Thomas Köner "Tiento de la Luz"

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Artist: Thomas Köner
Album: "Tiento de la Luz"
Label: Denovali Records
Year: 2016

Tracklist
01. Tiento de la Luz 1 (8:16)
02. Tiento de la Luz 2 (6:57)
03. Tiento de la Luz 3 (9:47)
04. Tiento de la Luz 4 (7:31)
05. Tiento de la Luz 5 (11:15)
06. Tiento de la Luz 6 (5:26)


ドイツ人アーティスト トーマス・コナーの新作は、2014年の前作""Tiento de las Nieves"に引き続いて、15世紀頃のスペインで生まれた古典ジャンルであるティエントをテーマにしたものとなりました。
コナーは、2012年にアントニオ・デ・カベソンの楽曲('Tiento del Primer Tono')をゴング、ピアノ、そしてライヴ・エレクトロニクスのために編曲したことでこのジャンルと出会い、3部作として発表する予定にしているようです。
(3作目のタイトルは"Tiento de la Oscuridad"というものになる予定)

さて、前作はコナーのソロ・パフォーマンスのためのティエントでありましたが、今作はそれにスルジャン・スタニック(Srdjan Stanic)によるヴィオラと、イヴァナ・ナイマレヴィク(Ivana Neimarevic)のピアノとが加わったトリオ形式での作品です。

以前よりコナーの創りだすサウンドスケープには、とても寒々しい感覚がありました。
初期からしてその特徴は強くありましたが、アンディ・メルウィッグとのPorter Ricksでも見せているとおり、そこにはダブに通底するような残響と、音が響く「空間」に対する独特のセンスがあったことは疑いようがありません。
そして、それはヴィオラとピアノを前提として書かれた今作でも同様です。

ピアノがメロディや散発的な単音を振りまき、ヴィオラがドローニッシュに音を引き伸ばしていく、それらの音が響くための空間をコナーがライヴエレクトロニクスとパーカッションを用いて作り出しています。
ピアノは夢見るように愛らしく響き、そしてヴィオラは幽玄な響きで空間を満たしますが、それと比べるとコナーの音は非常に無機質で怜悧です。

コナーの音は確かに冷たく張り詰めていますが、そうであるからこそピアノ/ヴィオラとうまく対立し、この二声(ピアノが両手であることを考えれば三声)が持つ体温/叙情性を保持させながらも、そこに宿りがちな湿り気のようなべしゃっとした感覚を漂白し、まるでオーロラのように透き通った美しさに昇華しているように感じます。

私自身、彼の作品は初期の三作("Nunatak"、"Teimo"、"Permafrost")とPorter Ricksにしか触れていませんでしたが、今作の雰囲気は、それらの作品で見受けられたマシニック/インダストリーな雰囲気とはまるで違っています。
コナー自身が発する音とは対照的に、自然への畏敬のような感情も感じさせる、とてもスピリチュアルなものに仕上がっているのです。

ブックレットにはコナー自身によるライナーノーツが記載されています(こちらでも要約が読めます)が、そこには彼の感心事が空間と音色にある(あった?)ことや、音そのものは他の音との関係性の中からしかビート/メロディ/ハーモニーを作り出せないということが述べられています。
要は「作曲とは何か?」という疑問が彼自身の中に強く渦巻いており、ヨーガなどを学んだこともあってか、音に関する視点がよりメタな位置に移行しているように感じられました。

この手の音響もの/アンビエント作品というと、音の微細な変化に聴き手の意識を向けさせるマイクロスコピックな手法が近年多かったように思いますが、音そのものではなく、音とその他の音との関係性の中に「音楽的なもの」を見出す姿勢が、今作に今までの彼の作品と違う雄大で自然的な美しさを与えているのかもしれません。
前作と、近く発表予定らしい次作もセットで聴いてみたいと思える作品です。


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