点と線 "ten to sen"

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Artist: 点と線
Album: "ten to sen"
Label: EASEL
Year: 2009

Tracklist
01. scene-2 -it might not be never.- (5:53)
02. plus-minus (5:12)
03. equal (5:27)
04. ame (2:28)
05. scene-1 -it was.- (6:16)
06. yume (2:58)
07. kami (5:22)
08. yoru (6:45)


「表現したいことはないけど、出したい音はある」
Spangle call Lilli lineの面々が、最初期のインタヴューで語ったというこの言葉こそ、彼らが音のストラクチャー(構造)ではなくテクスチャー(質感)を志向し活動しているということの、明快かつ力強い宣言でした。
おそらく、"PURPLE"(2008)あたりまでの彼らは、何かを伝えるための最良の形≒構造を求めるのでなく、好きな(質感を持った)音を発したいのだという、衝動にも近しい欲求に素直に活動していたのだと思いますが、その「美学」に貫かれた作品がいずれも素晴らしかったということは、彼らの選択が正しかったということの証明でもありましょう。

そして、その次作であるシングル"dreamer"(2010)以降、彼らは明確に迷走を始めた(と個人的には思っています)のですが、実はその間にあたる2009年に発表された、ヴォーカリスト大坪加奈のソロ及び藤枝憲笹原清明というギタリスト2名による点と線と名付けられたユニットの作品こそが、彼らの音楽のさりげない結論なのではないかと思うのです。(この2作は同時リリースされました)
特に、この点と線について言えば、おそらくギタリスト2名の思い描いた「音」の完成形ではないか、とすら思えます。

この作品を特徴づけるのはまさに「点」と「線」です。
単音(点)と、サスティン(線)の並列(≒旋律)により構築される楽曲は対位法的で、コードによるバッキングは殆ど見られません。
ストリングスやエレクトロニクス、ギターの奏でる旋律、そして音そのものの質感は非常にナイーヴでセンチメンタルで、その点は非常に彼ららしいと思うのですが、この「対位法的な構築」という点については、それまでの彼らのスタンスとはズレたもののようにも感じられます。

彼らは元々美術畑出身で、バンドの作品のブックレットにも自分たちで作成した絵や写真などを用いていました。
それらの作品には「日常」にほんの少しの手を加え「非日常」へと異化させようという、インスタレーション的な志向が見て取れます。
作品そのものの構造的な美でなく、日常的な空間が非日常的なものへと変化することで生じるある種のアンビエンス・雰囲気が漂わせる違和感という美を求める姿勢は、確かに彼らの音に対するスタンスと一致します。

そして、この作品も、「音楽」という形式をとってはいますが、そういった「日常」を「非日常」へと異化させるための『装置』として作られたのではないでしょうか。
4曲目や8曲目で聴かれる、雨の音や汽車の汽笛/走行音などのフィールドレコーディングが、この音楽と重なることでまた違った意味合い/色彩を帯びているように思えるのはそのことを端的に証明しているように思えますし、また、この作品は単体でなく、外界の音と混交したときにこそ美しく響くことに、最近気が付きました。
特に今の時期聴こえる虫の鳴き声や行き交う車/雑踏の音との共存が生み出す美しさには特筆すべきものがあるように思います。
最近、会社から帰宅するときは、車の窓を開けた状態でこの音楽を流しているのですが、薄暮に聴こえてくるだけのただの「雑音」(明確な意図がない、という意味で)が、言い知れない感傷を伴って聴こえてくるのには驚きました。

思えば、対位法的な音の作りを選択したのも、そういったところに理由があるのかもしれません。
サスティン(持続)による音の伸長はあるものの、旋律のみで構築された楽曲は当然として音と音との間に「隙間」を有します。本来であればコードによるバッキングがそこを埋めるのですが、彼らはその隙間に外界の音があてがわれることを狙い、この作品を作ったのではないでしょうか。
もしかすると、フィールドレコーディングの挿入は、そういった「狙い」をリスナーに察知させるための、ちょっとしたヒントなのかもしれません。

以上のような点から言えば、これは正確には「音楽作品」とは少々スタンスが違うように思いますが、逆にそれこそが彼らの考える「音」のあり方なのかもしれません。
「表現したいこと⇔感じたいこと」は聴くものにより姿を変えるのかもしれませんが、それを作り出すのは、やはり彼らの「出したい音」だったのです。






ten to senten to sen
(2009/01/21)
点と線

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No title

vuoy様 こんばんは

 和むギターインストですね。
環境音もとっても上質。

うちの近所では主に
犬の吠える声と、飛行機(ヘリ含む)の騒音、車などが聞こえます。
昔より色々うるさくなっちゃったな、とふと思いました。

Re: No title

>> GAOHEWGIIさん

こんばんは
確かに、我々を取り巻く音環境も年々変化してますよね。
この手の作品は、その変化に合わせてまた雰囲気が変わりそうな気もするので、
折にふれ愛聴していきたいものですね。
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