David Bowie "★(Blackstar)"

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Artist: David Bowie
Album: "★(Blackstar)"
Label: ISO
Year: 2016

Tracklist
01. ★(Blackstar) (9:57)
02. 'Tis A Pity She Was A Whore (4:52)
03. Lazarus (6:22)
04. Sue (Or In A Season of Crime) (4:40)
05. Girl Loves Me (4:51)
06. Dollar Days (4:44)
07. I Can't Give Everything Away (5:47)


1月10日、英国のシンガー デヴィッド・ボウイが69年の生涯を終え、自身が70年代に創造したキャラクター ジギー・スターダストよろしく、天(宇宙)に還ったことが伝えられ、私を含め全世界のロックファン、音楽ファンに多大な衝撃を与えました。

ちょうど、ボウイはその2日前に新作である"★(Blackstar)"を発表したばかりで、誰もが、2013年の復活以降の彼の好調を疑っていなかったと思います。
今思えば、2013年初めに復活の狼煙として発表された'Where Are We Now?'などには、確かに人生の終焉を見つめたかのような雰囲気が流れていたように感じますが、今更言っても詮無いことでしょう。

さて、残された我々はとにかく、彼の遺した28枚のオリジナルアルバム、特に最新作であり、遺作である本作を髄の髄まで楽しみ、後世に伝えていくほかありません。

本作については発表前からより、の気鋭のジャズミュージシャンたちが招聘されていることが話題となっておりました。
そのメンバーとは、ギタリストのベン・モンダーや鍵盤奏者のジェイソン・リンドナー、管楽器奏者のダニー・マッキャスリン、ベーシストのティム・ルフェーヴル、そしてドラマーのマーク・ジュリアナの5人です。

しかしながら、ボウイが今作でジャズをやりたかったのか、というと答えはノーです。
ここに収録されている楽曲は純粋なロックンロールでこそないものの、とてもではありませんが(いわゆる)ジャズではありません。
では、ボウイが彼らジャズ・ミュージシャンに必要としたものは一体何だったのか。
それはシンプルに「彼らの演奏技術」ではないかと思います。

今作は、収録曲数こそ少ないものの、1曲あたりの密度が高く、たった7曲でありながらアルバム収録時間は41分という、一昔前のプログレバンドのアルバムのような形になっています。
彼のキャリアの中で言えば、1曲目が10分近いことからも"Station to Station"が近いかもしれませんね(プログレじゃないけど 笑)
楽曲も、非常にメリハリの聴いた構成になっており、緊張と弛緩の間を絶妙に行き来しながら、ボウイの「歌声」を際立たせます。

そう、本作は先に挙げた"Station to Station"に倣い(私の友人の評によれば、STSは「ボウイが珍しく真面目に歌ったアルバム」とのこと)、「歌」のアルバムなのです。
もちろん、バックのジャズミュージシャンたちの演奏一つ一つに面白いところ、聴きどころはありますが、彼らの演奏の「肉体性」や、複雑なラインが絡みあうことで生まれる「幾何学的な快楽」は本作では感じられません。
彼らの演奏は、ボウイにより完全に統制/抑制され、彼の書いた楽曲に十二分に奉仕するように、その構成物の一部となっています。

今までのボウイは、ごく初期("Hunky Dory"あたりまで)を除き、コンセプト先行の作品作りをしてきたように思いますし、歌声もそれに合わせて様々に変化させてきました。
「カメレオン・アーティスト」なんて呼ばれることも多かったのですが、それと同時に彼は「カメレオン・ヴォーカリスト」でもあったのです。

今作では、歳を取り、さらには死を目前にした彼の「生の声」が溢れています。
サスティンは震え、全体的にウィスパー気味な歌唱となり、高い声も最早ファルセットなしには出せない…そんな「肉体的な衰え」が彼の歌声からは十分に感じられます。
しかし、ボウイはそれに抗うのではなく、それを人という身で受けるべき必然的な運命であることを受け入れた上で、自身の統制するジャズ・ミュージシャン達による、時にアグレッシヴな、時にメランコリックな演奏に自身の声を溶けこませます。

老いた自身の声を存分にサポートし、かつ楽曲の構造(緊張と弛緩の行き来)を理解した演奏ができ、そしてなおかつ(STSなどのようにソウルや、他のジャンルに傾倒するのではない)自身のありのままを伝えることができる演奏者として、表現力の豊かなジャズ・ミュージシャン達を選んだのではないかと思うのです。

すなわち、これは、ボウイが69年の人生の最期に作り上げた「老成のヴォーカリスト」としてできることを表現しきった作品なのです。
もしかするとボウイは、ここで一旦記録的な作品を作った後に、自分の命が尽きるまではどんどん新たなチャレンジをしていくつもりだったのかもしれません。(そういう意味では、チャレンジ精神が枯渇していないことのアピールも兼ねていたのかもしれません)

しかし、彼は今作を残し宇宙に還ることとなってしまいました。
残されたのは、ミュージシャンとしての成功以後、カメレオンのように音楽性を変遷させてきた彼の「2015年(あるいは2016年)のそのまま」を写しとった作品だったのです。

死の直前に発表されたのが03であったことも含め、なんて出来過ぎな死なのでしょうか。
でも、ボウイだからこその死、という印象は誰もが受けていることかと思います。
とにかく、彼は死期を悟った後、新作の発表時期などを、「自身の死」すらアートと化せるようなタイミングに調整(もちろん、読みきれない部分はあったにせよ)することで、正に「アーティスト」として完璧に生を全うしたのですから、脱帽です。
我々は、最期まで彼に「してやられた」のですから。

ありがとう、そして、さようなら、デヴィッド・ボウイ。
心からご冥福をお祈りして、追悼のレビューとさせていただきます。



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