King Crimson "In the Court of the Crimson King"

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Artist: King Crimson
Album: "In the Court of the Crimson King"
Label: Island
Year: 1969

Tracklist
01. 21st Century Schizoid Man [including "Mirrors"] (7:21)
02. I Talk to the Wind (6:05)
03. Epitaph [including "March for No Reason" and "Tomorrow and Tomorrow"] (8:47)
04. Moonchild [including "The Dream" and "The Illusion"] (12:13)
05. The Court of the Crimson King [including "The Return of the Fire Witch" and "The Dance of the Puppets"] (9:25)


「ロック史上最も衝撃的なデビュー・アルバムは何か」という問に対して、多くの人はUKのロック・バンドKing Crimsonが1969年に発表した"In the Court of the Crimson King"(『クリムゾン・キングの宮殿』)と答えるのではないかと思います。
彼らの登場により、ロックはアートとしての新たな指針であるプログレッシヴ・ロックというジャンルを獲得し、その表現力を前進させることができたと言っても過言ではないでしょう。

この作品で彼らは、ジャズ(というかバップ)の即興を中心とした楽曲の構築方法や、あるいはクラシック的な旋律や響き(2曲目'I Talk to the Wind'の導入部分のフルートなどに顕著)を取り入れ、ソング(歌曲)然としたポップネスと、メンバー達の楽器演奏者としての主張とを見事に同居させることに成功しました。
それは確かにそれまでのロックでは見られなかった要素ですし、まだまだスタジオ経験の浅い(ライヴは数多くこなしていましたが)、若いミュージシャンたちがこれほどまでに堂々とこの作品発表したことは、プログレッシヴ・ロックが一般に浸透した(と言い切ります笑)現代から考えても驚嘆に値します。

この点だけでも彼らの、そしてこの作品が世間に与えた衝撃度を推し量り、また人に伝えることはできるかと思いますが、個人的にはこのアルバムの衝撃度はもうひとつの「ある部分」もまた担っていたのではないかと思うのです。

最近新ラインナップでの活動再開がアナウンスされたところではありますが、現在に至るまでクリムゾンのリーダーはロバート・フリップその人です。「クリムゾン=フリップ」と言っても間違いではないほど、彼はバンドのプロデュース能力に長けています。
しかし、今作に限って言えばサウンド面でバンドを牽引したのは今作を以ってバンドを去るイアン・マクドナルドであったことは疑いようがないでしょう。
彼はその作曲能力と、マルチプレイヤー(サックスやフルート、キーボード、メロトロンにヴィブラフォン!)としての腕前を活かし、アルバム製作の大部分を担っていたと思われます。(実際、一番スタジオに残って作業していたのはイアンだとか)

この二人が、この作品におけるキーパーソン(フリップは後ほどはまだ目立ってませんが)であることは間違いありませんが、今作を含めた初期のクリムゾンの世界観を決定づけたのは作詞家(及びライヴでの照明担当)のピート・シンフィールドです。
そして彼が決定づけた初期クリムゾンの世界観というのは、一言で言い表せば「終末感」と言えるのではないかと思います。彼の抽象的かつ神秘的な歌詞は常に謎めいた印象を残しながら、それと同時に不気味な様子を漂わせています。不穏な名詞が半ばコラージュ的に並べられた不気味な1曲目'21st Century Schizoid Man'にて即座にその雰囲気は確立されますし、他にも、優しい旋律にのせて男が風に語りかける、という取り様によっては錯乱的に思える2曲目、「混乱(confusion)こそ我が墓碑銘(epitaph)」と歌われる重厚な3曲目、異世界感満載の4,5曲目など、彼の詩世界には独特の陰りと閉塞感があるのです。
思えば、以前紹介したEL&Pの"Brain Salad Surgery"の最終曲'Karn Evil 9'の最終パートでも彼は人間が機械に敗北するという、演奏の勇壮さとは裏腹な不気味さを持つ詩を提供していましたね。

奇しくも、世間ではヒッピー・ムーヴメントが最高潮を迎え、この数ヶ月前にはUSでかの有名なウッドストック・フェスティヴァルも開催され、時代はまさに『サマー・オブ・ラヴ』のまっただ中でありました。
そんな中に於いて、それとは真っ向から対立するような現実感のない、世界が行き詰まって行くのを感じさせるような内容の作品が発表されたこと、そしてその作品が今までのロックでは見られなかったほどに先鋭的な内容だったことは当時のリスナーをして、何よりも衝撃的であったことでしょう。

フリップやイアンを始めとするメンバーの演奏は、先鋭的であると同時にシンフィールドの世界観を非常に巧みに表現しきったのです。
それは特にフリージャズ(1曲目)や、はたまたフリー・インプロヴィゼーション(4曲目後半)の特徴も匂わせる即興演奏に顕著であるように思います。もちろんメロトロンなどの響きにも注目すべきでしょう。

殆どのメンバーが脱退する中、彼はフリップと共にバンドに残り続け、あまりにも美しい4th"Islands"まで、クリムゾン・ミュージックに独特の神秘性を付与し続けました。
その後のクリムゾン(というよりもフリップ)の躍進についてはまた別に稿を割きたいと思いますが、それ以降のクリムゾンが、それまでとはがらりと雰囲気を変える(あるいは、この作品~4thまでのクリムゾンがあまりに独特)のは、キング・クリムゾンというバンドのカラーを一身に担っていたのが、フリップでも、ましてや今作で脱退するイアンでもなく、ピート・シンフィールドという特異な立場のバンドメンバーであったからではないかと思うのです。






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(2009/10/08)
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