XTC "Drums & Wires"

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Artist: XTC
Album: "Drums & Wires"
Label: Virgin Records
Year: 1979

Tracklist
01. Making Plans for Nigel (4:13)
02. Helicopter (3:54)
03. Day In Day Out (3:08)
04. When You're Near Me I Have Difficulty (3:20)
05. Ten Feet Tall (3:12)
06. Roads Girdle the Globe (4:51)
07. Real by Reel (3:46)
08. Millions (5:57)
09. That is the Way (2:56)
10. Outside World (2:40)
11. Scissor Man (3:59)
12. Complicated Game (4:53)


XTCの転換期、というと色々な時期があげられると思いますが、一番最初にして、最大の転換点はやはりキーボーディスト バリー・アンドリュースの脱退と、ギタリスト デイヴ・グレゴリーの(バリーの後釜としての)加入であったのは間違いありません。
初期の、衝動性と実験性を兼ね備えたような音楽性(プログレッシヴ・パンクと呼んでもいいかもしれない笑)は、アンディ・パートリッジだけでなく、バリーに依るところも大きかったのだと予想されますが、逆に、彼の脱退とデイヴの加入により、XTCは徐々に普遍性を獲得していくに至ったようにも思えます。
(バリーと一緒のままでは、きっと"Skylarking"や"Apple Venus Vol.1"は生まれなかったでしょう)

さて、今回紹介する"Drums & Wires"は上記のラインナップ変更があって最初の作品です。
「ドラムスとワイヤー」というタイトルからも分かる通り、ドラムスとワイヤー(=弦、ギターとベース)によるソリッドなバンド・サウンドを中心とした、いかにもロックバンド然とした音作りがなされています。

やはりまず触れたいのはアンディとデイヴという2人のギタリストによるアルペジオやコードストローク、ギターリフの複雑かつ絶妙な絡み合いです。
基本的にメインリフをデイヴが、リズムギターをアンディが担当していると思いますが、デイヴの流麗なプレイと、アンディのザクザクとした荒々しいプレイとの対比が実に見事なのです。所々でポリリズミックに思える部分もあって、どこかキャプテン・ビーフハートの諸作を連想させます。(この方法論は、後に"The Big Express"の1曲目で最良の形として実現します)
また、デイヴはギターだけでなく簡単なシンセも担当しており、バンドサウンドに深み/多彩さを与えています。

そして、その基盤となるリズム隊の働きが、実はより一層素晴らしい。
まず、コリンのベースは楽曲を牽引していく力強さを十分に備えています。XTCはどの作品でもベースの音量をある程度確保する傾向にあると思いますが、個人的にコリンのベースラインが最も心地よいのはこのアルバムです。
後年の'Mayor of Simpleton'("Oranges & Lemons"収録)などでも素晴らしいベースラインを聴かせますが、やや音を詰め気味のそれと比べると、今作のベースラインは余白をたっぷりととっていて、レイドバックした感覚が強く、ちょっとブラック・ミュージック(というかレゲエとか)のようなノリも感じさせます。

次にテリーのドラミング。
こちらもたっぷりとした余白をとったものであることは明白ですが、それを巧みに活かすようなミキシングが施されていると思います。
この辺りはプロデューサーのスティーヴ・リリー・ホワイトとエンジニアのヒュー・パジャムによるところが大きいのでしょう。特に彼らは次作"Black Sea"ピーター・ゲイブリエルの3rdをプロデュースする中で、80年代を代表するドラムスの録音/編集技法であるゲート・リヴァーブ(あるいはゲーテッド・リヴァーブ)を開発していきます。この作品ではまだその方法論は確立していませんが、ベースと併せ、リズム隊のミックスにはかなりこだわっている印象です。

ドラムスには繊細にリヴァーブがかけられており(スタジオの鳴りの可能性もありますが)、その残響の広がり方は、レゲエっぽいベースとあわせて、ダブに通底するような「密室感」をかなり色濃く漂わせています。
音/メロディー自体はポップでありながらどこか閉塞的な雰囲気が全編を覆っているのはそういうところに起因するのかもしれません。
そのダブ・スタイルのサウンド・メイクのリズム隊と、ポップさとフリーキーさを同時に漂わせるギター2本の演奏とが見事に一体となって、絶妙に心地よいバンド・サウンドを作り上げているのです。

あくまでロック・バンドとしての体裁を守りつつ、「ダブっぽい音」を取り入れている(≒ロック側からのダブへのアプローチ?)ので、ダブ特有の「残響の極端な強調」などはなく、あくまでバンド・サウンドをより刺激的にアップデートしながら、ポップネスは最大限確保されています。まさに理想的な「ダブ・ロック」なサウンドと言えます。
アンディのソロ(Mr. Partridge名義のダブ作品"Take Away")の素材として、このアルバムからの曲が多く選ばれているというのも、納得といったところではないでしょうか。

ちなみに、昨年の"Nonsuch"に引き続き、今年は今作の5.1chリミックス&リマスター盤が出るとのこと。
この精緻なミックスと心地良い閉塞感がどう生まれ変わるのか、今から楽しみで仕方ありません。みんな、買おうね!(笑)






ドラムス・アンド・ワイアーズドラムス・アンド・ワイアーズ
(2011/06/08)
XTC

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No title

vuoy様
こんばんは

自分のXTC最初の一枚は本作でした。
仰るとおり、ポップ化進行のはじまりだったので、
とても聴きやすかったです。
ファーストから聴いていたら挫折していたかも。

あれはあれで今は愛でておりますが。

この間のリマスターで工夫を凝らしてくれただけに
5.1CHもすごそうですね。

Re: No title

>> GAOHEWGIIさん
たしかに、1st(と2nd)は最初に聴くには適さないかもしれませんね。
今聴けばものすごく刺激的な痙攣(?)パンクだと思いますが(笑)

やはり最初に聴くのはこの作品以降がいいと思います。
かく言う私も次作"Black Sea"でXTCに初めて触れ、次に"Oranges & Lemons"...と、
順当に歩を進めていったことが思い出されます。
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