Interview with @mcatm(drawing4-5) Part 2

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Photo by iwauko murakami


先日掲載しました前編に引き続き、今回は濱田智さん(@mcatm)へのインタビューの後編を公開します。
drawing4-5が今の音楽性と至った切欠や、新作"chimera, not dead"の製作にあたっての試行錯誤、そして、「録音物を作る」ということに対する思いなど、前編よりも濃い内容でお聞きしていますので、お楽しみください!



@mantako(以下MA):そういえば、drawing4-5の音楽性について、CINRA.NETでは「1999年に筑波大学で4人組のギターノイズバンドとして結成された」と紹介されていましたが、明確に現在の音楽性(Edited Folk/HDD Psyche)を目途に活動するようになったのはいつ頃でしょうか。また、こういった音楽を追求していくようになった大きな切欠があれば教えて下さい。


@mcatm(以下MC):元々はソニック・ユースみたいなバンドがやりたかったんですよね。そこにJOA ”Live in~”や、Gastr Del Sol、所謂「シカゴ音響系」の影響が色濃くなってきて…。
しかしながら、ありがちな「演奏力を高めて、表現を豊かにしていく」というノリにはそもそも興味がなかったんです。個人的には、ジム・オルークの「アンチミュージシャン発言」を紐解くまでもなく、「音響系=技巧派」という流れにも懐疑的でしたし、何よりローファイ上がりなもので…。
更にいうと、僕はどちらかというと「リスナー気質」であり、また超雑食なので、自然と色んな音楽の影響に
身体を引き裂かれるような形になったわけです、drawing4-5は。そういうバンドって数多くあるんだろうけど、僕らほど正直に引き裂かれたバンドはなかなかないと思いますよ。


MA:ちなみに、やはりdrawing4-5の音楽において、コラージュってかなり重要な要素だと思いますが、@mcatmさんはこの手法について、どのようなイメージをお持ちですか?コラージュで表現できるものやその意味、利点など何かあれば。


MC:これも、歌詞の時に挙げたのと同様で、「文脈の衝突」を狙っているということです。加えて言うと「自分の(もしくは人間の)想像力は、自分の想像力を超えない」と思っているので、いつもそれ以上のものを体験するための手段について考えています。その一つがコラージュってことですね。
複数人で演奏するのもそのためですし、そういう意味では一貫しているかもしれません。僕にとっての「サイケ」とは、またdrawing4-5が「サイケ」であるならば、そういった「想像力を疑う」ところから出発しているのだと思います。


MA:「自分が聴きたい曲を作る」ことが動機のミュージシャンはいますが、@mcatmさんの場合は「自分の聴いたことのないもの」を志向しているんでしょうか。


MC: 僕も「自分が聴きたい曲」を作るのが動機の一つですが、その曲は、自分の想像力の範疇にあってはダメです。そのために、「コラージュ」「即興」「偶然」と言った前衛音楽の手法が採用されています。


MA:個人的には、複数人の参加やコラージュにより、drawing4-5の楽曲上ではすごく多く「意識」がぶつかりあっているように思います。
そういった混沌とした状況下でも、楽曲の芯にはもっと強い意識(@mcatmさんの、でしょうか)があって、「混沌とした状況」がそれを補強している気がします。特に新しい3rdはそれが顕著だったとも。
顕著、ということについて言うと、今作では先ほどまで仰っていた「衝突」から生じる予測不可能な部分にまで、統一した意識を感じるというか、@mcatmさん(あるいはメンバーの方々)の志向しているものがダイレクトに現れているように感じたのです。


MC:複数の意識をぶつけあうのもそうですが、それ以上に「情報の欠如」を意図的にもたらすことで、楽曲の方向性を定めない、という手法を採ったこともあります。ただ、それはバンドの組織を組み立てる方法論としては失敗だったんですけど…
僕の志向がダイレクトに現れているように聴こえるというのは、単に、制作に6年以上かけた成果だと思います。ちなみに、2年前に一旦完成した'或る出来事'をメンバーに聴かせた時、みんなポカーンとしていました。それぐらい、訳がわからない歪な状態だったんです。そこに整合性をもたらすための6年というか…。


MA:以前「コンポジションの占める割合が上がった気がする」みたいなことをお伝えしたかと思いますが、多分その印象はそこに起因するのかな、と。今作の制作にあたり、今までと変わった/変えた部分は実際にはあったのでしょうか?


MC:コンポジションの比重的には実は1stの方が高かったような気もします。2ndはほぼ即興から成り立っているので、その真逆。”chimera, not dead”は、その中間ぐらいですかね。ただ、情報量が凄まじいので、どこを切り取るかで印象が変わるかも。


MA:なるほどです。確かに、2nd二作に比べると1st寄りな印象はありました。ただ、1st以上に起伏ははっきりとしていて、アルバム/楽曲として仰るとおりの整合性は強く感じます。ちなみに、「情報の欠如」ということについてはどのようなアプローチをとられましたか?


MC:「情報の欠如」ですが、一番正しいアプローチだなと思ったのは、楽曲を断片として制作していくという手法です。その時に出来た曲は3rdにも反映されています。他にも色んなやり方をしたんですけど、そうしていくとメンバーがバンドに参加しているという意識が希薄になるという…。
「楽曲を断片として」というのは、ごく短い主旋律がいくつかあって、演奏する時は即興的にそれらを組み合わせて楽曲を組み立てていく、というやり方です。その共有の深度もまちまちで、その曲を何度も演奏したメンバーもいれば、全く知らないメンバーもいる…というやり方です。


MA:その都度使うフレーズ(主旋律)が変わり、違う楽曲になるってことですかね?ある日はABABCでやったけど、またある日はACDBEみたいな感じで演奏した、みたいな。なんだか、まさにキメラを作るかのような作成方法ですね…


MC:そうですね、即興と作曲の中間ぐらいの。でも、あまり上手く行かなかったですね、当たり前ですがメンバー皆人格があるので…。今でも同様の手法を援用はしていますけど、「楽曲の途中で曲調が変わる」みたいな平凡なところに落ち着いてしまいますね。ライブはまだ模索中です。


MA:ライブはとても興味深いです。そういえば、youtubeなどにいくつか挙げてらっしゃいますが、drawing4-5のライブを音源化する可能性はあったりするのでしょうか?


MC:ないです。というか、無料で気まぐれに出したりはしますけど、きちんとパッケージングするのであれば、2ndみたいな形を取ると思います。僕自身、あまり、お金を出してまで聴きたいと思えるライブ音源ってあんまりないんですよね。ジャズとか瞬間作曲ものはまた別ですけど。


MA:素材として楽曲の一部になることはあれ、そのままで出すことはない、という感じでしょうか。 drawing4-5のようなバンドだと、ライブなりのアドバンテージが強烈にあるわけではないでしょうし、確かにそれをそのままパッケージングする利点はそこまでなさそうですね。


MC:強烈に一回性はあるので、貴重っちゃあ貴重なんですけどね。あと、次は「バンドの」アルバムを作ろうと思っていて、それはどちらかというとライブに近い手触りになるのではないかと。
しかしながら、今後のライブのやり方がこのやりとりでちょっと見えてきました。バンド内でも議論になっていたんですが、我々の録音物のような音楽性を求めているリスナーに、ライブで何を提供すればいいのか、ちょっとわかってきた気がします。


MA:そもそもdrawing4-5でなくとも、ライブ本来の一回性と「ライブアルバム」と化した場合の反復性って水と油なところありますからね…(汗)このやりとりから何か発見があったのなら、一ファンとしてとても嬉しいです!
次に、"chimera, not dead"で、@mcatmさんご本人の中で印象の強い曲を教えていただけませんか?…あとバンド名の正確な読みを…(どろーいんぐふぉーとぅーふぁいぶで合ってますか?)


MC:印象深い曲…。本当は'或る出来事'が一番思い入れ深いかもしれないです。



'棄てられた物語'のように即興で出来上がった曲で、出来た時は「これを作るために音楽をやっていたんだ!」と思っていたのに、いざ録音始めたら全然上手く行かなくて、先述した通りメンバーにも呆れられる始末…。
何度もリトライして、ようやく今の形まで辿り着いたので、思い入れが半端ない…。4時間は語れるやつですね。ちなみに、オリジナルのギターパートを即興で弾いたのはSCLL(Spangle call Lilli line)のライブメンバーで、そのバージョンも遠くない将来発表するかもしれません…。
だから、'或る出来事'がどう受け入れられるかで、今回のアルバムの出来は決まってくるなと思って、実はものすごくナーバスになっていました。しかし、今のところ、評判が良くて良かったです…。
あと、バンド名は、どろーいんぐふぉーふぁいぶ、と読んでいます。


MA:'或る出来事'、本当に名曲でした!'いばら''好事家'も改めて名曲と認識しましたが、'誕生'のゆったりとした導入から一気にリスナーの心に入り込む2曲目にコレを持ってきたあたり、よっぽどの自信作なのだと思いましたし、またその通りだったと思います。
余談ですが、私の妻もこの楽曲については「とても胸が締め付けられる」と感想をこぼしており、聴き手の感情を強烈に喚起する素晴らしい楽曲だと思っています。
SCLLのサポートメンバーが、というのもとても驚きました!まさかこんなところでSCLLとつながるとは…!なんとなく、現在進行形で応援しているバンドの中にかすかでもつながりがある、というのはとても嬉しいものですね。楽曲の初期verもとても興味あります!
(ついでに言うと、2年前の時点のメンバーの方々がポカーンとなったというヴァージョンも気になってます!)
バンド名、「とぅー」は要らなかったのですね…(汗)了解しました!


MC:'或る出来事'評、大変うれしかったです。自分だけが自信満々なんじゃないかって、正直、不安だった…。最初にあのメロが即興で出てきた時の俺は、自慢じゃないけど神がかってましたよ。
2年前のヴァージョンについては無理です!


MA:メロディも素晴らしいですし、そもそもカウンターラインのヴァイオリンも素晴らしかったです!妻について言えば、2ndまでは私が聴いているのを一緒に聴いているだけだったのが、最近会社から帰宅したら"chimera, not dead"を(勝手に)聴いてて驚きました(笑)普段こういった音楽を聴かない彼女もかなり気に入っているみたいです!
2年前のやつは流石に無理ですか(笑)了解です。これはあくまでただのマニア根性ですので気にしないでください!

最後に、これまでの会話の中で@mcatmさんが「文脈の衝突」から起きる「@mcatmさん自身にとって意外な」ニュアンスや印象を求めているのだと解釈したのですが、それを作品(≒アルバム/EPなど)として発表するためには、どうしても現れ出た音の取捨選択や編集作業という「操作」が必要になってくると思います。
また、drawing4-5のような音楽を作るならば、その作業に膨大な時間がかかることも予想できます。
現れ出た時点では「意外/想像外」であっても、そういった操作/作業をしていく中で色あせてしまうというか、新鮮さを失っていく場合もあるでしょうし、乱暴な言い方をしてしまえば、そういう「操作」を経なくてはならない時点で「意外性/想像外性」が死に体になってしまうこともあるのではないかと思うのです。
ともすれば、そもそもの時点で「@mcatmさんの求めるもの」と、「録音したものを作品としてまとめあげる作業」とは性質的に相容れない部分があるのではないかと思うのですが、こういったことについて@mcatmさんはどのように考え、作品を製作されているのでしょうか?


MC:なので、制作途中に何度も飽きます(笑)!僕にとっての音楽制作って、自分に対する裏切り作業なので、飽きた段階で「次にどうやって裏切ってやるか」が鍵になってくるわけです。そうすると、容易に想像がつくと思うんですが、6年ぐらいはあっという間に過ぎます…(笑)。
『「僕自身の求めるもの」と、「録音したものを作品としてまとめあげる作業」とは性質的に相容れない』というのは、本当にその通りです。その戦いの過程で、自分が分裂していくような感覚に陥りますし、何度も情緒不安定になって家人に心配されたり(笑)します。大人になったので、今回はそんなことなかったのですが、1st発売時は、タワレコのフロアを泣きながら徘徊してたりしましたから…(笑)。神経が太いので大事には至らないのですが、あまりオススメできない制作方法かもしれませんね。


MA:いえいえ、その途方も無い試行錯誤の末に生まれたからこそ、”chimera, not dead”はこんなにも力強く、素晴らしい作品になったのだと思います。まさに「6年の重み」が詰まっているなあと。
私なんかもう年末から1日1回ペースで聴いてて、しかも聴く度に感動しっぱなしでえらいことになってますので(笑)
Drawing4-5の、歪でありながらも力強いというか、分裂症的でありながら一貫したエモーションを感じる不可思議な作風の基にある熱意と苦悩を知ることができ、一ファンとしてとても有意義な時間をいただけたと思います。
本当にありがとうございました。




いかがでしたでしょうか?
私としては、drawing4-5の特異な音楽が実に様々な試行錯誤/苦悩と、非常に微妙で繊細なバランスの上で成り立っていることが、ご本人の言葉を通して伝わってきました。
まだ"chimera, not dead"発表から間もありませんが、本文中でも触れられている次回作の構想(「バンドの」アルバム)についてもお聞き出来ましたので、期待して待ちたいと思います。

また、本インタビューの公開に際し、濱田さんには大幅な加筆修正と追加質問への回答(了承の上本文中に挿入しました)もいただき、前回及び本エントリーの公開について、多大なご尽力をいただきましたことを、感謝の念とともにここに書き記しておきます。
本当に、ありがとうございました!


おまけ インタビューで触れられた楽曲





chimera, not deadchimera, not dead
(2014/12/24)
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always,the words come in suddenlyalways,the words come in suddenly
(2010/04/28)
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