Miles Davis "Kind of Blue"

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Artist: Miles Davis
Album: "Kind of Blue"
Label: Columbia
Year: 1959

Tracklist
01. So What (9:22)
02. Freddie Freeloader (9:46)
03. Blue in Green (5:37)
04. All Blues (11:33)
05. Flamenco Sketches (9:26)


ジャズ史において、バップの方法論(≒コードに基づくアドリブ)が行き詰まりを見せる中、様々な方法論で、その閉塞感を打破しようとする動きがあったことは、以前ドナルド・バードの回でも軽く触れましたが、中でもとりわけエポックメイキングだったのはやはりモード・ジャズだと言えるのではないでしょうか。

コードによる楽曲の進行を放棄し、スケールの持つモード(雰囲気のようなもの)に根ざした、より自由度の高いアドリブを取り入れた、というのがモード・ジャズです。
スケールの中で、モードの雰囲気を規定する特性音の使用や、支配音⇒主音/終止音(要はドミナント⇒トニック)の動きで終止することを守れば、ある程度自由にソロを組み立てることができるので、コードの構成音という束縛を気にすることなく演奏することができるわけです。(私自身の理解が今ひとつのため、曖昧なもの言いになってしまい申し訳ありません。)

簡単に言うと「スケールのもつ雰囲気を維持しながら演奏する」ということになるのだと思いますが、これはアドリブの可能性を広げただけでなく、ジャズにもう一つの新しい視点を持ち込んだのではないでしょうか。
それは端的に言えばアンビエンスです。スケールのもつ雰囲気をもって楽曲(=演奏)に統一性を持たすため、当然楽曲には開始から終わりまでを通してある一定の空気感が停滞することになります。
この「停滞」は、即興演奏の視点から見れば「楽曲や演奏が地味に陥る可能性が大きい」ということになるのかと思いますが、楽曲構築的な視点では「一定の空気感の中で、インパクトに頼るだけでなくニュアンスに富んだ演奏をとることが可能になった」ということも出来るのではないかと思うのです。

そう考えると、マイルスが『モード・ジャズの金字塔』とも言えるこのアルバムのセッションのために、すでにバンドを脱退していたビル・エヴァンスを呼び戻したのも納得がいきます。
エヴァンスのルーツともいうべき、ドビュッシーラヴェルなどの、いわゆる印象派とされる音楽は、まさにこのコンセプトに合致したものだったわけで、それを熟知したエヴァンスを呼び戻すことなくして、「ニュアンスに主眼を置いたジャズ」の構築は不可能だとマイルスは考えたのでしょう。
思えば、3曲目'Blue in Green'でのマイルスのトランペット、これはまさにニュアンス志向の演奏といえるのではないでしょうか。演奏そのもののパワーや構築性(複雑さ、と言い換えてもいいかもしれません)よりも、より深みのある、味わい深い何かが、ミュートされて悲しげに引きつるトランペットから滲み出しているように感じられます。

後年にマイルスが「失敗だった」と語っている通り、この時点で「ニュアンス志向の音楽」の全てが達成されたとは思いません。事実、サックス奏者の2人、キャノンボール・アダレイジョン・コルトレーンはマイルスの「ニュアンス志向」を完全に理解しきれてはいないようにも思えます。
勿論、逆に言えばこの2人の演奏に、未だバップ的な「パワーや構築性、複雑性志向の演奏」が燻っているがゆえに、この作品はある意味で分裂症気味というか「どっちつかず」な、一筋縄ではいかない空気を備えることになったわけですし、それがこの作品に宿る「名盤の風格」に多大に寄与しているのも間違いないでしょう。

そして、マイルスはこの作品の後、様々なアプローチを取りながらこの「ニュアンス志向」の音楽を構築できるメンバーを探しバンド・メンバーを取っ替え引っ替えしていくことになりますが、その終着点にいるのはウェイン・ショーターであり、彼の参加によりマイルス・バンドが第二の『黄金期』を迎えることになったのも、そのショーターがその後神秘的な名作を作ることが出来たのも、全てはこのアルバムから始まったことなのです。






Kind of BlueKind of Blue
(1997/03/27)
Miles Davis、Jimmy Cobb 他

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No title

vuoy様 こんばんは

こんな書きにくい大名盤を取り上げるとは素晴らしい。

ジャズの大名盤みたいな扱いだったので
これから入ったところ
取っときにくくてしばらく放置していたことを思い出します。

キャノンボール・アダレイは、職人気質なイメージですから
モードを理解できないのも納得。持ち味が違いますよね。


Re: No title

>>GAOHEWGIIさん

確かに、書きにくかったです(笑)
レビューしつくされている盤でもありますのでなおさら。

ただやはり、殆どのレビューがモードの導入を「コードの対立項」あるいは「コードに代替する即興方法論」として見ており、なんとなく違和感を感じていたのをなんとか言葉に出来たように思います。
マイルスは明らかにコードとは「別の方法論」そして「別のジャズ」をやろうとしているように思えたのです。
即興云々は動機の一つにすぎないのかな~、と。

そういう意味ではこのアルバムはもはや「ジャズ」(≒バップ)ではないのかもしれません。
聴けば聴くほどに、アンビエント・ミュージックやドローンなどに似たような感触を覚えるのです。

コルトレーンとアダレイについて言えば、アダレイは確かに完全に持ち味が違いますね。
コルトレーンはマイルスのやろうとしていることを少しは理解しているように思えますが、性格上どうしてもあのような演奏になってしまったようにも思えます。
マイルスも含め、この3者の微妙なバランスがこの作品を銘板たらしめているのだと思います。
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