Basic Rhythm "Raw Trax"

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Artist: Basic Rhythm
Album: "Raw Trax"
Label: Type
Year: 2016

Tracklist
01. Raw Trax (Weekend Rush) (4:34)
02. Raw Basics (5:56)
03. Prototype (3:59)
04. Maintain (5:29)
05. Your Love (4:34)
06. Get Dark (4:36)
07. Feel Me (5:01)
08. Break It Down (4 Da Kru) (5:03)


Imaginary Forcesという名義での活動で現在注目を集めている、UKのミュージシャン アンソニー・J・ハートによる別名義Basic Rhythmの初となるアルバムがTypeよりドロップされました。
昨年、Imaginary Forcesの好評についてはちらちらと確認しておりましたが、作品を聴くまでには至っておらず、私自身は今作にて初めて彼の音楽に触れましたが、その衝撃というと凄まじかったです。

今作は、まずもってドラムンベースや2ステップ~ダブステップというUKベースミュージックの伝統に根ざした、それら直系の作品であることは間違いないと思います。
R&B/ソウル・ミュージックのマナーを想起させるヴォイスサンプル、ビートの頭を誤解させるかのようなひねくれたビートメイキングなどはまさにそのことを証明していると言えるでしょう。

しかし、私が今作を聴いて最初に思い浮かべたのはそれらでなく、むしろさらにそれらの源流であるデトロイト・テクノでした。
何がそう思わせたのか、というとやはり音と音との隙間に尽きるのではないかと思います。

今作には確かに複雑なリズム・プログラミングがあります。ヴォイス・サンプルや電子音響がある種の空気=アトモスフィアを形作るように配置されてもいます。
ですが、それらの音をあてがわれた後でもなおアンソニーの創る楽曲は見事なまでにスカスカです。
ヴォイス・サンプルも電子音も、ビート自体とはどこか別の次元で鳴っているかのような、ちぐはぐとした印象を感じさせます。
ビートは複雑ですが、それと同時に太い芯が一本通ったような強烈なパルス(拍節感)も持ちあわせており、かなり黒いミニマル要素を感じさせるのが、その乖離した感覚の原因かもしれません。

ドラムンベースをはじめとするUKのベース・ミュージックは、ビートの隙間を派手な/ノイジーな音響効果により埋め尽くそうとしてきた側面があるように思います。
元々がダブによる空間性の強調を面白がった部分があるので、それ(空間性)を活かす方向に進化してきた、ととることもできますが、やはり「空間」を聴き手に意識させるのにもっとも必要なのは「隙間=空白」の存在なのでしょう。音が響くためには壁(による反響)こそが必要であり、それを意識させるためには音の反響/残響が響いていることを聴き手が十分認識できる程度の空白は不可欠なのです。

アンソニーはそれをよく理解しているように思えます。
そして、それこそがダブ~レゲエも含めたブラック・ミュージック的な美意識なのであり、そこには当然デトロイト・テクノも含まれています。
そうであるからこそ、彼の音楽はUK的な空気を孕みながらもなおその源流であるデトロイト・テクノからの影響を強く感じさせるのではないでしょうか。

ここ数年ロウ・テクノ(Raw Techno)というサブジャンル(?)が世間を賑わせているようです。
同時代的な流行りに疎い身としてはなかなかそれらの音をリアルタイムで追いかけていることができていない部分はあるのですが、アンソニーの創る音楽はそのまっただ中にあるのではないか、という直感があります。
それは、Basic Rhythmという大胆不敵な名義の示す通り、あるいは先に上げたような「音の隙間」を大切にする姿勢が示す通り、UKベース・ミュージックはもちろんとして、その源流のデトロイト・テクノまで含めた「テクノ・ミュージック全般」を改めて見つめ直したがゆえの所作であり、発展途上のテクノが有していた粗くむき出しの(rawな)テクスチュアを彼が好み、愛し、表現し尽くしていることを示しているのではないかと思うのです。


[2017/03/27 追記]
ご本人の発言より、ガラージからの影響については明確に否定されているため文章を一部修正しました。


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