The Upsetters "14 Dub Blackboard Jungle"

Artist: The Upsetters
Album: "14 Dub Blackboard Jungle"
Label: Upsetter
Year: 1973
Tracklist
01. Black Panta (4:40)
02. V/S Panta Rock (3:34)
03. Khasha Macka (3:52)
04. Elephant Rock (3:17)
05. African Skank (3:17)
06. Dreamland Skank (2:35)
07. Jungle Jim (2:57)
08. Drum Rock (3:56)
09. Dub Organizer (3:25)
10. Lovers Skank (2:45)
11. Mooving Skank (2:48)
12. Apeman Skank (2:30)
13. Jungle Skank (2:22)
14. Kaya Skank (3:05)
ダブ界のシュールレアリスト リー“スクラッチ”ペリーが1973年に発表した、最初期のダブ・アルバム。
彼のプロデュースしたバンドThe Upsetters名義となっていますが、実際にはボブ・マーリィ(とThe Wailers)の'Kaya'のダブ・ヴァージョンも入っていたりと、要はペリーのダブ・プロデュース作品ととったほうがよさそうです。
全体のプロデュース/指揮はもちろんペリーが執っていますが、何よりも気になるのは、ペリーとともにエンジニアとしてキング・タビーが名を連ねていること。
今やダブ界のレジェンド(タビーはすで亡くなっているのでなおさら)である二人が、ダブの最初期にタッグを組んでいたという事実は、ファンとしは非常に心躍るものだと思います。(ペリーはこの作品へのタビーの関わりを「最小限」と主張しているようですが)
ずんぐりむっくりとしたベースライン、そしてバス・ドラムの過度の強調、極端なリヴァーヴ/ディレイにより虚空へと残響を投げかけるように変容したリム・ショットやリズム・ギター、オルガン…
数多の音楽ジャンルを見渡しても類を見ないほどにヘヴィに支えられたボトムの上では、様々な楽音が重ねられ、イコライズされますが、その配置にはたっぷりと隙間がとってあります。
この隙間に、リヴァーヴ/ディレイによる残響をあてがうことでダブは構成されていきます。ベースは(多少の変化を見せながらも)単一のフレーズを反復しますが、その上に音が重ねられ多層化する様子は実に多種多様で、一つとして同じ瞬間は見いだせません。非常にこだわっているというか、もはや偏執的とすら言えそうです。
ペリーはともかくとして、タビーの関わり具合が判然としない部分があり、どうにも分析しづらい作品となってしまっていますが、個人的にはやはりミックスの質感にはタビーの関わりが強い気がします。非常に鋭く、ラディカルな印象を抱く極端なミックスで、彼のストイックさがよく出ているように思います。
そして、The Upsettersのディレクションや、時折入るヴォイスなどのコラージュ感覚はやはりペリーのものでしょう。彼のシュールレアリスティックな感覚に基づくプロダクションが、タビーのミックスと相まって作品全体をスピリチュアルでヒプノティックなものに仕立てあげています。
…と並べ立ててたものの、実際のところがわからないのもこの作品の魅力の一つなんですよね。
シンプルかつどこか不気味にも思えるジャケットも見事で、謎めいた雰囲気が強調されています。
ダブを単なるシングルB面という扱いから、それ単体でアルバムを構築できるアートへと昇華した名作の真実は、実のところこの程度分かっていれば(あるいは、分からないほうが?)いいのかもしれません。
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