Jason Moran "Modernistic"

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Artist: Jason Moran
Album: "Modernistic"
Label: Blue Note Records
Year: 2002

Tracklist
01. You've Got to be Modernistic (5:48)
02. Body and Soul (3:47)
03. Planet Rock (5:43)
04. Planet Rock Postscript (2:04)
05. Time into Space into Time (3:17)
06. Gangsterism on Irons (3:34)
07. Moran Tonk Circa 1936 (4:16)
08. Passion (3:30)
09. Gangsterism on a Lunchtable (2:46)
10. Aud einer Burg/In a Fortress (4:19)
11. Gentle Shifts South (3:31)


以前ティグランの回で、ピアノという楽器ひいてはそれを演奏するピアニストについて「音楽における三大要素(メロディ/ハーモニー/リズム)全てをその射程に収める」存在だということを書きました。
音楽/楽曲を構成する主たる(というか殆ど全ての)要素といっても良いこれらについて常に意識的にならざるを得ないピアニストという人種は、そうであるがゆえに音楽を構造的に理解し、解体/再構築する術に長けています。

こういったピアノ/ピアニストという存在の特性は、とりわけジャズ(特にビ・バップ以降)の世界で大いにその価値を発揮する/しているのは多くの方がご存知だと思います。
彼らは、バップの方法論(即興演奏)が持つ、バークリー一派をはじめとする音楽理論家達を煽るかのような被分析性や、そのアナライズを援用し、その他の楽曲にも当てはめます。
当然、その過程の中で彼らは楽曲の中に独自の解釈を忍び込ませ、既存楽曲に新たな生命を吹き込むことができるのです。
そして、彼らがその性質を存分に発揮できるのはピアノソロ作品集というフォーマット上であることは間違いがありません。

ジェイソン・モラン"Black Stars"の後に発表した"Modernistic"もその例に漏れず、音楽の「構造的な側面」に目を向けた作品であると言えます。

このアルバムは大きく分けて前半(5曲目まで)と後半(6曲目以降)で2つに分けることができます。
前半は既存楽曲を分析/解体し再構築したもの、そして後半は自作曲というのがその主な内容です。
既存曲の選曲は1930年代のもの(1、2)、HIPHOP(3)、80年代のもの(5)、ロマン派(10)とかなり幅広い年代からなされています。

その解釈が非常に現代的な知性を感じさせるものであることは30年代からの冒頭2曲を聴けばすぐに分かることでしょう。
リズムを自在に変化させながらスウィング感覚を緩めつつ/引き締めつつ維持することで原曲の持つ人懐こく、ユーモア溢れるメロディをより有機的なものとして提示した1曲目や、バッキング・コードのもつ調性感をやや薄め、原曲の美しさに透明性を付与した2曲目からは、先に述べたような「ピアニストの特性」が強く感じられます。
3曲目では、楽曲後半にアブストラクトなソロを挿入するだけでは飽きたらず、「後書き(postscript)」まで追加して、もうやりたい放題といった感じです(笑)

ところが、自作曲ではそういった要素は感じられるものの、傾向としてはむしろ逆なように感じられます。
特にお馴染みの「Gangsterismシリーズ」である6・9曲目などでは先ほどの既存曲に比べ調性的な要請に割と素直に答えているような箇所も散見できますし、タイトル通り30年代に回帰したかのような7曲目のような曲もあり、彼が既存曲で参照してきた音楽家たちが現代を生き、作曲をしたなら、というような"if"を感じさせるのです。

こういった手法(現代からみた過去の、または過去から見た現代の再構築)から見えてくるのは、彼がその軸足を現在と過去の間で自由に移し替える様であり、また、「過去」を「現在」の土台としてでなく、全く別の価値を持ったものとして取り扱うという、フラットな姿勢です。
むしろそれこそが彼の考える「現代性」なのかもしれません。

タイトルの"Modernistic(現代的)"という言葉は、もちろん1曲目から拝借したものでしょうが、当然そこには上述の「現代のピアニスト」としてのプライドが投影されていると考えるのが自然でしょう。
彼は今年、1920-30年代に活躍したピアニスト ファッツ・ウォーラーのカヴァー/トリビュート作品を発表することをアナウンスしています。(9月発売予定)
"Black Stars"や今作で見られたmodernisticな感覚が今度はどのような形で披露されるのか、今から楽しみで仕方ありません。



↑このアルバムの動画がなかったので、1曲目のトリオによる演奏をどうぞ



ModernisticModernistic
(2002/09/03)
Jason Moran

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No title

vuoy様 こんばんは

オリジナルの軽妙な味わいとは異なる、アヴァンギャルドなアレンジ。
なるほど、モダンに拘るだけに攻めていますね。
みんな、俯きながら演奏しているのが微笑ましかったです。

Re: No title

>> GAOHEWGIIさん

ところどころ挿入される不協和なモチーフなんてまさに、って感じですね。
なんというか、モランのこの「トンガッている感じ」を非常に聴きたくなるときがあるんです。
同系統のピアニスト、ということならヴィジェイ・アイヤーなんかも良いですね。
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