Stevie Ray Vaughan & Double Trouble "Texas Flood"

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Artist: Stevie Ray Vaughan & Double Trouble
Album: "Texas Flood"
Label: Epic
Year: 1983

Tracklist
01. Love Struck Baby (2:24)
02. Pride and Joy (3:40)
03. Texas Flood (5:21)
04. Tell Me (2:49)
05. Testify (3:25)
06. Rude Mood (4:40)
07. Mary Had a Little Lamb (2:47)
08. Dirty Pool (5:02)
09. I'm Cryin' (3:42)
10. Lenny (4:58)


ブルースの、一つの頂点と目されるスティーヴィー・レイ・ヴォーンですが、その音楽は非常に強い白人性(と言うよりは『非』黒人性)を有しているように思います。

彼と、そのバンドDouble Trouble(オーティス・ラッシュの曲名より命名)のデビュー作となった今作は邦題として『ブルースの洪水』というタイトル(ちなみに原題の"Texas Flood"はラリー・デイヴィスの楽曲から)が付けられており、それは言い得て妙であると思います。
確かに、彼の音楽はブルースが好きであるならば身悶えするようなモチーフに満ち溢れています。
スライド・ギターやウォーキングベース、そしてソロに至るまで、彼とそのバンドが出す音は完璧に『ブルース』であり、同時にとてつもない完成度を誇っており、どこをどう切っても『ブルース』であるのです。いや、「ありすぎる」と言っても過言ではないかもしれません。

本来のブルースには演奏者達の気分がそのまま反映されたような「揺らぎ」や、あるいは三行詩的な歌詞構造やミニマルな楽曲構造による係留感覚がありました。
それは非常に泥臭く、土臭く、その呪術的な魅力とは裏腹に「洗練」という言葉とは思い切り正反対の性質があったのです。

ところが、レイ・ヴォーンのブルースはむしろ完成度の高い、洗練されたものとして響きます。
80年代のテクノロジーをふんだんに使った(特にドラムやミックスに顕著な気がします)クリアな音像や、それぞれのモチーフがすっきりと整頓されることで「ソング」然とした、明快な展開を有した楽曲など、それはどこまでもブルースであるように見えながら、その実それまでのブルースでは絶対に経験できなかったような感覚を聴くものに与えることは間違いありません。

彼は白人です。つまり、本来的に黒人の、ひいては『ブルース』の外にいる人間なのです。
彼はブルースの酸い甘い全てを「クールなもの」として全肯定し、その上で自分の音楽を組み立てているため、その楽曲はブルースらしいモチーフに満ち溢れたものでありながら、ある側面ではブルースの強烈なパロディとも言うべき奇形な音楽を作り上げてしまったと見るべきでしょう。

彼のこういった姿勢は、近年であればフェラ・クティのアフロ・ビートを全肯定し、礼儀正しく継承したシェウン・クティにも似ています。
ただ、あちらは世代的に離れたことで「外なる継承者」となったわけですが、人種や国籍自体は同じ(というか親子)わけでして、文化的なバックボーンなどには共通項が多くあったのでしょう。それ故に父の音楽性をかなり正確に表現できたと思われます。
レイ・ヴォーンはかつてブルースを歌った黒人ミュージシャン達とは、世代的にだけでなく、文化的なバックボーンからしてまるきり違うのですから、その音楽性を正しく継承しようとしてもうまくいくわけはありません。
悲しいことですが、彼の類稀な研鑽と才能により生み出された作品は、絶望的なまでに「白人には(黒人の)ブルースはできない」ということを皮肉にも証明してしまっているように思います。

ただ、そのことと作品自体の面白さは全く関係ありません。
ブルース好きをうならせるようなフレーズが次から次へと飛び出し、あるいは非常にブルージーなソロへと帰結していきます。(ちなみに、ソロの配置の仕方はやはりHR/HM通過後の音楽だなぁ、って感じ)
どこまでも奇形で、「ブルースのキメラ」とでも言うべき彼の音楽は黒人的なブルースとしては非常に不自然ですが、それは裏を返せば非常に白人らしいわけでありまして、そのアンビヴァレントな魅力は確かに唯一無二です。
また、最終曲'Lenny'はむしろ「黒人のようにブルースはできない」という点を理解し、開き直ったかのような名演奏だと思います。逆に言えば、黒人にこの演奏はできないでしょうね。
ブルースの頂点というよりはむしろ「ホワイト・ブルースの終着点」とでも評すべき名作です。






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(2013/01/29)
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