A$AP Rocky "At.Long.Last.A$AP"

Artist: A$AP Rocky
Album: "At.Long.Last.A$AP"
Label: RCA
Year: 2015
Tracklist
01. Holy Ghost [feat. Joe Fox] (3:11)
02. Canal St. [feat. Bones] (3:47)
03. Fine Whine [feat. M.I.A., Future & Joe Fox] (3:38)
04. L$D (3:58)
05. Excuse Me (3:58)
06. JD (1:48)
07. Lord Pretty Flacko Jodye 2 (2:07)
08. Electric Body [feat. Schoolboy Q] (4:15)
09. Jukebox Joints [feat. Kanye West & Joe Fox] (5:24)
10. Max B [feat. Joe Fox] (4:01)
11. Pharsyde [feat. Joe Fox] (3:42)
12. Wavybone [feat. Juicy J & UGK] (5:03)
13. Westside Highway [feat. James Fauntleroy] (2:57)
14. Better Things (3:19)
15. M’$ [feat. Lil Wayne] (3:53)
16. Dreams (Interlude) (2:17)
17. Everyday [feat. Rod Stewart & Miguel] (4:21)
18. Back Home [feat. Mos Def, Acyde & Yams] (4:38)
今年はあまりHIPHOP方面には食指が動かなかった一年でした。
ケンドリック・ラマーもドレーも、話題作といえるものは全く聴いておりませんし、改めて今のシーンがどうなっているのかということもあまり存じておりません。
唯一聴いたのはNY出身のラッパー エイサップ・ロッキーが発表した2nd"At.Long.Last.A$AP"でした。
元々2013年の1stがチルウェイヴやダブステップ通過後のHIPHOPとして好評価を得ていたようですが、今作では非常にどす黒い(人種的な意味でなく)何かが渦巻くようなドロドロとしたサウンドがほぼ全編わたって繰り広げられております。
一部ではトリップホップ(特にPortisheadあたり?)と比較するような評もあるようですね。
ひたすら重苦しいビート、ズブズブに沈み込むようなサウンドスケープ、抑揚の乏しい淡々としたロッキー自身のラップ、そして彼が発掘してきたという謎のギタリスト ジョー・フォックスの慟哭にもにたソウルネスを感じさせる歌声といった一つ一つの要素からは強い喪失感が感じられます。
今年の初頭に彼が所属するHIPHOPチーム「A$AP Mob」のリーダーであるエイサップ・ヤムズを失ったことが、今作に陰を落としていることは間違いないと思います。
実際、ジャケットのロッキーの顔にはヤムズの顔にあった痣がコラージュされています。
ただ、それが単純に追悼の想いだけに還元されたかというとどうもそうではなさそうです。
近しい者が亡くなったからといって彼は結局ドラッグもセックスも捨てることは出来ていない、でもそれでいいじゃないか
というような諦念が、まるで通奏低音のようにアルバムの全体に流れているのです。
「ドラッグやセックスに溺れ続けて、次に親友のようになるのは自分かもしれない、でも気持ちいいからそれでいいし、そもそもこんな世の中で生き続けて何の意味がある?」
この作品を聴くと、そんな幼稚でありながらも答えようのない問を、アルバム通して投げかけられているような、ひどくダークで退廃的な気分にさせられるんですよね。
勿論、彼自身開き直ったわけでなく、親友の死が残した印象が彼の中でくすぶり続けていることは間違いありません。
1曲目や11曲目、17曲目などで聴かれるブルージィ、あるいはスピリチュアルな感覚は間違いなくある種の感傷の現れでしょうし、それがこの作品に分裂症的な印象も付与しているように思えます。
結局のところ、これはエイサップ・ロッキーという個人の思いが無遠慮に、そして、だからこそ真摯に叩きつけられた作品なのだと思います。
ポップでもクールでもなく、みっともなく泥臭い作品であるとは思うのですが、そういった「業」が滲みでたような今作に、私は強い魅力を感じずにはいられないのです。
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