Hermeto Pascoal "Zabumbê-Bum-Ã"

Artist: Hermeto Pascoal
Album: "Zabumbê-Bum-Ã"
Label: Warner Bros. Records
Year: 1979
Tracklist
01. São Jorge (2:36)
02. Rede (6:27)
03. Pimenteira (6:27)
04. Suíte Paulistana (5:27)
05. Santo Antônio (4:07)
06. Alexandre, Marcelo E Pablo (5:16)
07. Suite Norte, Sul, Leste, Oeste (3:55)
08. Susto (3:03)
09. Mestre Mará (4:28)
ブラジルにおけるプログレッシヴ・ミュージックの源流というと、エグベルト・ジスモンチ(未聴)と、今回紹介するエルメート・パスコアールの二人の名を挙げる方が多いと思います。
ボサノヴァの法王ジョアン・ジルベルトを始めとして、ブラジルのミュージシャンには(特にハーモニーとリズムとの関係性などにおいて)固有の美学を持つミュージシャンが多く、1人1ジャンルと言っても過言ではないほどに肥沃なシーンが形成されていますが、パスコアールの音楽について言えば、それらとは一線を画すというか、存在する世界が元から違うような感覚を抱かせるものになっています。
基本的にはブラジル音楽(サンバやショーロ)にジャズやアフロ要素を混ぜあわせることで、彼は音楽を作り出します。
アフロともブラジルともつかぬ、複雑でありながらも快楽的なリズムの奔流と、フリーキーで呪術的なメロディ/ハーモニー、近代的な電子楽器の使用、そして豚の鳴き声などのギミック(彼について言えばギミックではないかもしれませんが…)などの複数の要素を見事に織り合わせ、まさに「パスコアール・ミュージック」としか呼び様のない独特の音楽が作り上げられます。
彼の、その見事な音楽性が発揮されたのは3rd"Slaves Mass"からの3作(+ライヴ1作)をワーナーから発表した時期でしょう。
今作"Zabumbê-Bum-Ã"は"Slaves Mass"の次に発表されたアルバムで、他のスタジオ作品2作に比べるとややフュージョンに寄ったような内容で、先に上げた4作の中では地味な位置に置かれているようにも感じられます。
しかし、夢見心地なエレピやフルートと、図太いリズム隊が中心となって構成された楽曲は、どこかUKのカンタベリー・ミュージックとの類似性も見せているように思うのです。
特にエレピ、フルートが描く呪術的で込み入ったフレーズは一々それっぽいですし、女声スキャットが入ったりすると、もうそのままと言ってもいいくらいに似てきます(笑)
ではカンタベリーを聴けばいいかというとそうではなく、やはりブラジル音楽が消化/昇華された上のものであるわけでして、スタイル的にはカンタベリーと酷似していても、それと比べると自由さと自然さに格段の違いがあるように感じられますね。
カンタベリーと類似していると述べていることからも分かるように、フレーズの幾つかに勿体つけたような部分が見えることはありますが、どぎつい音の使用もなく、各楽曲もコンパクトに纏まっておりますので、案外最初の1枚にいいかもしれません。
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