Aphex Twin "Syro"

syro.jpg


Artist: Aphex Twin
Album : "Syro"
Label: Warp Records
Year: 2014

Tracklist
01. minipops 67 [120.2] (source field mix) (4:47)
02. XMAS_EVET10 [120] (thanaton3 mix) (10:31)
03. produk 29 [101] (5:03)
04. 4 bit 9d api+e+6 [126.26] (4:28)
05. 180db_ [130] (3:11)
06. CIRCLONT6A [141.98] (syrobonkus mix) (6:00)
07. fz pseudotimestretch+e+3 [138.85] (0:58)
08. CIRCLONT14 [152.97] (shrymoming mix) (7:21)
09. syro u473t8+e [141.98] (piezoluminescence mix) (6:32)
10. PAPAT4 [155] (pineal mix) (4:18)
11. s950tx16wasr10 [163.97] (earth portal mix) (6:01)
12. aisatsana [102] (5:21)


Aphex Twin(AFX)ことリチャード・D・ジェイムスの新譜が発表された、という事実を、実はまだ信じ切れずにいます。
その根底にあるのは、公式発表から実際の発売までが1ヶ月だったというスパンの短さももちろんですが、なによりも今回発表された"Syro"が、あまりにも「Aphex Twinであった」からに他なりません。

AFXは、今までトリックスター的な言動を繰り返し、ぶっきらぼうとも適当とも言える、しかし「テクノ」と言われる他のどのミュージシャンとも類似しない作品を、初期にはCaustic WindowやPolygon Windowなどといった別名義も用いながら、驚くべきペースで発表してきました。
彼の使用する名義は徐々にAphex Twinに統合されていきましたが、その名義での作品発表は01年の不可思議なダブルアルバム"drukqs"以降途絶えてしまいます。(03年のリミックス・コンピを除く)

わずかにAFX名義での"Analord"シリーズが発表された以外に、不気味な沈黙を保った彼ですが、一つの転機となったのは07年(これでももう7年前…)に新名義The Tussで発表した2つのEP(片方はアルバムと言ってもいいかも)だったのではないかと思います。
The Tussが彼の変名であることは未だ公式には発表されておりませんが、著作権団体への著作者登録がリチャード名義でなされていることからも、これが彼の別名義であったことはほぼ間違いないでしょう。

この名義で発表された作品が、あたかも初期に回帰したかのようなストリクトリーなアシッド・テクノであったことは記憶に新しい方も多いかとかと思います。
そこにはかつてのAphex Twinのような、奇妙でねじれた、露悪的なニュアンスは確かにありましたが、それはどこか憑き物がとれたかのような清々しい(あるいは開き直った)作風であったように個人的には感じました。

スタイル的な部分は上記の通りですが、それと同時にその音が「非常に洗練されている」とも感じたのです。
それまでの彼の作品(特に"Richard D. James Album"や"... I Care Because You Do"あたりに顕著)は最初にも述べたとおりどこか「ぶっきらぼう」な、言ってしまえば「適当な」部分がありました。
まるで思い浮かぶままに作った楽曲を、吟味もせずに銀盤の中に放り込み、作品としてパッケージングしたかのような印象です。

ちょうどAphex Twinという名義に音源が収束していったのもこの辺りの時期かと思いますが、結局のところ初期の彼の、分裂症を思わせるような多彩な作風と様々な名義で並列的に展開される活動が原因となり、リチャード・D・ジェイムスという人間に対し、賞賛とある種の好奇の視線が集まることになってしまったのではないでしょうか。
イギリスの片田舎コーンウォールで自由気ままに音楽作成を楽しんでいた青年が、ある日を境に(トリック・)スターダムに押し上げられてしまったわけです。
(この辺りの話は野田努・三田格両氏による対談で詳しく触れられています)

そう考えると、名義収束後の彼の活動は、同時に、肥大化していく自身のイメージとの戦いでもあったのかもしれません。
自身の顔写真を切り刻み、コラージュした一連のジャケット群("... I Care..."から"Windowlicker")もその現れだったのでしょう。

しかし、その終盤"Windowlicker"辺りから彼の作品にはそれまでと違う要素が出始めてきます。
それが先程も述べたような「洗練」であり、それは以前の活動と比べ抜群にハイファイになった音質や、異常なまでに吟味された音色・配置といった形で現れてきました。
"drukqs"、"Analord"シリーズ、そしてThe Tussといった活動を経てその傾向はどんどん強まり、今作で結実したように思います。
また、The Tussでの「本気でRDJであることを偽った」活動は自身は、RDJというフィルターなしにどの程度求められているのか、ということを試す、非常に繊細で臆病な心の表れであったようにも思えるのです。(音からしてバレバレ、というのは置いておいて 笑)

今作は、本人が「ここ数年で作った楽曲の中で、聴きやすいものをコンパイルた」と語る通り、以前の彼からは思いもしないほど聴きやすく、ポップな作品です。
彼に「テクノ・ミュージックの最先端」を走ることを求めてきたファンからすれば肩透かしのような内容かもしれません。
しかし、ここには今まで我々が「Aphex Twinの音楽」に求めてきたほとんどすべてのものが揃っています。
「狂騒的なビート」「アシッドなエレクトロ・ファンク」「衒いのない、無垢でドリーミーな音響/メロディ」「息を呑むほどに耽美的なピアノ」そして「ストレンジで悪趣味なニュアンス」。
それらはかつてのようにぶっきらぼうに貼り合わされ、つなぎ合わされているようで、その実その接続はあまりに自然で無理がなく、洗練されています。聴いている間は彼らしさに非常に満足しながら、終わってみると聴き足りなくてついもう一度再生してしまいます。
そしてそれはテクノ云々以前に、シンプルに「ポップ・ミュージックのアルバムとして」このアルバムが力作であり、傑作であるということではないでしょうか。

もしかすると、これこそが"Selected Ambient Works"2作に続く、「Aphex Twinの3rdアルバム」なのかもしれません。






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(2014/09/24)
APHEX TWIN、エイフェックス・ツイン 他

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No title

vuoy様 こんばんは

リリースされていることは知っていたのですが
全くノーマークでした。

あまり最近の活動は知らなかったのですが
久々の復帰作だったとは気づきませんでした。

おっしゃる通り、とてもキャッチーなテクノ・ミュージックで気持ちいいです。

かなり欲しくなってきました。

Re: No title

>> GAOHEWGIIさん

ちょこちょこ他名義での発表はありましたが、Aphex Twinとしては実に13年振りです。
私も正直聴く前は「まさか過去の焼き直しじゃなかろうな」と心配していましたが、
蓋を開けてみると過去の焼き直しではないもののしっかりAphexで驚きました。

新しい要素があるかというと疑問ですが、
そんなものなくても素晴らしい音楽を作ることができるというのはとても素晴らしいなと。
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