Elliott Smith "XO"

Artist: Elliott Smith
Album: "XO"
Label: Dream Works
Year: 1998
Tracklist
01. Sweet Adeline (3:15)
02. Tomorrow Tomorrow (3:07)
03. Waltz #2 (XO) (4:40)
04. Baby Britain (3:13)
05. Pitseleh (3:22)
06. Independence Day (3:04)
07. Bled White (3:22)
08. Waltz #1 (3:22)
09. Amity (2:20)
10. Oh Well, Okay (2:33)
11. Bottle Up and Explode! (2:58)
12. A Question Mark (2:41)
13. Everybody Cares, Everybody Understands (4:25)
14. I Didn't Understand (2:17)
SSWというものが、個人のパーソナルな感情をテーマとするものであるとするなら、エリオット・スミスはまさに、誰よりもSSW足りえるのでしょう。
爪弾かれるアコースティック・ギターと、彼自身の歌声には、十分すぎるほどに彼個人の感情が込められています。
詩にしても同様で、彼は常に「君」に仮託される「自分以外の誰か=他者」に受け入れられることを希求しながら、それが達成されぬ不満に身を捩らせながら涙を流します。
その姿は確かに人間という「独りでは生きられない」存在そのものが持つ悲しさ、虚しさを雄弁に語りますが、逆に社会性の欠如も感じさせるもので、人によっては、彼はただのマンモーニ(ママっ子)にしか過ぎないように映るかもしれません。
この作品以前に発表された3作("Roman Candle"、"Elliott Smith"、そして"Either/Or")は宅録/ローファイな質感がそのままの弾き語りを基調とした作品であったため、彼のそういった本質が如実に、ストレートに表されていたように思います。
これらの作品はまさに「聴くものを選ぶ」作品であり(上ではあんなこと言ってますが個人的にはこの人の音楽は大好きです)、彼のそういった「本質」に共感できるかどうかが聴き手の評価を分けるといっても過言ではないと思います。
しかし、彼の名を世に知らしめた3rdから1年半の時間をかけて発表されたこの作品は、彼のそれまでのイメージはそのままに保ちながら、より多くの人に受けいれられる、まさにポップ・アルバムとしての条件を達成した名作となりました。
一聴して気づくのは、それまでの作品に比べ格段に綿密になったアレンジメントです。
彼の音楽がバンド・サウンドやオーケストレーションを交えて再構築(しかもかなりビートルズっぽい!)されることにより、ここまでのものになるとは、誰も想像できなかったのじゃないか、と思うほどの力強さが漂っています。
メロディの展開に即座に呼応し、うねり、広がっていくサウンドは豊かでありながら無駄が全くありません。
ポスト・プロダクションをに力を注ぐようなジャケットの雰囲気は実に正しくアルバムの内容を示しているといえるでしょう。
そして、次に耳を惹くのは、美しいコーラス・ワーク。
基本的にスミスの多重録音によるものですが、その重なり、響きにはまるでビーチ・ボーイズのようなイノセンスが感ぜられます。
これについて言えば、彼の一人よがりとも言える詩世界はこの世で最も相性が良かったのかもしれません。
多重録音コーラスの持つ、パーソナルな祈りの響きは、彼の音楽が持つ本質的な部分を強固に保ち、アレンジメントとはまた別の方向で彼の音楽をパワフルなものに仕立て上げています。
以上のようなことからこの作品は、ビートルズとビーチ・ボーイズという現代ポップ・ミュージックの父と母の恩恵を存分に受けた作品ということができると思います。
ポップ・ミュージック好きであれば、好き嫌いはともあれ一度聴いてみて貰いたいアルバムです。
![]() | Xo (1998/08/25) Elliott Smith 商品詳細を見る |
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