D'Angelo & The Vanguard "Black Messiah"

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Artist: D'Angelo & The Vanguard
Album: "Black Messiah"
Label: RCA Records
Year: 2014

Tracklist
01. Ain't that Easy (4:49)
02. 1000 Deaths (5:49)
03. The Charade (3:20)
04. Sugah Daddy (5:02)
05. Really Love (5:44)
06. Back to the Future (Part I) (5:22)
07. Till it's Done (Tutu) (3:52)
08. Prayer (4:33)
09. Betray My Heart (5:55)
10. The Door (3:08)
11. Back to the Future (Part II) (2:25)
12. Another Life (5:59)


来る12月15日、世界のブラック・ミュージック・ファンが待ち焦がれたXデーが、あまりに突然に、あまりに不敵に、そしてありあまる衝撃をもって訪れました。
2000年の"Voodoo"以来、実に14年もの間沈黙を保ってきたブラック・グルーヴの伝道師ディアンジェロが、ついに新作を発表したのです。

この14年の紆余曲折については、今まで様々な場所で/形で語られてきたところでもありますので、あえてここでは説明しませんが、"Voodoo"ツアーによる疲弊や、収録曲'Untitled'のMV(全裸のDによるあまりにセクシーな歌唱)から生まれる誤解などから、一度は音楽業界から離れていた彼がこうしてカムバックしたことは、素直に祝福すべきことであると思います。

まずもって、"Voodoo"はグルーヴ・オリエンテッドな作品でした。
あのアルバムでは、楽曲の根っこにあるビートに対し、ドラムやベースなどのリズム隊、あるいはその他の装飾を担うギターやブラスなどが、ビートが瓦解する直前ぎりぎりまで後ノリでアプローチすることにより、非常に重心の低い、ヘヴィなグルーヴが実現されていました。

ドラムを担当したThe Rootsのクエストラヴなどは、そのアプローチ/考え方に対する衝撃を度々口にしておりました。正確なビートをたたき出すことを絶対正義とし、それにより評価されていた彼だけでなく、"Voodoo"におけるディアンジェロのアプローチは、多くのミュージシャン/リスナーのビート感覚というものをネクストレヴェル/ネクストステップに引き上げたのです。
そしてそれは、06年に亡くなったHIPHOP DJジェイ・ディー/ディラがビートを作り出す際に、機械のクォンタイズ機能を無視してまで作り上げたものと共鳴していました。現在のジェイ・ディーの高評価の一端には、ディアンジェロが"Voodoo"にてその独特のグルーヴを再現可能なメソッドとして提示したことも影響していると思います。
(前後関係が逆の可能性は勿論ありますが、Dは95年の1st"Brown Sugar"の時点でもそういったアプローチを見せていたそうですし、単に影響を与えた/受けたというよりはやはり共鳴していたと考えるのが正しいように思います)

さて、それ以降の14年という長い年月は、彼の「新たなアルバム」を予想するにはあまりに長すぎる時間でした。
実際、クエストラヴの「ディアンジェロの次作はブラック版"SMiLE"(BB5によるロック最大の未発表アルバム)」という発言や、種々の「予習アルバム」(ファンカデリックなど)、あるいは数曲のリーク(本作の'1000 Deaths'や'Really Love'などはかなり早い段階でデモverがリークされていました)もあり、リスナーの期待はどんどん高まりましたし、"Voodoo"そのものがあまりに完成度の高い作品でもありましたので、リスナーたちはディアンジェロが生み出すであろう「"Voodoo"の『次』」というものを全く予想できない状況に陥っていたように思います。
それは、2012年の復活ツアー以降ライヴの場で続々発表される新曲を聴いても同じことでした。あれらの楽曲が、Dのスタジオ・マジックの中でどのようなアレンジメントを施されるのか、想像すらできなかったでしょう。

そんな中発表された本作は、"Voodoo"の呪術的なグルーヴをしっかりと踏まえながらも、あれをただ「結果」「到達点」としてしまうのではなく、あくまで「手法/方法論」であるとして、その「方法」でもってより良い「音楽」を作り上げたと言えるのではないかと思います。

「音楽」はリズム/ビート/グルーヴだけでできているわけではありません。そこには当然メロディとハーモニーが同時に存在しています。
"Voodoo"は確かにすさまじいアルバムでしたが、それは極限なまでにグルーヴ・オリエンテッドなものでもありました。ジェイ・ディーと共鳴するグルーヴを生み出す手法を定式化したディアンジェロは、まずはその方法論を研ぎ澄ませる形であの作品を作り上げたように思います。料理で言えば「素材そのものの味」をまずは十分に堪能した形です。

では、そこから次に何ができるかというと、それを他の種々の「素材」と組み合わせ、加工することにより、「(ポップ・)ミュージック」の新たな可能性を探ることです。
そしてその「素材」としてまず彼が選んだのがファンカデリックやジミ・ヘンドリックスなどによるサイケデリック・ロックであり、あるいはBB5やThe Beatlesなどのポップネス/アート志向でありました。
本作に収録されている楽曲は、随所で美しいメロディやハーモニーを聴かせてくれます。あるいはギターのディストーションや多重録音コーラスによる混沌としたサイケデリアを容易く実現させています。
あまつさえ彼は、そこにジャズやカントリー、麗しいストリングスや相変わらずの気だるいブラスなどもぶち込んで、驚くほど濃密でアーティスティックな世界観を作り上げているのです!
そしてそれは、グルーヴのヘヴィさとは裏腹に驚くほど身軽/気軽で、さらりとした爽やかさすら感じさせてくれるのだからたまったものではありません。
ライヴで披露された楽曲は、生の躍動感とはまた違った色彩を帯びながら、うねるようなグルーヴと美しいハーモニーを、そして例えようもない感動をリスナーに強く残します。

そして、その多くにはブルースやゴスペルのもつ「祈り」が強く込められています。
彼自信も「全ての根っこはブルースだったんだ」という発言をしていましたし、また、多重録音コーラスはとてもゴスペル的なスピリチュアリズムを湛えています。

まさに、ディアンジェロは本作で「ブラック・ミュージシャン」から押しも押されぬ「アーティスト」へと成長したのです。
デジタル要素を一切排し、ヴィンテージ機材によるアナログ手法で録音されたサウンドは、本作のもつそういった魅力を非常に生々しく、そして最良の形で提示することに成功しています。

本作は明らかに「"Voodoo"以降の音楽」ですが、その「"Voodoo"以降」という言葉は本作があるからこそ言えることです。
それはそのままディアンジェロを超えるのはやはりディアンジェロしかいなかったという、彼の孤高で、並ぶ者のない素晴らしい才能が、今再び証明されたということを示しているのです。


'1000 Deaths'


'Sugah Daddy'


'Really Love'




Black MessiahBlack Messiah
(2014/12/23)
D'Angelo And The Vanguard

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No title

vuoy様 こんばんは

自分はD'Angeloを今まで知りませんでした。
世界のブラック・ミュージック・ファンが待ち焦がれたほどの存在だったとは。

民族音楽みたいなエネルギッシュなグルーヴがかっこいいですね。
色々な音楽要素が入っていてめまぐるしくも楽しい音楽だと思いました。
ちゃんと聴いてみます。

Re: No title

>> GAOHEWGIIさん

お久しぶりです。
なにより2000年の"Voodoo"が凄まじかったのですが、
今作はそれを踏まえたうえで「ポップ・ミュージック」という土壌で
勝負してきた感じがあります。

アルバムの随所にThe Beatlesみたいな感じもあったりして、
何度聴いても聴き足りないというか、飽きが来ない作品ですね。
発売から10日でもう25回位聴きました(笑)
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