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Moritz von Oswald Trio "Fetch"

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Artist: Moritz von Oswald Trio
Album: "Fetch"
Label: Honest Jon's
Year: 2012

Tracklist
01. Jam (17:31)
02. Dark (7:06)
03. Club (11:56)
04. Yangissa (14:10)


電子音楽の有機性/身体性はミニマルな反復の中にこそ潜んでいる。
そのことを身をもって示したのは、ドイツの誇る前衛ポップ・グループKraftwerkでした。
彼らは反復する電子音の中から、ジェームス・ブラウンに肉薄するかのようにストイックなファンクネス(ビートによるディシプリン)を掬い取り、楽曲の土台に据えることで、電子音がその細部に持つ繊細なニュアンスをあえて際立たせ、エレクトロニック・ミュージックの可能性を一気に広げることに成功しました。
それまで実験的な音楽の一ジャンルであった電子音楽の世界は、彼らにより一気に拡大され、現在に至るまでの広大な領域、あまりに微細なサブジャンルを有するまでに成長した、といっても過言ではありません。

そして、彼らのベーシックな方法論を最も色濃く継承しているのは、いわゆるミニマル・テクノ/ミニマル・ダブと呼ばれるジャンルのミュージシャンたちではないかと思います。
執拗すぎるほどにストイックに反復するビートを楽曲の主軸とするその音楽は、ダブの暴力的なリヴァーブ/ディレイが持つニュアンスを微に入り細に入り際立て、強調することで、マイクロスコピックな要素を集積しただけでも楽曲を構築できることを証明しました。

完全にソング・フォームという概念を放棄して成立しているこの音楽は、ある部分では非常にジェームス・ブラウンの作り上げたヴァンプの集積による音楽=ファンクと似通っており、ある意味では電子音楽のアフリカ回帰、ととることもできるのかも知れません。
そして、ミニマル・ダブの1シーンを築いたユニットBasic Channelの片割れであるモーリッツ・フォン・オズワルドが主導するMoritz von Oswald Trioが昨年Honest Jon'sから発表したこの作品は、そのアイディアをさらに推し進めた作品と言えると思います。

オズワルドとヴラディスラフ・ディレイ、そしてマックス・ローダーバウアーという3人からなるこのユニットは、執拗なミニマル・ビートと、その上での即興的なインタープレイの応酬により楽曲を構築します。
彼らはリアルタイムで非常に繊細なダブ処理を施し、重ねることで音をポリリズミックに響かせます。
幾重にも多層化された音楽の中には音響と残響のもつニュアンスが渦巻き、カオスな様相を呈しますが、ミニマル・ビートによる強いディシプリンにより貫かれることで一つの大きなうねりに組み込まれ、グルーヴを生み出していきます。

この、ニュアンスの多層化という特徴は、フェラ・クティのアフロ・ビートを始めとする、アフリカン・ミュージックに多く見られるものであると思います。
ダブは、イギリスに流入したジャマイカ移民により持ち込まれ、独自の進化を遂げたことは多くの方がご存知かと思います。つまりダブはイギリス、ひいてはヨーロッパが、音楽史上で初めてアメリカという濾過器を経ることなく、その内にストレートに取り込むことに成功したブラック・ポップのメソッドであり、そしてドイツ出身のオズワルド、ローダーバウアーとフィンランド出身のディレイとは、そのメソッドを用いて自分たちの音楽を広大なアフリカへと回帰させようとしたと言えるのではないでしょうか。

そして、執拗なミニマル・ビートはもちろんジェームス・ブラウンを、多層化したニュアンスが構築する呪術性は75年に擦りきれてしまう直前の、鬼気迫るマイルス・デイヴィスをその視野に含み、その音楽性を単なる「アフロ回帰」の一言だけでは終わらせていません。
特に、マイルスよろしくな呪術性はまだまだ発展途上であるようにも思います。次作、次々作にも多大な期待を持ちたくなるような好盤です。






FetchFetch
(2012/06/18)
Moritz Von Oswald Trio

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こんにちは、お邪魔します。
このアーチストは、聞いたことがなかったです。
最近、この手のテクノ(?)音楽に、けいとうしています。ある本に
テクノの定義は難しい。とかいてありました。わたしも古い人間なので、YMO を、思い浮かべるぐらいですが。最近はデトロイトテクノや、サンプラーを使ったヒップホップまでテクノだと言う。
難しいなと感じています。
しかし、電子音楽によるアフリカ回帰という表現は、何か、かさぶたがとれた気がしました。
結局ストーンズのサティスファクションなんかの楽曲も、ねっこにミニマルというワードがあるのではなかろうか。

Re: タイトルなし

>> jamkenさん
お久しぶりです。
テクノ、というと本来的にはYMOやP-Modelなどのいわゆる「テクノ・ポップ」とはジャンルが異なるようですね。
一応「テクノ」とだけ言った場合はデトロイト・テクノ勢からシーンが作られたと考えるようで、Kraftwerkは始祖的な存在と見做すようです。(デトロイトのホアン・アトキンスが書物から引用し提唱した「テクノレベルズ」なんて概念も大事かと)
ちなみに、オズワルドは今年ちょうどアトキンスとの連名作を発表したようです(未聴)

ミニマルの全てをアフリカ回帰、とするつもりもないのですが、特にミニマル・ダブ関連についてはやはり「ダブ」が重要なのかなぁ、なんて思ってます。
ストーンズは根っこR&Bやブルーズですから、多少なり影響はあったかもしれませんね。ブルーズなんかはモノによってはひどくミニマルですし。

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