Oren Ambarchi "Quixotism"

Artist: Oren Ambarchi
Album: "Quixotism"
Label: editions Mego
Year: 2014
Tracklist
01. Part 1 (17:59)
02. Part 2 (4:09)
03. Part 3 (6:58)
04. Part 4 (2:59)
05. Part 5 (14:44)
相変わらず精力的なリリースが続くオーレン・アンバーチ。
灰野/オルークとのトリオ作(2013年のライヴセット)、Heldonのリシャール・ピナスとのギター・デュオ、オマリー/ダンとのプログレライクな音響作品に引き続き、ソロ名義での作品をeMegoからドロップしてくれました。
(この他にもエリ・ケツラーとのデュオ作など、アナログでのリリースまで含めるととてもじゃないけど追いきれません…)
さて、今作"Quixotism"(『騎士気取り』とか『ドン・キホーテみたいな性格』という意味らしい)は名義こそソロですが、非常に多彩なゲストを迎え作成されたようです。
ジム・オルークを始めとして、2012年にデュオでモートン・フェルドマン'For Bunita Marcus'のオマージュ作を発表したトーマス・ブリンクマンや、日本人タブラ奏者U-Zhaan、ピアニストのジョン・ティルバリーなど錚々たる面子が参加しています。
音の方は、全編通して2012年のブリンクマンとの"The Mortimer Trap"を踏襲したようなディープ・ミニマルな作風で、アルバム丸ごとで1曲(5パート)というものですが、ブリンクマンのマットな質感のミニマル・ビートが全パートにおいてフィーチュアされています。
基本的なパルスは保持しつつも、徐々に変化していくミニマル・ビートは勿論ですが、その上にのる演奏が、ゲストの面々を贅沢に使った(というと失礼ですけど)、多彩なものなのにまずは驚きます。
特に耳を惹くのは、ティルバリーの現代音楽的な無調の雰囲気を漂わせる即興ピアノ(隙間多め)がミニマルビート及びアンバーチの透き通ったパルス音と交錯するPart1-2の静謐な美しさや、オルーク(シンセ)/U-Zhaan(タブラ)/エイヴァンド・カング(ヴィオラ)/クリス・コール(音響担当?)らによる多彩な音が表情を変えながら進行していくPart4-5の躍動感ですね。
ミニマル・テクノというとどうもドープ/アシッドな空気を思い浮かべてしまいますが、これはどちらかと言うとミニマル・テクノでありながらフリー・インプロ的というか、清々しいほどに透き通った美しさを感じさせる仕上がりになっているのが驚きです。
ブリンクマンの参加、ミニマル・テクノというフォーマットから、12年の"The Mortimer Trap"とその背後にいるフェルドマンを思い浮かべるのは当然なのですが、個人的には同じく12年のeMegoからのソロ名義作品"Sagittarian Domain"を通過したがゆえの作風であるようにも思いました。"Sagittarian Domain"の、長いクラウトロック的な演奏を突き抜けた先の、ストリングスによるあのエピローグのような美しさが見事に反映されているのです。
代表作、といえばやはりTouchでの"Grapes from the Estate"のような作風だとは思いますが、近年の精力的な活動とその多彩な内容の一端を端的に示す力作になったように思います。
ミニマル・テクノ好きだけでなく、フリー・インプロや音響モノなどを好むリスナーにもアピールするところの大きい作品だと思いますので、皆さん是非ご一聴を。
![]() | Quixotism (2014/10/28) Oren Ambarchi 商品詳細を見る |
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