Ralph Alessi "Quiver"

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Artist: Ralph Alessi
Album: "Quiver"
Label: ECM
Year: 2016

Tracklist
01. Here Tomorrow (2:57)
02. Window Goodbyes (5:18)
03. Smooth Descent (6:56)
04. Heist (6:46)
05. Gone Today, Here Tomorrow (9:49)
06. I to I (6:14)
07. Scratch (5:17)
08. Shush (7:05)
09. Quiver (4:14)
10. Do Over (1:47)


サンフランシスコ出身のトランペッター ラルフ・アレッシの新作がECMよりリリースされました。
ECMでは2013年の"Baida"(未聴)に引き続き2作目となります。
前作と同様のピアノを加えたワンホーンカルテットによる演奏で、ピアニストがジェイソン・モランからゲイリー・ヴァーセイス(ヴェルサーチ?)に交代した以外は、ドリュー・グラスとナシート・ウェイツという馴染みの面子で録音されました。

昨今ジャズに注目が集まっており、リズム面やあるいは他ジャンルとのクロスオーヴァー的な動きからくる革新性を軸に語られることが多いように感じていますが、個人的にはそういった動きから得られたものをどうやって本来のオーソドックスなジャズに落としこんでいくのか(≒狭義の「ジャズ」をどのようにアップデートしていくのか)、という側面が実は重要で、一番面白い部分なのではないかと感じています。

そういった流れはM-BASEの頃からあったように思いますし、事実グレッグ・オズビーの元で頭角を表し、今やBlue NoteやECM関係の作品で引っ張りだこのモランはもちろんのこと、今作の主役であるアレッシもそのキャリアにはM-BASEが関わっているようです。
M-BASEが本来的に目指していたものが即興演奏の方法論をアップデートすることであったとするなら、その構成員達がオーソドックスなジャズ・コンボに回帰していくというのはある意味で自然な流れなのかもしれません。
そして、本作ももちろんそういった流れの中にある作品だと言えるのではないかと思います。

本作は先ほども申したように、ワンホーンカルテットの作品で、ある部分では実にオーソドックスなジャズをやっているように思います。
頭の固い(失礼)ジャズリスナーでも本作を「こんなものジャズじゃない」だなどとは到底言わないでしょう。

前作"Baida"は「全てが彼に寄り添っている(everything came together with him)」という言葉と共に好評を得たようですが、本作もその言葉通り、非常に調和がとれた端正な演奏がなされています。
アレッシのトランペットはとても穏やかな美しい音色を用い、思索的なフレーズや伸びやかなサスティンでバンドの演奏を牽引しており、3人のメンバーは堅実なサポートでもってそれに応えています。

しかしながら、彼らの演奏がこの哀愁漂うソロイストにおとなしく付き従うものかと言えばそうではありません。
彼らの演奏は一見静かでありながら、その中には変拍子やアブストラクトなカウンターライン/フレージングが潜んでいます。
ナシート・ウェイツはモランとのバンドThe Bandwagonのような激しさこそ控えめなものの、時にメカニカルに、時に生き物のように有機的に、複雑に変化するリズムを自在に叩きだしていますし、新ピアニストのヴァーセイスはリリシズム溢れるプレイでありながらも、ところどころでアレッシのトランペットと乖離しそうな不協和ぎりぎりのフレーズをぶつけています。
そしてドリュー・グラスは他の3人の演奏を橋渡しするかのように動き、バンドの演奏に明確な方向性を持たせることでアンサンブルを強化しています。

一人一人の演奏を追いながら聴くと、緊張感に溢れているようにも思えるのですが、それも含めて本作はジャズ・コンボとして非常によく調和しているといえるのではないかと思えます。
殊更に主張されるような革新性こそないかもしれませんが、ジャズというジャンルが最も愛されていた時代の雰囲気を持ちながらも黄金期の幻想に取り憑かれることなく現代的な同時代性を堅持している、完成度の高い作品です。


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