Jason Moran "Soundtrack to Human Motion"

moran1st.jpg


Artist: Jason Moran
Album: "Soundtarck to Human Motion"
Label: Blue Note
Year: 1999

Tracklist
01. Gangsterism On Canvas (4:37)
02. Snake Stance (4:41)
03. Le Tombeau De Couperin / States Of Art (5:23)
04. Still Moving (5:56)
05. JAMO Meets SAMO (5:35)
06. Kinesics (3:04)
07. Aquanaut (6:22)
08. Retrograde (6:25)
09. Release From Suffering (5:15)
10. Root Progression (5:22)


とうとう当blogも300作品目のレビューです。
100作品目はザッパの"Hot Rats"、200作品目は山本精一の"なぞなぞ"をレビューしましたが、300作品目の今回はここ数年私の心を掴んで離さないジャズ・ピアニスト ジェイソン・モランの記念すべきデビュー作品を紹介したいと思います。

以前にもThe Bandwagon(タラス・マティーン&ナシート・ウェイツ)を率いての3rd"Black Stars"、ソロ・ピアノの4th"Modernistic"を紹介させて頂きましたが、今回は最初ということで、まだThe Bandwagonも結成前の、初々しい(?)モランを聴くことができます。
しかしながらこの時点でモランの独自性は十分に現れておりますし、また、脇を固めるメンバーの好サポートもあって、非常に充実した作品となっているように思います。

さて、本盤のおけるメンツですが、まずリズム隊については後のThe Bandwagonの2人に代わりロニー・プラキシコ(Ba)とエリック・ハーランド(Dr)が勤め、楽曲によりサポートとしてグレッグ・オズビー(Ss/As)、そしてステフォン・ハリス(Vib)が参加しています。
いずれもM-BASE人脈ですが、モラン自身M-BASEが出自という部分もありますし、また、彼をBNに呼び込んだそもそもの張本人がオズビーですので、まさに本時点で持てる人脈を駆使した結果なのだろうと思います。(ちなみに、プロデュースもオズビー)

アルバムは、これ以後幾度と無くリアレンジ/変奏されながら各アルバムに収録される'Gangsterism on Canvas'からスタートし、収録曲の内一部を除き全てモランの作曲です。
次作以降はジャズ畑にこだわらない柔軟なカヴァーセンスを発揮してリスナーを楽しませてくれますが、第一作目ということもあり、自身の楽曲で固めてきたのでしょう。
唯一の例外が3曲目の前半'Le Tombeau de Couperin'(クープランの扉)です。モーリス・ラヴェルの作曲によるものですが、自作の'State of Art'と巧みに繋げられ、自然な単一の楽曲として仕上がっているように思います。
唯一のカヴァーがラヴェルというところに、ビル・エヴァンスに通じるものを感じたりしますね。

モランのピアノは、彼が手ほどきを受けたジャッキー・バイアード、リチャード・エイブラムス、そしてアンドリュー・ヒルという面々や、そもそもジャズを志すきっかけとなったセロニアス・モンクなどからも想像ができるように、決して分かりやすいものではありません。
思索的で抽象的でありながらもゴツゴツとした黒いフィーリングを湛え、更にそこには元々がクラシックを学んでいたという経歴からのものと予想される折り目正しいエレガンスが漂っています。

彼の演奏/作品を語る上で最も重要なのが、この「エレガンス」だと個人的には思うのです。
どんなにフリーキーで、アヴァンギャルドに攻めている時でも、物思いに耽るかのようにぽつりぽつりとアブストラクトなフレーズを紡いでいく時でも、彼の演奏には常に一歩引いたような客観性、ひいては余裕のようなものが感じられるのです。
それが彼の音楽に、他のジャズには見られないエレガンス=気品を付与しているのだと思いますし、またそうであるがゆえに彼の音楽はどんなに難解になろうとも、あるいはうっとりするようなわざとらしい美フレーズ(殆ど弾きませんけど 笑)を弾いている時ですら、例えようもない強烈なクールさを現出せしめているのだと感じます。

そういったモランの演奏を、サポートメンバー達は十分に理解したうえで最適の演奏でもって答えています。
プラキシコ/ハーランドのリズム隊は、流石に次作以降のThe Bandwagonのように長い時間を共にしたわけではありませんのでインタープレイは多少少なめですが、それでもなおモランの演奏に上手くあわせたり、要所要所ではモランを挑発するような仕草を見せる好サポートですね。
2人ともやや軽めというか、M-BASE出自の割に(?)スウィング感が強く、オールドファッションな4ビートなどを抽象的な楽曲に平然と盛り込んだり、あるいはそれをフリー以降のロックドラムの要素を交えたリズムやHIPHOPからの影響を感じさせるものに変化させたりしながら、ビートを破綻なくまとめています。
非常に遊び心があると言いますか、プレイアビリティに溢れた演奏で刺激的です。

オズビーは非常に貫禄があり、M-BASE的な旋律転換法に準じながらも、メカニカル/無機質に陥らずに有機的な要素を感じさせてくれ、次世代のバップ/ジャズを演奏するミュージシャンとして円熟した演奏を聴かせますし、ハリスのヴィブラフォンはボビー・ハッチャーソンなどからの影響が強く感じられ、モランのピアノと合わせどこかヒルとハッチャーソンの共演にも通じるものがあるように思えます。

後の作品のような挑戦的な要素はまだまだ弱いですが、この時点でモランが出せるものをすべて出し切ったような力作だと思います。
当時「年間最優秀レコードでなければ年間最優秀デビュー・アルバム」という評があったのも納得です。
CDは廃盤になって久しいですが、BN75周年の関係でLP再発がされていますので、ぜひとも聴いてみていただきたいところです。



(オズビーのライヴのようですがメンツは今作と同様の6人のようです。)
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

vuoy

Author:vuoy
音楽好きです。
情報に間違いなどありましたらコメント欄で結構ですので気軽に連絡ください。
Last.fm
twitter

【注意事項】
まれに、当blogの記事をオークションの商品説明に引用またはURL貼付されているページを見ることがあります。
当blogの記事はあくまで個人の感想であり、ミュージシャン本人以外の利益に供する目的はありませんので、商用目的での無断引用/URL貼付はご遠慮願います。
どうしてもという場合には、twitterなどでご相談いただければ検討しますので何卒ご理解いただきますようよろしくお願いします。

アクセスカウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
vuoy's Profile Page
Twitter
検索フォーム
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
459位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
83位
アクセスランキングを見る>>
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR