Prefuse 73 "Vocal Studies + Uprock Narratives"

Artist: Prefuse 73
Album: "Vocal Studies + Uprock Narratives"
Label: Warp Records
Year: 2001
Tracklist
01. Radio Attack (5:15)
02. Nuno (2:59)
03. Life Death (3:23)
04. Smile in Your Face (2:28)
05. Point to B (4:01)
06. Five Minutes Away (3:15)
07. Living Life (2:43)
08. Eve of Dextruction (3:22)
09. Last Night (3:40)
10. Cliché Intro (1:48)
11. Back in Time (2:10)
12. Hot Winter's Day (2:12)
13. Black List (3:50)
14. Untitled (1:23)
15. Afternoon Love In (4:01)
16. 7th Message (3:52)
DJシャドウがサンプリングのみで構築した傑作"Endtroducing...."や、DJクラッシュの"Strictly Turntablized"が世に問われたことで、いわゆる『アブストラクト・ヒップホップ』というジャンルは一気に広がりを見せました。
HIPHOPでありながらラップを(基本的に)用いず、また種々のサンプルを用いてブレイクビーツの上に複雑な要素を多層化させることに長けたこのジャンルは、確かにその名が示す通りに抽象的であり、またHIPHOPという「サンプリングを根底として成り立っている音楽」のストイックなアートフォームを提示したと言えるのではないかと思います。
そして、サンプリングという手法自体はその根本の性質からしてすでにコラージュ的です。
様々な楽曲や、ときにはフィールドレコーディングなどの録音物から特定の音を抜き出し、加工し、ループさせたものを幾重にも重ねるとき、音は元々の(原曲の中で持ち得ていた)意味を失ってただの素材と化し、複数の意図/意味があるようで、その実楽曲全体では何も意味することがないというダダイスティックな現象を引き起こします。
コレは明らかに「ミュージック・コンクレート」と呼ばれるもの、あるいはNurse With Woundや近年ではdrawing4-5などといったミュージシャン達に代表されるコラージュ音楽の系譜に連なります。
アブストラクト・ヒップホップはラップを剥ぎ取ることでHIPHOPのそういった側面を強調し、ヒプノティックなサイケデリアを現出させることで「サイケデリック/トリップ・ミュージックとしてのHIPHOP」という価値観をリスナーに示したのです。
そして、アトランタ出身のスコット・ヘレンは、このジャンルの持つこういった特徴をさらに極端化させ、推し進めるための手法を見つけ出したのです。
それは「ヴォーカルチョップ」といい、歌/ラップを細かく切り刻み、無作為に再配置するものであり、スコットがメインプロジェクトであるPrefuse 73名義で発表したデビュー作"Vocal Studies + Uprock Narratives"により世に知られ、一気に広がることになりました。
彼は、人声のもつ肉体性と、それが切り刻まれランダマイズされることで表出する匿名性/無機質さを見事に同居させることに成功したこの手法はもちろん、コラージュ的な側面を強調した楽曲構築により、アルバム全体を催眠的なサウンド・ドラッグのようなものに仕立て上げます。
ヴォーカルチョップとダブル・ベースの描くゆったりしたラインと耳障りな電子音やヒスノイズ、オーケストレションなどがブレイクビーツの上で入れ替わり立ち替わり重層化していくさまは、まさに万華鏡的であり、非常に心地が良いです。
これは、アブストラクト・ヒップホップという「HIPHOP由来のアートフォーム」の理想形・完成形の一つであることは間違いありません。
全ての音から意味を剥ぎ取り、素材として扱うDJ/ターンテーブリスト達のラディカルな美学は、この作品をもって頂点を極めたのです。
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コメントの投稿
こんばんは、お邪魔します。この作品は、最近購入して、まだ理解してません。この作品は理解するという表現は違うのではないかと思うくらい、実験的であります。少し流して聞いた方がいいのかもしれない。と思うようになりましたです。
Re: タイトルなし
>jamkenさん
こんにちは。
本文中でも述べましたが、この手の作品は基本的に「サウンド・ドラッグ」ですので、やはり体にしみ込むまではある程度聴取(摂取)する必要はあると思います。
よっぽど体が拒否する、というのでなければおっしゃるとおり適当に流し聴きするのも手かなー、と。
あるいは、数ヶ月や数年たって急に良さが分かる、というケースもままありますので、気長に付き合って行ったらいいのではないかと思います。
こんにちは。
本文中でも述べましたが、この手の作品は基本的に「サウンド・ドラッグ」ですので、やはり体にしみ込むまではある程度聴取(摂取)する必要はあると思います。
よっぽど体が拒否する、というのでなければおっしゃるとおり適当に流し聴きするのも手かなー、と。
あるいは、数ヶ月や数年たって急に良さが分かる、というケースもままありますので、気長に付き合って行ったらいいのではないかと思います。