Vijay Iyer Trio "Break Stuff"

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Artist: Vijay Iyer Trio
Album: "Break Stuff"
Label: ECM
Year: 2015

Tracklist
01. Starlings (3:53)
02. Chorale (4:34)
03. Diptych (6:48)
04. Hood (6:10)
05. Work (6:15)
06. Taking Flight (7:15)
07. Blood Count (4:36)
08. Break Stuff (5:27)
09. Mystery Woman (6:21)
10. Geese (6:39)
11. Countdown (5:57)
12. Wrens (6:48)


インド出身のピアニスト ヴィジェイ・アイヤーがECMから作品をリリースするというニュースは、2014年のジャズシーン、いや、音楽シーンにおいて非常に大きなトピックであったと思います。
"Historicity""Accelerando"で聴かせた、幾何学的で複雑で、そしてソリッドなバンドアンサンブルがECMというレーベルカラーとどう反応しあうのか、というのが目下の感心事であったとは思います。

最初にリリースされた"Mutations"はソロ作品であり、ジャズ・ピアニストや演奏家としてのアイヤーよりもむしろ作曲家、理論家としての彼にフォーカスを当てた印象の強く、非常にECMらしいというか、ECMっぽいアクションであったように思いますが、それから1年が経った今年、満を持してトリオでの録音が登場しました。

メンバーはACTでの前2作から引き続きベースにステファン・クランプ、ドラムスにマーカス・ギルモアといった布陣ですが、やはりECMという独特なレーベルの引力というか、魔力のようなものに引き寄せられるかのように、今までの彼らとはまた違った魅力を見せてくれているように思います。

一聴して思うのは、今までの作品に比べるとぐっと抑制の聴いたサウンドになっているということです。
これについてはECMのミックスによる部分も大きいとは思いますが、アイヤーの作曲/アレンジメントそのものがECMのレーベルカラーに合わせられているのが最も大きな要因ではないかと思います。
以前の作品では多少音を詰め込むようなところが見受けられましたが、残響を重視したミックスを施すECMにあわせ、音の隙間に意識を向けた作曲/アレンジがなされているような印象を受けるのです。
事実、アイヤーは自身によるライナーノートの中で、本作においては音楽における"break=still(無音)"を重視した旨や、本作に収められた楽曲が減算的(subtractive)な過程から生まれた、などと述べています。

淡々と、そしてじっくり音を紡いでいく1曲目'Starlings'からすでにその方向性は明確です。
前作"Accelerando"で冒頭を飾った'Bode'は音の強弱を利用してドラマチックな導入を演出していましたが、'Starlings'はそういったドラマ性を排するかのようにモノトーンで静謐です。
楽曲によっては盛り上がりを見せる場面もありますが、この静かな雰囲気はアルバムを通して強く堅持されています。

そして、そういった雰囲気が保たれることによって、本作では彼らの演奏の中に秘められたミニマリズム抽象性が強く引き出されているように思えます。
隙間を重視する作曲は、当然音数を削ぎ落とす方向に向かったでしょうし、ドラマ性が排されることで今までも控えめであったメロディアスな部分はより陰を潜めています。

しかし、ここに収められた楽曲はどれも緊張感のあるアンサンブルを損なっておらず、そしてまた抒情的ですらあると思います。
相変わらず、聴くためには集中力を要求されますが、今までの作品に比べると端的に美しいのです。むしろ、演奏/インタープレイの緊張感がその美しさをより強めているのです。
この辺りには本当にECMの魔法を感じますね。

また、今作は今までに比べカヴァー曲が少ないのも特筆すべき点かもしれません。
セロニアス・モンク作の5曲目、ビリー・ストレイホーン作曲の7曲目、そしてコルトレーン作曲の11曲目と、今まで全体の半数程度を占めていたカヴァー曲が今回は全体の4分の1程度に抑えられています。
昨年の"Mutations"とあわせて考えると、やはりECMは「作曲家としてのヴィジェイ・アイヤー」を推したいのかもしれません。
個人的には先程も紹介した冒頭の'Starlings'やデトロイト・テクノのロバート・フッドへのトリビュートであるという4曲目'Hood'、右手による執拗な7音のリフレインと、左手のコードワーク/ベース/ドラムのポリリズミックなアンサンブルが印象的な9曲目'Mystery Woman'、そしてコルトレーンを大胆に抽象化した11曲目'Countdown'などが気に入っています。(というか全曲気に入っています 笑)

ECMとの契約はアルバム3枚分とのことですので、もう1枚出るのでしょうか?(昨年末の映画"Radhe Radhe"への劇伴を含めなければ)
できれば次もぜひこのトリオで聴きたいものです。


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