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Daniel Wohl "Holographic"

wohl.jpg


Artist: Daniel Wohl
Album: "Holographic"
Label: New Amsterdam
Year: 2016

Tracklist
01. Replicate (Part 1) (6:04)
02. Replicate (Part 2) (11:03)
03. Formless (5:31)
04. Holographic Intro (1:16)
05. Holographic (8:09)
06. Pixel (2:17)
07. Source (8:18)
08. Progression (6:52)
09. Shapes (6:10)


フランス出身の作曲家ダニエル・ウォールが今年初めにNew Amsterdamより発表した新作は、私個人にとってはかねてよりポスト・クラシカルと呼ばれて一部で盛り上がりを見せたシーンや、あるいは現在インディー・クラシックと呼ばれ徐々に注目を集め始めているシーンについて考える良い契機に(現在進行形で)なっていると感じています。

この2つのジャンル、どうにもややこしいというか、ポスト・クラシカル自体が物凄く巨大なムーヴメントを形成したわけでもなく、どちらかというとやや地味な、良く言えばアンダーグラウンドなまま好事家達の間で評価されていたという印象が強かったもので、突如インディー・クラシックなる新ジャンル名が出てきた時は「ポスト・クラシカルじゃダメなのか?どう違うのか?」という疑問が非常に強かったんですよね。
昨年末になってユニヴァーサルが『これがポスト・クラシカルだ!』なんて今更すぎる編集盤を編んだことも疑問に拍車をかけた部分があると思います。

しかしながら、ダニエル・ウォールの今作を聴いてみて、彼をいわゆる「インディー・クラシック」側のミュージシャンととるのであれば確かに区分けが必要というか、感覚的にではありますが「ポスト・クラシカルとは何かが違う」印象があったのです。
何が違うのかという部分がまだはっきりとつかめてない部分があるのですが、最も大きいのは他ジャンルでも90年代以降問題とされている「テクスチュア(質感)」と「コンストラクチュア(構造)」のどちらに意識が向いているか、という点ではないかと思います。

ウォールの今作はどの楽曲を見てみても、小さなフレーズ(モジュール)の集積からなる非常に構造的な音楽が提示されています。
それ(フレーズ)が徹底的に反復されるかコラージュ的に織り合わせられるかの違いはありますが、音を足し引き/変化させながら組み合わせることで聴感上の印象の変化を狙っているようなコンポジションなのです。

同じテクスチュアを維持するモジュール群が組み合わさり/入れ替わり/多層化することでそこに新たなイメージを描き出していく。
この態度は間違いなくスティーヴ・ライヒフィリップ・グラスなどのミニマル・ミュージックの作曲家達の延長線上にあるものだと思います。

対するポスト・クラシカルはというと、そのクラシックに対する興味のポイントはオーケストラルな音のテクスチュアにあったように思います。
テクスチュアへの興味というのはそのまま「特定の雰囲気への志向」と言い換えてもいいかもしれません。
それは確かに、MikkiやJazz The New Chapterシリーズなどにも記事を提供されている八木皓平さんが仰るとおり、アンビエント/ドローンからの派生と言える感覚だと思います。

一つの音が長く引き伸ばされ、暫時的に変化していく(=ドローン)中には、ある意味では構造などあってないようなものですので、当然音色や響きなどのテクスチュアこそがコンポーザーの注目する対象となってきます。
そこにおいて「楽曲の変化」とは「音色/響きの変化」とほぼイコールであり、そのマイクロスコピックな興味から出発した楽曲は、最初から終わりまで「大きくは変化しない」雰囲気(=アンビエント)を持つことになります。

そして、そういったテクスチュアを大切にしすぎる態度は、コンポーザー達から「フレーズそのものの強靭さ」を生み出す力を奪ってしまうことがあります。
音の連なり、すなわち経時的に見ればメロディ、同時的に見ればハーモニーという「構造」が本来的に持つ力/魅力が、安易なロマンティシズム/ドラマティシズムに陥ってしまう危険性が強まってしまうのです。
ポスト・クラシカルの作曲家の中に映画音楽の作家としても活躍している人が多いというのはそういったところに起因するものが大きいのでしょう。
要は「聴きやすい」わけでして、それは裏を返せば「深く考えなくても印象だけで聴けてしまう」のですね。
(もちろん、別の観点から見ればそれはそれで非常に魅力的なのは言うまでもありませんが。)

そういった点で言えば、ウォールの今作(あるいは過去のミニマル作家達の作品)は構造的には非常に複雑です。
聴き手は小さなモジュール群が織りなす関係性の中から、自身の聴覚にしたがってイメージを描き出していくという中々に困難な作業が必要となりますが、そうであるがゆえにこれらの楽曲は純粋な輝きを放っているように思えるのです。
そしてアルバムタイトルとされた「立体映像的(holographic)」というワードは、ウォールが小さなモジュールから複雑で美しい構造を生み出しているということを如実に物語っています。

今作の楽曲には、他に「複製」「不定形」「ピクセル」「源」「前進(進行)」「形状」などという無味乾燥なタイトルのものが並んでいますが、実はその中には非常に豊かな情景が広がっています。
そしてそれを提供してくれるのは、大きな楽団を擁したり、あるいはそういった団体や企業から委嘱されたりして作曲を行う高名なプロフェッショナル達ではなく、志を同じくする楽団の協力を得ながら自身の音楽を追求する、在野(=インディー)の音楽家達なのかもしれません。


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