Mmoths "Luneworks"

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Artist: Mmoths
Album: "Luneworks"
Label: Because Music
Year: 2016

Tracklist
01. You (3:42)
02. Deu (3:47)
03. Phase in (0:22)
04. Para Polaris (4:49)
05. Verbena (2:46)
06. Scent (0:42)
07. Eva (5:16)
08. Lucid (2:34)
09. Body Studies (5:00)
10. 1709 (2:27)
11. Phase out (0:18)
12. Ohm (2:17)
13. Naoko Pt.1 (4:11)
14. Naoko Pt.2 (5:02)


アイルランド出身のエレクトロニック・プロデューサー ジャック・コレランによるソロ・プロジェクトMmothsの1stフルが仏/UKのBecause Musicよりリリースされました。
2012年、2013年にそれぞれ発表したEPが話題を呼んでいたにも関わらず今作で漸くアルバムデビューとのことですが、どうやら本人曰くデビューに至るまでにはかなり苦労があった模様です。

どのような苦労があったかというと、どうも本作の制作開始と同時にひどいスランプに陥ってしまい、楽曲のアイディアが全く浮かばない無為な日々が続いたらしいのです。
本作の制作開始時期ははっきりしませんが、2013年のEPが3月発表で、本作に収録された楽曲が書き上げられたのが2014年の8~9月のことらしいので、おおよそ1年はアルバムのアイディアを考えあぐねていたようですね。

困り果てたコレランは、古巣のアイルランドをラップトップ一つと数枚の着替えを持って飛び出し、LAの友人宅に転がり込んで環境を変えることでスランプを脱しようと試みました。

アルバムの制作を始めた時点では、色々な楽器をふんだんに使い、プロデュースにも凝りに凝ったものを作りたいと考えていたようですが、あえてラップトップだけで、また、慣れない土地で知り合いも少ない状況で制作することで、本作はコレランの人となりがそのまま音となったようなパーソナルな作品に仕上がったように思います。

さて、元々はチルウェイヴ~ウィッチハウス近辺で評価されていたらしいコレランですが、本作の制作にあたってはMy Bloody Valentineを聴き込み、同郷のケヴィン・シールズの才能に刺激された旨を語っています。
確かに、シューゲイザー的な電子ノイズの奔流はそこかしこで聴くことができるのですが、本作が単なる「MBVフォロワーの電子音楽作品」に堕しているかというと、そんなことは全くありません。
むしろ、MBVの手法からさらに一歩踏み込んだというか、むしろ別の場所に到達できているのではないか、と思えるのです。

まず、今までと大きく変わったのはコレランが自分でヴォーカルをとっていること、そしてその声を原型を留めないほどにイコライズして楽曲の中に埋め込んでいることです。
これは、MBV/ケヴィン・シールズがフィードバックノイズの本流の中にビリンダや自分の声を埋没させたことにも通じますが、まだ言葉の聴き取れたそれとは違い、コレランの場合声はその言葉が判別できぬほどに変化して、完全に「音」としての役割しか果たしていません。

そして、その声はMBV的な分厚いノイズではなく、薄氷のような感触の電子音や、ゆったりとしたダウンテンポなビートなどと掛け合わされ、幾重にも多層化されながら、シンプルでエモーショナルなハーモニー/進行を聴かせます。
その傾向は、まるでティム・ヘッカーのような音響的イントロダクション'You'に続く、先行カット曲でもある'Deu'で即座に理解され、そして他の曲に比べて歌声のはっきり聴き取れる'Eva'にて最高潮を迎えます。

シンプルに反復するビートには繊細な残響処理が施されていますが、その処理の仕方からはジェイムス・ブレイクも思い起こさせるような、ダビーな感覚を覚えます。
大々的に導入された彼自身の声と合わせて考えると、MBVを影響の根源としながらも本作はブレイク以降のUKのR&B/ソウルの文脈に位置づけられても不思議ではない作品なのです。
そしてそこには、先ほど軽く触れたティム・ヘッカー的な音の重ね方も見受けられます。
私としては、本作の在り方は「R&B/ソウル化したティム・ヘッカー」というのが最も適当だと思っているのですが、どうでしょうか?

スランプに端を発し、環境を変えてあえてリスタートを切ることで、本作はコレランの実力が嘘偽りなく投影された作品になったように思います。
もちろん、今回挙げた先行者達にはまだまだ及ばないとは思うのですが、アルバムデビューとしては今後を十分に期待させてくれるような力作に仕上がったと言えるでしょう。
個人的には3rdあたりで大化けする気がします(笑)


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