Curtis Mayfield "Roots"

Artist: Curtis Mayfield
Album: "Roots"
Label: Curtom
Year: 1971
Tracklist
01. Get Down (5:45)
02. Keep on Keeping on (5:08)
03. Underground (5:15)
04. We Got to Have Peace (4:44)
05. Beautiful Brother of Mine (7:23)
06. Now You're Gone (6:50)
07. Love to Keep You in My Mind (3:48)
カーティス・メイフィールドの音楽は常にアーティスティックかつコンシャスです。
The Impressionsを脱退しソロに転向、自身の表現を突き詰めていくその姿は人々を熱狂させる『ポップ・ミュージシャン』とは明らかに違い(熱狂させる、という点では同様ではありますが)、自身の音楽を芸術作品としても成立させてみせようという自意識/美意識を強く感じさせます。
同時に彼はアメリカ黒人の置かれた状況にも気を配り、問題提起することも忘れません。
ゲットーの暗部を描いた映画「スーパーフライ」のサントラ盤である"Superfly"や、アメリカにおいて黒人が置かれた不当な状況をシニカルに示した"There's No Place Like America Today"(ジャケットがまた素晴らしい)などはそういった側面を代表する作品であると言えるでしょう。
少なくとも"There's..."までの彼はその問題意識/メッセージを強めるのとは逆に、自身の音楽から不要な音をどんどんとそぎ落とし、先鋭化させていきました。
鋭いビートと、冷ややかな迫力に満ちたそのスタイルはグルーヴ・ミュージックの目指すべき一つの到達点として参照され、近年ではD'Angelo "Voodoo"という名作が生み出される土壌ともなりました。
彼の音楽を語る際には、そういった力強い部分がフォーカスされがちであるように思いますが、初期には美しいオーケストレーションやブラスと、真摯な『愛』に溢れた作風も際立っていたことを忘れてはいけません。
麗しいハープによる導入が印象的な名バラード'Making of You'や、アフロ・パーカスの軽やかさをブラスとぶつけ、情熱的に昇華した'Move on Up'など、贅を尽くしたようなサウンドスケープはグルーヴと同じくらいに彼の音楽に血肉を与えていたのです。
そして、彼の3rd(2ndがライヴなのでスタジオとしては2作目)である"Roots"では、そういった側面が1st以上に推し進められています。
'Get Down'や'Underground'など、後のタイト/ソリッドなファンク・ポップの萌芽もすでに見られていますが、それ以上にこのアルバムは陽性の空気に満ち溢れています。
飛翔していくかのようなヴァイオリンや、やわらかな表情を見せるブラス、ピースフルな雰囲気を漂わせるパーカッションなど、音の一つ一つが優しく肯定的な響きを有しており、非常に鼓舞的でアップリフティングです。
彼自身のギターの、サイケデリックなファズ・サウンドとあわせて考えると、まだまだフラワー/ヒッピー的な平和主義/博愛的な精神から影響を残していたのかもしれません。
そしてもちろんその精神は、何よりも自分と『ルーツ(roots)』を同じくする、アメリカ黒人達に向けられていることは間違いないでしょう。
自分自身と、同族に対する惜しみない称賛と愛からその歩みを始めたからこそ、後に彼は何よりも力強い音楽を構築することができたと言えます。
ミュージシャン カーティス・メイフィールドの力の源はまさにルーツにこそあるのです。
![]() | Roots (1999/01/19) Curtis Mayfield 商品詳細を見る |
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