Seun Kuti & Egypt '80 "A Long Way to the Beginning"

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Artist: Seun Kuti & Egypt '80
Album: "A Long Way to the Beginning"
Label: Knitting Factory
Year: 2014

Tracklist
01. IMF (5:01)
02. African Airways (5:12)
03. Higher Consciousness (7:34)
04. Ohun Aiye (5:18)
05. Kalakuta Boy (6:41)
06. African Smoke (6:49)
07. Black Woman (8:53)


アフロ・ビートに対し、どういうアプローチをとるのか、というのは実は非常に面白い問題なのではないでしょうか。
多数の楽器が複雑に絡まりながら一つの大きなうねり/グルーヴを醸成していくという音楽性、あるいはフロントマンの声がもつメッセージ性やアジテーション。
どの要素を、どういう方法論で強調していくのか、というのは、プロデューサーにとっても自身の音楽的素養を示す大きなチャンスであると思えます。
そういう意味で、今回リリースされたシェウン・クティの新作は非常に面白い作品である、ということが出来るでしょう。

今作は、今をときめくジャズ・ピアニスト ロバート・グラスパーによるプロデュースです。
グラスパーは以前、ベナン共和国出身のギタリスト リオーネル・ルエケの作品もプロデュースしたことがあります。
ルエケの作品では、アフロ・フィーリングを漂白し、洗練させたようなプロデュースを見せていましたが、今回のシェウンについて言えば、それとは真逆のかなりトンガッたアプローチをとっているように思えます。

まずもって特徴的なのはミックスです。
ベースやバスドラム/タムタムなど、リズム楽器の低音部を強調するとともに、各楽器をクリアに分離させる音量バランスにより、アフロ・ビートのもつポリリズミックな部分がかなり直截的に提示されています。
特にドラムスのミックスについて言えば、そのマットな質感はUKダブやミニマル・ダブに通底する感覚もあり、ソリッドでありながらもどこか小気味良い印象です。
それらリズム楽器と、ブラスによる歯切れのよいヴァンプやザクザクとしたサウンド・メイクのギターは時に複雑に絡まり、時にユニゾンしながら、大きな一つのうねりを作り出していきます。
各楽器の重なり方がかなりストレートに提示されているため、聴き始めはやや混乱するかもしれません。

グラスパーはその隙間にキーボードの夢見心地な音響や、シェウンのヴォーカルや女性コーラス、M1(Dead Prez)らによるラップなどをあてがいました。
彼は音響とグルーヴ、そして言葉を自在に前景化/後景化させることで、アフロ・ビートを、とても複雑な多層性をもった音楽へとアップデートしています。
思えば、前作のプロデューサーの一人であるブライアン・イーノはそういった楽器の絡みよりも、そこから生み出される結果としてのグルーヴを強調していたように思えます。
グラスパーのアプローチはグルーヴが生み出される「過程」や「方法論」に着目したものと見ることができ、イーノと真逆の視点でプロデュースにあたっているということではないでしょうか。

勿論、その多層的な音はシェウンの怒気に染まったヴォーカルがはらむメッセージ性を強く押し出します。
IMF(国際通貨基金)を「国際的クソッタレ(International Mother Fxxker)」ともじった1曲目を始めとして、貨幣システムを始めとする資本主義体制に対する反逆の意思や、同胞に対する惜しみない愛情やアジテーションを父譲りの野太い声で歌う様は、前作から3年経った今作においても彼の「戦うミュージシャン」としての姿勢が全く揺らいでいないことを如実に語っています。
また、4曲目ではカリビアンなアプローチも見ることができ、グラスパーによるトンガッたプロデュースと併せて見るに、シェウン自身父の遺したアフロ・ビートを完成形として、その上に安寧するつもりはまるでなさそうですし、また、先頃亡くなったネルソン・マンデラの自伝にも引っ掛けたと思われるタイトルは、まるでその力強い決意を物語っているかのようです。

彼のチャレンジが行き着く先が、さらに楽しみになる意欲作ではないでしょうか。


)



ロング・ウェイ・トゥ・ザ・ビギニング〜始まりへの長い道のり(解説、歌詞対訳付き)ロング・ウェイ・トゥ・ザ・ビギニング〜始まりへの長い道のり(解説、歌詞対訳付き)
(2014/03/09)
シェウン・クティ&エジプト80

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No title

vuoy様

こんばんは

フェラクティの息子が音楽をやっていたなんて
全然知りませんでした。

アフロビートを継承するだけでなく、
モダンで先鋭的なアプローチをしていて
さすがの血筋ですね。


Re: No title

>> GAOHEWGIIさん

こんばんは
前作"From Africa with Fury: Rise"での作風は、かなり忠実に父の音楽を継承したような雰囲気でしたが、
今作は随分と変わったように思います。
やはりグラスパーのプロデュースによるところが大きいのかと。

しかし、アフロビートをアップデートしようという意思を強く感じるのは異母兄フェミの方ですね。
昨年の"No Place for My Dream"は本当に素晴らしい作品でしたし。

シェウンも、アフロビートをどういう風に解釈/演奏してみせるのか、これから楽しみなところです。
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