Slowdive "Pygmalion"

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Artist: Slowdive
Album: "Pygmalion"
Label: Creation Records
Year: 1995

Tracklist
01. Rutti (10:02)
02. Crazy for You (6:00)
03. Miranda (4:48)
04. Trellisaze (6:18)
05. Cello (1:33)
06. J's Heaven (6:47)
07. Visions of La (1:43)
08. Blue Skied an' Clear (6:52)
09. All of Us (4:08)


シューゲイザー・ムーヴメントは、フィードバック・ノイズをポップ・ミュージックの文脈として扱ったジミ・ヘンドリックスの演奏を一歩推しすすめた、と言えるかもしれません。
彼らは轟音ノイズに埋もれながらも、淡々と、虚ろな表情で呟き、激情のさらにその先にある虚無的なニュアンスと、純真さを自身の楽曲に漂わせました。
そのあり方は、モンタレー・ポップ・フェスティバルで、アメリカ国歌『星条旗よ永遠なれ』をフィードバック・ノイズで蹂躙し、己の悲しみや怒り、問題意識をそこに投影したジミヘンと通底するとともに、正反対の、それまでありそうでなかったノイズの扱い方であったのです。

その理想形はもちろんMy Bloody Valentineが1991年に発表した"Loveless"に他ならないでしょうが、それは理想形にして完成形に限りなく近かった。
それゆえMBVは20年以上も沈黙せざるを得ず、そして残念ながら今年発表した新作も、その「先」を提示したとは到底言えない代物でした。(前哨戦的な作品のようなのである程度しかたないかもしれませんが)

では、"Loveless"から先は未だ提示されていないのか、というと、実はSlowdiveが95年にひっそりとリリースしたこの作品こそそうではないか、と私は思っています。
彼らは91年、まさに"Loveless"発表の年に"Just for a Day"でデビューし、すぐさまシューゲイザー・ムーヴメントにおける寵児として周囲からの期待を一身に受けることになりました。

続く2nd"Souvlaki"ブライアン・イーノをプロデューサーの一人に迎え、さらなる大成功を果たしましたが、今あらためて聴いてみると、彼らの手法の根本は、フィードバック・ノイズにはないということがよく分かる作品だったのではないかと思えます。
1st自体もそうでしたが彼らがシューゲイズ(足元のエフェクターとにらめっこ)して生み出すサウンドの要は「残響」です。
ディストーションが生み出す歪みの増幅で空間を埋め尽くすのではなく、ギターそのものの残響で空間を満たすことを、彼らは選択していたのです。

そしてその手法が行き着くところまで行き着いたのが、3rdにしてバンドのラスト・アルバムとなったこの"Pygmalion"です。
ミニマルに反復するアルペジオと、ヴォーカルが空間を漂い、残響を生み出して空間を満たします。
ドラムス/パーカッションとベースは最小限の動きを刻み、楽曲を固定しており、残響のどこまでも拡散していくような感覚とは逆に、一ヶ所から動かないような係留感覚を生み出しています。
これは、現代のエレクトロニカ/アンビエントに繋がる楽想でありますが、彼らはそれをバンド演奏のみで作りあげたのです。
"Loveless"はノイズとビリンダの声を対比させることでビリンダのウィスパー・ヴォイスが持つイノセンスを増大させましたが、彼らは空間そのものを残響というイノセンスで満たしました。コレは確かに"Loveless"とは別の選択肢であり、先にあるものと言えるでしょう。

エレクトロニカ/インディーの一大レーベルであるMorr Musicの所属ミュージシャンが彼らをリスペクトし、彼らの楽曲をカヴァーしたコンピレーションを発表しているというのも、彼らの音楽性が現代の電子音楽界に水脈の一つとして影響を及ぼしていることの証左と言えます。
この作品は、発表当時それほど高い評価を得られなかったようですが、その遺伝子は脈々と残り、そして今ようやく正当に評価され始めているのです。






PygmalionPygmalion
(2010/08/24)
Slowdive

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