Nik Bärtsch's Mobile "Continuum"

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Artist: Nik Bärtsch's Mobile
Album: "Continuum"
Label: ECM
Year: 2016

Tracklist
01. Modul 29_14 (8:59)
02. Modul 12 (9:02)
03. Modul 18 (8:03)
04. Modul 5 (8:32)
05. Modul 60 (9:27)
06. Modul 4 (5:26)
07. Modul 44 (10:23)
08. Modul 8_11 (8:32)


スイス人ピアニスト ニック・ベルチュのECMからの新作は、かねてより同レーベルでリリースのあったRonin名義でなく、Mobileという名の別バンドでの録音となりました。
元々はこのMobileの方が結成自体は先で、そのヴァリエーションとして結成されたのがRoninのようで、両バンドの相違点は使用楽器がアコースティック限定か、エレクトリックも取り入れているのかという部分のようです。

Mobile名義では別レーベルより"Ritual Groove Music"というタイトルのアルバムを発表していますが、このタイトルやそして今作のタイトル"Continuum"(連続体)という言葉は、彼の音楽を非常に的確に表しているように思えます。

彼の音楽はこれらのタイトルが示す通り、グルーヴ志向のものであり、儀式的な雰囲気を強く持っています。
そしてそれは小さなフレーズを反復させながら連続体を生み出していくことにより醸成させることで生まれ出てくるものです。

バンドは4名からなるカルテットですが、編成はベルチュ本人のピアノ、シャ(と読むのか?Sha)のバス/コントラバス・クラリネット、そしてカスパー・ラストとニコラス・ストッカーの両名によるドラム/パーカッションというややトリッキーなものです。
いくつかの楽曲にはExtendedと名付けられたストリングスクインテットが加わっておりますが、全員禁欲的な演奏で、非常に厳格にフレーズを反復させていきます。

しかしながら、楽曲を聴いた印象では、どうもベルチュの興味は反復そのものにはないように思えるのです。
そういいますのも、本作の楽曲はどれも8~10分の長めのものでありながら、その本質にはかなり明確な展開/コード進行を有しているからです。
それも、単一のフレーズを反復させながら膨らませていったというよりは、最初からしっかりとしたコンポジションがあり、その各部位を反復させているだけ、といった風なのです。

一つのフレーズは徹底的に、擦り切れる(聴き手が聴き飽きる?)直前ギリギリまで反復されますが、非常に絶妙なタイミングで別のフレーズに移ったり、別の楽器(テクスチュア)が加わることでその色彩を変化させていきます。
それにより楽曲は明確な起伏を有しながらも、その展開があまりにスローに起こることにより儀式性を帯びていくのです。
これは、ただ単一のフレーズをストイックに反復していくミニマル・ミュージックよりもむしろ「反復」そのものの力を効果的に取り入れているとは言えないでしょうか。

フレーズを反復させるということにより、聴き手の意識は徐々に弛緩していきますが、ある一定時間を過ぎて弛緩しきってしまうと、その効果は徐々に減退していく(あるいは、意識されなくなっていく)ように思えます。
彼は、その反復による意識の弛緩を、聴き手が自覚できるラインを超えない(本当にギリギリの)範囲で行うことにより、楽曲を展開して起伏を与えることの効果と同居させることに見事に成功しているのです。

そうであるがゆえに、本作の楽曲は陶酔感を強く印象づけながらも非常に理路整然としています。
さらにそこに、アコースティック楽器やストリングスのふくよかなテクスチュアが加わることで、ある種の怪しさを孕んだ儀式性が付与されているのです。
まさに連続体という形のリチュアル・グルーヴ・ミュージックと言えるでしょう。

そして、ストリングスが加わっているというせいもあると思いますが、こういった姿勢は先日紹介したダニエル・ウォールなどのインディー・クラシック勢とも共鳴するように思います。
思えば、ECMはスティーヴ・ライヒの作品なども発表していましたし、もしかするとそのうちインディー・クラシック勢の作品がここから出る、ということもあり得るかもしれません。

かなり見事な作品ですので、ぜひ一聴をおすすめします。


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