Phronesis "Parallax"

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Artist: Phronesis
Album: "Parallax"
Label: Edition Records
Year: 2016

Tracklist
01. 67000 mph (6:04)
02. Ok Chorale (6:50)
03. Stillness (8:14)
04. A Kite for Seamus (7:42)
05. Just 4 Now (3:37)
06. Ayu (7:36)
07. A Silver Moon (5:53)
08. Manioc Maniac (3:09)
09. Rabat (7:45)


デンマーク出身のベーシスト ジェスパー・ホイビー率いるピアノ・トリオPhronesisの新作がUKのEdition Recordsよりリリースされました。
年明け早々にネットで偶然'Stillness'の動画を見て以来、本作のリリースが待ち遠しくてしかたありませんでしたが、いざリリースされた作品を聴いてみると、汎ヨーロッパ的な美しさのあるピアノとグイグイと楽曲をけん引するベース、そして複雑なリズムワークで他2人に対峙する重厚なドラムという三者の一糸乱れぬアンサンブルがとにかく素晴らしく、期待以上の作品であったと感じています。

現代のジャズ・ピアノ・トリオというと、個人的にはジェイソン・モランのThe Bandwagonとヴィジェイ・アイヤー・トリオがなによりもまず浮かびます。
そこにティグラン・ハマシアンを加えた辺りが個人的な好みではありますが、このPhronesisにはそれらのバンド/ミュージシャンが持つ、現代ピアノ・トリオの魅力が全て込められているように感じるのです。

彼らの演奏を聴いて、何よりもまず耳を惹くのはアントン・イーガーのドラムだろうと思います。
オーソドックスなジャズからは明らかに逸脱した、変拍子/リズムチェンジを頻繁に行うそのスタイルは、ティグランも影響を受けたオルタナティヴ・ロックや、あるいはプログレッシヴ・ロックのドラマーたち(特にビル・ブルーフォード?)に似たものを感じます。
しかしながら、彼のドラムからはジャズ由来のスウィング感が全く損なわれていません。
むしろ、せわしなく緩急をつけるスタイルとスウィング感を両立することで自由自在に楽曲を走らせ、あるいは弛ませ、ストップ&ゴー的な中毒感のあるグルーヴを実現しています。

リーダーのホイビーのベースはダブルベース特有の推進力で楽曲を主導しながら、ところどころでピアノやドラムに対する挑戦的なアプローチ(ちょっぴりスコット・ラファロっぽい)を聴かせ、あるいはあまりにもジャズらしいソロを盛り込みます。
さらにはボウイングとフィンガリングを自在に使い分けて、楽曲に音響的/クラシカルなテクスチュアを付与することもありかなり多芸なベーシストであることが分かります。
もう何度も聴いた'Stillness'の作曲は彼なのですが、ボウイングを用いたベースでピアノと美しいハーモニーを聴かせる前奏曲的な前半と、一気呵成で即興的な演奏を聴かせる後半とにくっきり別れる曲構成などにはアカデミックな教養も感じたりします。
(実際、英国国立音楽院を出ているようです)

そしてピアニスト イヴォ・ニーメはまさに現代のジャズ・ピアノの美味しいところを全て集めたような魅惑的な演奏を聴かせてくれます。
ティグランやACTレーベルのヨーロピアン・ジャズなどにも通底する、汎ヨーロッパ的な民族性を湛えた透明で美しいメロディや、ヴィジェイ・アイヤーのようなミニマリズム/リズム重視のゴツゴツとした打鍵、そしてモランと同様のクラシカル/現代音楽由来のエレガンスとドライさを全て実現したピアノは、個人的には正に痒いところに手が届くものです。
本来であればバンドリーダーとして主役をはれるレベルのピアニストで、2曲目などの印象的な曲も作曲していますが、全体的には分かりやすい演奏を心がけているような雰囲気で、バンドの演奏を自己満足的なものにしない、エンターテイメント性も備えているあたり、仕事人といえると思います。

収録された9曲(おそらく3人で3曲づつ作曲?)の全てで彼らの演奏の迫力を存分に楽しめるのですが、それはおそらく今作がアビー・ロード・スタジオで1日で録音されたことにも起因するのでしょう。
スタジオ作品とはいえまるでライヴを聴いているかのような生々しい音像は、良質な録音(ほんとに、かなり音が良いです)と相まってこのバンドの魅力を隅から隅まで聴き手に伝えてくれています。

作曲・演奏・録音の全てが最高であれば当然作品は傑作となります。
Phronesisの今作はそういった点で間違いなく傑作ですし、なにより作曲やアプローチ面での新規な要素は薄くとも、ただそれだけで年間ベスト級であると言える、本質的にパワフルで時代に残る作品だと思います。
これを聴かずに今年は終われない!


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No title

記事を拝見して購入しました。
ピアノトリオというとピアノが主役という感じですが、
このグループの場合、ピアノの美しさを損なわず、
かつベースやドラムにも配慮した奥ゆかしさが印象的ですね。
その結果なのか、ベースとドラムが前に出てて、
聞いていてすごい迫力を感じますね。

もっと聞き込めば魅力がわかりそうで楽しみです。

Re: No title

>> ありたん さん

こんばんは。
当blogの記事で購入を決められたとは嬉しい限りです。

そうなんですよね、通常ピアノ・トリオというと
どうしてもピアノが主役になりがちなのですが、
Phronesisは正に3者が対等というか、言ってしまえば本気の喧嘩のように
互いを挑発しあっているように思えます。

1日録りなのはもちろん録音自体もすごく良くて、
そのおかげで迫力5割増しのようにも思えます。
すでに年間ベストはこれで決まりかけてます(笑)
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