Prostitutes "Ghost Detergent"

Artist: Prostitutes
Album: "Ghost Detergent"
Label: Spectrum Spools/editions Mego
Year: 2016
Tracklist
01. Nerve and Gall (3:19)
02. Chandeliers Shake (4:14)
03. Government Wrecker (2:46)
04. The Sting That Stung (2:25)
05. Pressure On The Haunted (6:18)
06. Skeptalepsy (3:18)
07. Pregnant Toad (4:36)
08. Cheap Amplifiers (4:03)
09. Fake Hawaiian Suit (3:36)
10. Served On The Floor (3:28)
eMego傘下のSpectrum Spoolsより、US出身のジェイムス・ドナーディオによるソロプロジェクトProstitutesの新作が発表されました。
2011年のデビュー以降コンスタントに作品を発表していたようですが、私は今作で彼の音に初めて触れ、そのあまりのラディカルさに驚かされています。
先行で公開されていた8曲目'Cheap Amplifiers'が割りとバキバキのテクノっぽさを醸していましたので(実際、収録曲の多くからそのような雰囲気は感じられますが)、今作を初めて再生する際に、どんな硬質なビートで幕を開けるかと期待していましたら、聴こえてきたのはなんともアジテーティヴでトライバルな、まるで生ドラムのような迫力あるビートだったのです。
実際、今作の多くの楽曲はシンプルでアジテーティヴなビートが先導するものです。
跳ねるような感覚の強いベースと絡まりながら、単調とも言えそうなほどモノトーンな反復を見せるそれは「洗練」などという言葉からは程遠いと言わねばなりません。
そこに重ねられるサウンドもSE/効果音的なものが多く、楽曲は緻密な計算に基づいてと言うよりは一つのアイディアから一筆書き的に生まれてきているような印象を受けます。
また、楽曲の急な切り替わり(ぶつ切りのように次の曲に移っていく)もあるため、作品全体がある種のコラージュのようにも聴こえ、HIPHOPで言うビート集のようなものにすら思えてくるのです。
しかし、このあえて「洗練」や「整合性」を拒否していくスタイルこそが彼の、あるいはこの名義の目的なのではないかと思います。
そもそも、本プロジェクト名であるProstitutesという単語からは、私がロックファンであるせいかもしれませんが、どうしてもあのThe Pop Groupの名曲'We're All Prostitutes'が、そして冒頭のトライバルなビートや、アルバム全体を覆う剥き出しのラフな攻撃性からはThe Pop Groupが分類されるポストパンク(ニューウェーヴで決してなく)の諸バンドが想い起こされてなりません。
もちろん、その生々しい音像からは昨今騒がれているロウテクノというタームも頭に浮かびますが、彼の音からはそれらの由来するストリートの感覚よりも、実験音楽/ノイジシャン的な哲学を感じます。
かといって全く観念的なわけでなく、力強くトライバルなビートに由来する肉体性にも支えられた、いうなれば「知性の宿った暴力」のような雰囲気が強いのがとても興味深いと、私は思うのです。
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