GoGo Penguin "Man Made Object"

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Artist: GoGo Penguin
Album: "Man Made Object"
Label: Blue Note
Year: 2016

Tracklist
01. All Res (5:16)
02. Unspeakable World (4:44)
03. Branches Break (4:23)
04. Weird Cat (5:39)
05. Quiet Mind (4:24)
06. Smarra (6:31)
07. Intiate (4:47)
08. GBFISYSIH (3:22)
09. Surrender to Mountain (3:59)
10. Protest (4:45)


UKマンチェスター出身のトリオGoGo Penguinの3rdアルバムが、名門Blue Noteより発表されました。
ドラムのロブ・ターナー、ピアノのクリス・イリングワース、ベースのニック・ブラッカの3名からなるこのトリオは、編成こそジャズのアコースティックなピアノトリオの形に準じているものの、ジャズというジャンルに収まらない独自性を有しています。

彼ら3人の音楽観の源泉として一番に挙げられるのは、エレクトロニック・ミュージックです。
いわゆる「ウワモノ」的なラインを辿るピアノ、グイグイとした強力な推進力を持つベース、そして非常に細かい譜割りで複雑なリズムを構築していくドラムスと、その全てがハウス、ドラムンベース、IDM、ダブステップなどの、ヨーロッパの電子音楽のスタイル/様式を強く宿していることは一聴して分かると思います。

メジャーデビュー作となる本作でもその方向性は変わっていません。
オフィシャル・ページでドラムのターナーが語っているとおり、今作の作曲はまずAbletonやLogicなどのソフトを使って行われたようです。
それをバンド全員で聴き、どうやってアコースティックな形に落としこんでいくかを話し合いながらアレンジしていくことで最終的な形が決まっていくわけですが、一度PCを用いて作った、無機的な楽曲を有機的な形に再構築していくという過程に、彼らの独自性の源があるのは間違いないと思います。

最初にPCで作られていることもあり、ミニマリズムを軸にした楽曲構造や、幾何学的なフレーズの組み立て方には電子音楽的なマナーが見て取れます。
それを改めて3人の人の手で再構築することで、そこには人力、あるいは生楽器で有るがゆえの「ブレ」や「有機性」が付与されることとなります。

ドラムは殆どの曲においてルーディメンツを多用し、非常に細かく込み入ったフレーズをたたき出しますが、そこには「スイング感」とでも言うべき揺らぎが感じられます。
もちろん、PCで作曲した複雑なパターンを間違えることなく再現できる卓越したテクニックがあることは確実です。
しかし、だからといって機械が演奏したものを完全に再現し切ることには大した価値はありませんし、そもそもそんなことは不可能です。
おそらく再構築前のリズムトラックはもっと硬質で、無機質なものであったのだろうと推測されますが、人の手で演奏される(=肉体という制限が入る)ことにより、演奏は驚くほどに柔らかさ、しなやかさを帯びています。
ベースも同様ですがこちらはさらに独特で、ダブルベース特有の倍音を強調した音の質感/テクスチュアは、彼らの音楽をすんでのところでジャズに繋ぎ止めると同時に、電子音楽のグリッチー/アシッドなベース音にはない色気を生み出します。
フレージングに関して言えば、ベースが最もジャズっぽく、ピアノやドラムに負けることなく強力に楽曲を牽引しています。

そしてそのドラムやベース(そしてピアノ)の音の背後には、音が響く空間の存在が見て取れます。
確かに、音のパラメーターをいじることができるPCであれば、それ(生楽器の響き、空間の響き)を再現することは事実上可能ではあるのでしょう。
しかしながら、人力であるがゆえの演奏のブレまで入ってくると、とてもではありませんがPC上で構築できるとは思えませんし、そうであるからこそ彼らのような試みには価値があるのです。

PCで緻密に作り上げた設計図を元に手作業で彫刻を掘りあげていくような倒錯的な作業の果てに、彼らの音楽は電子音楽にはないテクスチュア/揺らぎと、単なるジャズにはないバレアリックな享楽性や込み入ったリズム構造の狂気といった全ての要素を持ち得たのです。
本作はメジャー1枚目であるためか、リードトラックの01を始めとして、彼らのそういった方向性が明確に打ち出された楽曲ばかりが収録されており、また48分弱という収録時間も手伝って、とてもコンパクトでありながらも聴き応えのある、しっかりとした作品に仕上がっているように感じました。

あと欲を言えば、逆のやり方でジャズのスタンダード曲を電子音楽的にアレンジしたような楽曲が1~2曲あればよりアルバムの構成が引き締まったように感じますが、そのあたりはこれからに期待することにしましょう(笑)
BNとは複数枚契約しているとのことですので、とりあえずはこの期待の新バンドが名刺代わりに放った今作を楽しむことにしたいと思います。


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No title

こんばんは お久しぶりです。

このバンドは前作から追いかけており自分もレビューを書いたのですが、
こちらでは「音楽の設計をPCから起こし、人力で演奏した」効能について
分かりやすく書かれていて、別の角度で楽しめそうです。

Re: No title

>> 旧一呉太良さん

お久しぶりです。
私は最近、本当にたまたま彼らのことを知りましたが、
ちらちらと調べていると貴blogでいち早く前作が取り上げられていたのですね。

まだ前作は聴けてないのですが、今作はよりドラムの躍動感が増しているということで、
前作がどのような作風なのか非常に興味が湧いているところです。

>音楽の設計をPCから起こし、人力で演奏した
ということについては単に「人力でやりたかった」というよりは
人力ゆえの要素をエレクトロニカ的な音楽に導入したかった、ということなのかな、
と思いまして色々考えてみました。
どうやらこういう手法をとったのは今作かららしいので、そういう意味でも前作までの作風が気になっております。
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