石橋英子 "car and freezer"

Artist: 石橋英子
Album: "car and freezer"
Label: Felicity
Year: 2014
Tracklist(side car/side freezer)
01. たいくつなものがたり/there's a river (6:34)
02. 塩を舐める/car and freezer (5:09)
03. 私のリトルプリンセス/memory and dust (3:21)
04. 時を告げて/mr. cloud (5:45)
05. 遠慮だね/a part of life (4:18)
06. ゴリラの背/borderline in shadow (6:15)
07. ラップ・トップ・ブルース/waiting sign (8:28)
08. 幼い頃、遊んだ海は/tonight (4:16)
普段、私はあまり歌詞の内容を深く考えずに音楽を聴いています。
それは日本語でも英語でも変わりのないことで、言語的に理解ができようとできまいと、つい言葉を軽視してしまうというか、音の方ばかり傾聴してしまうのです。音楽好きには、私のようなタイプがある一定数はいると思います。
しかし、そんな私でも、石橋英子の新作"car and freezer"の、日本語/英語によるニュアンスというか、表情の違いには驚かされました。
先頃、ジム・オルークや山本達久とともに即興ユニットカフカ鼾としても作品を発表した石橋ですが、今回の録音はその二人もメンバーに含む最近のパーマネント・バンド「もう死んだ人たち」を率いて行われました。
それ以外にもU-zhaanなど数名のゲスト・ミュージシャンを迎えており、プロデュース&ミキシングはオルークが担当してます。
今作の特徴としては、日本語歌詞ver(side car)と英語歌詞ver(side freezer)の2枚組という変則的な形式でのリリースという一点に尽きると思います。
英語歌詞は石橋本人が、日本語歌詞は前野健太が担当していますが、単純な英語歌詞の邦訳というわけでなく、それぞれの内容もがらりと変わっています。
また、日本語・英語それぞれの響きの違いもはっきりと分かり、とても面白いです。
日本語歌詞は英語歌詞に比べより叙情的に、英語歌詞は日本語歌詞に比べより叙景的に聴こえるように思います。
ちなみに、日本語歌詞は言葉のつながりははっきりしているものの抽象的で、浮遊感の強い楽曲とあわせ、同レーベルのSpangle call Lilli line(ちょうど"ISOLATION"や"PURPLE"の時期)を思わせるようなところがあります。
そういった日英の歌詞による響きやニュアンスの違いを楽しむことができるのも、石橋による楽曲や、バンドによる演奏がしっかりとした土台を形作っているからであることは言うまでもないと思います。
チェロ/ヴァイオリンやピアノ/シンセの響きには非常に瑞々しく美しいものがありますし、小気味良くタイトで、洒脱なドラムスと、ゆったりとしたラインを描くベースはグルーヴを巧みに保ち、また、変化させていきます。
他にも、オルークによると思われる楽曲の急な転換なども効果的に機能しており、アルバム全体を単純な「ポップ・アルバム」としてだけでなく、アーティスティックな美意識を感じさせるものとして成立させています。
ただ、世評にある「プログレッシヴ・ポップ」なんて言葉から想起させるものよりはずっと取っ付き易いです。
ディスクのレーベル面はside carが赤、side freezerが青と真反対ですが、この作品の特徴を如実に表しているようにも思えます。
個人的には年間ベストで上位にきそうな予感がしてますし、オススメです。
![]() | car and freezer (2014/03/12) 石橋英子 商品詳細を見る |
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コメントの投稿
No title
vuoy様 こんばんは
新譜が出たことは知っていましたが、
もっとアヴァンギャルドなものを想像していました。
確かにすごくとっつきやすいですね。
それでいて、JPOPとは全く隔絶した音楽性。
英語詞の部分は、ちょっとケイトブッシュっぽさを感じました。
新譜が出たことは知っていましたが、
もっとアヴァンギャルドなものを想像していました。
確かにすごくとっつきやすいですね。
それでいて、JPOPとは全く隔絶した音楽性。
英語詞の部分は、ちょっとケイトブッシュっぽさを感じました。
Re: No title
>> GAOHEWGIIさん
こんばんは。
私も、初めて名前を聴いたのが山本精一関連だったもので、
勝手にアヴァン/フリーキーな音を想像してましたが、想像以上に真っ当(?)なポップスで、
本当に素晴らしかったです。
瑞々しくて、透き通ってて、本当に良いアルバムだと思います。
こんばんは。
私も、初めて名前を聴いたのが山本精一関連だったもので、
勝手にアヴァン/フリーキーな音を想像してましたが、想像以上に真っ当(?)なポップスで、
本当に素晴らしかったです。
瑞々しくて、透き通ってて、本当に良いアルバムだと思います。