The Beatles "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"

sgt.jpg


Artist: The Beatles
Album: "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"
Label: Parlophone
Year: 1967

Tracklist
01. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (2:02)
02. With a Little Help from My Friends (2:44)
03. Lucy in the Sky with Diamond (3:29)
04. Getting Better (2:48)
05. Fixing a Hole (2:36)
06. She's Leaving Home (3:35)
07. Being for the Benefit of Mr. Kite! (2:37)
08. Within You without You (5:06)
09. When I'm Sixty-Four (2:37)
10. Lovely Rita (2:42)
11. Good Morning, Good Morning (2:42)
12. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise) (1:19)
13. A Day in the Life (5:06)


サイケデリック・ミュージックとは凄くシンプルに言うならば『ここではないどこか』を表現することを目的としていると言えると思います。
そして、そうであるとするならば、コンセプト・アルバムという概念は、正しくサイケデリックの文脈から出るべくして出てきた様式であると言って過言ではないでしょう。

1960年代に急激に広まったLSDや、マリファナ(大麻)による幻覚体験(あるいは精神の拡大経験)を音楽で再現するという動きは、当時急速に進化していった電子楽器や編集技術(テープ編集等)による未知の音像と非常に相性が良かったことは多くの方がよく知るところだと思います。
そしてそれは、この世に誕生した瞬間からエレキギターなどの電気的な楽器と親密なロックンロール(ロック)の力を得ることでポピュラー・ミュージックの世界に凄まじい勢いで食い込んできました。

当時の多くの楽曲は、暴力的なファズサウンドや、フューチャリスティックな電子音、そしてコラージュや逆回転といった要素を思いのままにブチ込むことでサイケデリアを現出させようと試みましたが、"Revolver"や同時期のシングルにて、サウンド面での実験を繰り返してきたThe Beatlesは、そういったサイケデリアのもつ非現実性に着目し、「現実(ここ)ではないどこか」を表現する手法を開発したのであり、そしてその大きな成果こそが"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"というモンスター・アルバムなのです。

『アルバムを一つのテーマに基づいて構成する』という考え自体は、別に彼らが初めてではありません。
フィル・スペクターが、自身の作り上げたウォール・オブ・サウンドという手法を以ってクリスマス・ソングを解釈しなおした"A Christmas Gift..."や、あるいはフランク・ザッパ率いるマザーズがこの作品の直前に発表した"Absolutely Free"などはその代表例と言えます。
これらの作品は確かにテーマ性を持ち、アルバムが単なる『シングル曲とオマケの詰め合わせ』でなくそれ単体で一つの作品として成り立つように作られています。
しかしながら、これらの作品は基本的に「現実の延長線上にあるもの」をテーマとしています。先の例で言えば、フィル・スペクターの場合は「クリスマス・ソング」、ザッパの場合は「自由(≒即興演奏)」「祖国アメリカの欺瞞の糾弾」をテーマとしているのです。これらは『コンセプト・アルバム』と言うよりは『トータル・アルバム』と表現したほうが適当なように思えます。(一般的な概念ではコンセプト・アルバム=トータル・アルバムかとは思いますが、個人的にはこう考えています)

The Beatlesはデビュー当初より「シングル曲をアルバムに採用しない」というルール(多少の例外はありますが…)に則っていることからも分かる通り「アルバム」という様式のあり方について非常に意識的でした。
先述のトータル・アルバム的な発想はそういった彼らにとって格好の材料であったろうし、また、世はサイケデリック(・ミュージック)の一大潮流に沸き立っていましたので、アルバム丸ごとを使って『ここではないどこか』の音楽を創りあげようとしたのは至極自然なことであったのでしょう。

作品は「ペパー軍曹の孤独な心の楽団」という架空のバンドのショーとして構築されていますが、よく言われるとおり楽曲の多くは急激な転調やテープ操作によるバッド・トリップ的な音の質感、あるいはそれまでになくヘヴィなギター、インド要素、躁病的な脳天気さなど、ライヴでの再現性を無視した実験性を多くはらんでいます。
しかし、彼ら(というかポール)が目指したのが『サイケデリック・アルバム』であるとするならば、導入と終結以外はまとまりがなくても大きな問題はなかったのではないかと思います。(メンバーの創作意欲により、いわゆる「ロック・バンドらしい曲」が出てこない、なんて現実的な問題もあったのかもしれませんが…)

そして、そうであればショーが終わった後に演奏される名曲'A Day in the Life'は非現実からの帰還後に流れる「現実世界の音楽」ということになります。
この楽曲ではオーケストラが大きくフィーチュアされていますが、電子楽器と対となるオーケストラはそのままずばりサイケデリック的な音の対立項としてクローズ・アップされているととることもできます。ただ、昇り詰めていくような箇所などを聴くにつけ、それは今までのオーケストラの使用法からは大きくかけ離れています。
歌詞も現実世界を歌っているように思えますが「クスリでラリって事故死する議員」や「(ベトナム)戦争に参戦しなかったはずの英国軍が勝利する映画」など何か我々の知る現実とはずれた内容です。
これは「現実こそが本当のサイケデリック(事実は小説より…)」、または「一度非現実を体験して戻ってきたところはすでに現実ではない(幻覚体験によるものの見方の変化)」ということを表しているともとることができるのではないでしょうか。あのどこまでも昇り詰めるオーケストラの持つ、背筋の凍るような説得力は我々が非現実の世界に旅立ち、元いた現実とは違う「現実」へ帰還した恐ろしさ、と言ってもよく、やはりこの楽曲がアルバムのコンセプトに沿ったものであることは疑いようがありません。

このアルバムにより『コンセプト・アルバム』という様式は一般化し、それはさらなる再解釈により『アルバム(や楽曲)に対する物語性の付与』という側面を有するようになり、『アルバム』は一つのアート・フォームとして認知されるようになったのです。
もちろん、その先にはプログレッシヴ・ロックの諸作をはじめとする、ストーリー・テリング的な名作が多く控えているのは間違いないのです。






Sgt Pepper's Lonely Hearts Club BandSgt Pepper's Lonely Hearts Club Band
(2009/09/09)
Beatles

商品詳細を見る
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

vuoy

Author:vuoy
音楽好きです。
情報に間違いなどありましたらコメント欄で結構ですので気軽に連絡ください。
Last.fm
twitter

【注意事項】
まれに、当blogの記事をオークションの商品説明に引用またはURL貼付されているページを見ることがあります。
当blogの記事はあくまで個人の感想であり、ミュージシャン本人以外の利益に供する目的はありませんので、商用目的での無断引用/URL貼付はご遠慮願います。
どうしてもという場合には、twitterなどでご相談いただければ検討しますので何卒ご理解いただきますようよろしくお願いします。

アクセスカウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
vuoy's Profile Page
Twitter
検索フォーム
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
音楽
341位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋楽
67位
アクセスランキングを見る>>
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR