりです。

さて、本作は今年の1月末にロンドンのCafe OTOで催されたTouchイベントでの演奏を(そのまま?)収録したものです。
"Below Sea Level"では故郷ケンブリッジを含むフェン地方の沼沢地を想起させるサウンドスケープを聴かせていましたが、今作もそのタイトル(Floodlines=警戒線/警戒水位)が示す通り、水や自然に関係のある作品ということができそうです。

作品は、呪術的なドローンを中心として進んでいきます。
そこに、おそらくフェン地方で採録したものと思しきフィールドレコーディング素材や、かつての経歴(Slowdive近辺)を想起させるようなフィードバックノイズ、無機質で暴力的な電子パルスが重ねられ、まるでジム・オルークによるエレクトロ・アコースティック/ドローンの名作"disengage"にも似た、水に対する(あるいは溺れることに対する)恐怖に端を欲する、終わり(死)に向かっていく感覚を強く感じさせる作風になっています。

正直、これだけでもかなりの名作だと思うのですが、作品は20分前後から徐々にその様相を変容させていきます。
鳥のさえずりなどの麗しいフィールドレコーディングが徐々に加わり、粘度が高そうだった水音はサラサラとした爽やかなものに変わっていくのです。
そういった音に気を取られているうちにドゥーミーなドローンはいつの間にか消え去り、次はベルのような音色に導かれるように浮遊感の強いドローンがフェードインしてきます。
そこにはストリングス風のドローンや冷ややかなサウンドスケープ、さらにはシンセと思しきメロウなフレーズ(とても控えめですが)なども加わり、前半とは打って変わって天国的/霊的な美しさを漂わせていきます。

数回聴いた時点では前半の印象に引っ張られて恐怖やディストピア感ばかりが先行していたのですが、レーベルの解説にある以下の文が本作の真の魅力を捉えるのにとても役に立ちました。

The ecosystem was damaged but these areas have been left to reflood and re-establish it’s vernacular wildlife, replete with its own instrumentation and orchestras.

(生態系は損なわれ、この地域に残された道は再冠水で土地特有の野生を再建することである。[そして野生の再建とはすなわち、土地]自身の楽器法や楽団で[土地を]満たすことである)


拙い訳で申し訳ないのですが、要は本作はタイトル通り洪水をモチーフとしていますが、それは人々を溺れさせ、死へと誘う恐怖の象徴でなく、環境をリセットし、自然/野生を再生させるものであるのだ、ということだと思います。
そう思いながら後半(特にラスト8分程度)を聴くと、恐怖しか感じなかった前半が嘘のように希望に満ち溢れた、まるで交響曲の大作のエンディングのように荘厳な雰囲気が感じ取れるのです。

ここ数年ドローン的なものに対する興味が薄れているのを自分でも感じていたのですが、本作には物凄く引きこまれています。
2012年の"Below Sea Level"に並ぶ、もしかするとそれを超えるかもしれない名作であると断言できます。
エクスペリメンタル/ドローン愛好家にはマストです。


レーベルのショップページで一部視聴可
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