James Blake "James Blake"

james-blake.jpg


Artist: James Blake
Album: "James Blake"
Label: Polydor UK
Year: 2011

Tracklist
01. Unluck (3:00)
02. The Wilhelm Scream (4:37)
03. I Never Learnt to Share (4:52)
04. Lindisfarne I (2:42)
05. Lindisfarne II (3:02)
06. Limit to Your Love (4:37)
07. Give Me My Month (1:56)
08. To Care (Like You) (3:53)
09. Why Don't You Call Me? (1:36)
10. I Mind (3:31)
11. Measurements (4:20)


ジェイムス・ブレイクのアルバムデビューは、間違いなく2011年のポピュラー・ミュージック界における最初にして最大の衝撃でありました。
それまでの、'CMYK'などで見られたダブ・ステップのその先(にあるクラブ・ミュージック)を予感させるような作風をあっさりと切り捨てたのももちろん、彼が到達した位置が明らかにSSW然としたものであったことがその最大の理由だと思います。
コレ以降、ポスト・ダブステップと目されるミュージシャンたちの多くがヴォーカル・オリエンテッドな方向へと大きく舵取りをしたことについては、全ての原因が彼に帰されることはないまでも、この作品が大きな影響源の一つとなったことは間違いないでしょう。

近年稀にみる衝撃作であることは間違いありませんが、そういった評価とは裏腹に、楽曲を構成している要素はそれほど多くなく、シンプルです。
何よりもリズム・トラックの簡素さがまず耳に入ります。いらないものを極限までそぎ落とし、まるで空白/余白を強調するかのように構築されたそれは、音響や歌声がニュアンスをにじませる空間を十分に提供しながら、それとは逆に楽曲全体を閉塞的な雰囲気で包み込みます。これは、My Bloody Valentineなどを例に取れば分かりやすいかと思いますが、本来であれば空間を埋め尽くしてしまうはずのノイズの奔流が、むしろ開放感を聴く者に感じさせるのとは全く逆の効果です。
リズムトラックを簡素化して創りだした空間に楽器や声のニュアンスをにじませる、という意味ではスライ"暴動"D'Angelo"Voodoo"、そしてSade"Love Deluxe"といった、「間」を有効に活用したソウル/R&B/ファンクからの影響も強いように感じます。

そして、この作品最大の特徴は、やはりオートチューンにより変調させられた彼の歌声です。
これを聴いて「無機質」とか「匿名性をもたせようとした」と評価した方もいらっしゃるそうですが、本質的にはむしろ逆で、ピッチ操作により捻じれる声こそが彼の虚無的な苦悩をそのまま表現しているとしか思えません。
歌詞の構造にしても、三行詩(1曲目や、父親ジェイムズ・リザーランドの楽曲のヴァリエーションである3曲目)やワンフレーズの執拗なリフレイン(3、5,9曲目)という特徴を有していますが、それは虚無的な「どうにもならない/どうしようもない/どうするつもりもない」という思いを強く聴き手に抱かせ、奈落の底に突き落とします。
三行詩的な構造から見るにつけ、そこにはブルーズ・フィーリングが、現代的な人間のものとしてアップデートされた状態で存在しているようにも思えます。

こうやって見ると、彼の音楽の根っこには黒人音楽的な要素がかなり強く渦巻いています。
非常にUK、そして現代らしい感覚でもってそれを解釈しなおし、見事なソウル・アルバムとして構築したこの作品は、これから先彼が作品を重ねていったとしても、似たようなものを作ることが困難な孤高性をもった傑作として輝き続けることでしょう。

(2013/6/1 twitterで「ヴォコーダーではなくオートチューンではないか」とご指摘いただきいたので、修正しました。)

[以下は2011/3/1に書いたものです]
たまには新譜の紹介を、ということでコレ。
ジャンルとしてはダブステップというものになります。2ステップやガラージ、グライムといったUKのクラブミュージックから派生しつつ、ドラムやベースにダブのような行き過ぎた音響処理を施すことでクラブミュージックとして不適格なほどに深い陰影を湛えたもの、という自分でもよくわからない説明しかできないのですが、基本的にはクラブミュージックの一ジャンルと考えていただければよろしいかと思います。

この人の特異性というのはそういったダブステップのフォーマットから派生しておきながら、まるでニック・ドレイクなどのSSW然とした内省的な雰囲気を内包しているところにあるいといえるでしょう。一見水と油に見える「ダブステップ(クラブミュージック)」と「SSW」というこれら二つの要素の境界を曖昧にし、融解させてしまっています。

ゆらゆらとした横ノリに身を委ねていたはずなのにいつの間にかずぶずぶと自己の内面に潜り込んでいたり、あるいはその逆だったり。自己が空気に溶け出す感覚、あるいは空気が自己の中に流れ込んでくる感覚。ある意味SSWの最新型と言っても過言ではないのかもしれません。




James BlakeJames Blake
(2011/02/15)
James Blake

商品詳細を見る
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

vuoy

Author:vuoy
音楽好きです。
情報に間違いなどありましたらコメント欄で結構ですので気軽に連絡ください。
Last.fm
twitter

【注意事項】
まれに、当blogの記事をオークションの商品説明に引用またはURL貼付されているページを見ることがあります。
当blogの記事はあくまで個人の感想であり、ミュージシャン本人以外の利益に供する目的はありませんので、商用目的での無断引用/URL貼付はご遠慮願います。
どうしてもという場合には、twitterなどでご相談いただければ検討しますので何卒ご理解いただきますようよろしくお願いします。

アクセスカウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
vuoy's Profile Page
Twitter
検索フォーム
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
176位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
46位
アクセスランキングを見る>>
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR