Sonny Sharrock "Black Woman"

Artist: Sonny Sharrock
Album: "Black Woman"
Label: Vortex
Year: 1969
Tracklist
01. Black Woman (5:16)
02. Peanut (9:16)
03. Bailero (4:52)
04. Blind Willy (3:22)
05. Portrait of Linda in Three Colors, All Black (8:34)
祈るような演奏、というのは往々にしてあり得ます。
音楽史上、それを最も崇高な形で体現したのはかのアルバート・アイラーに他ならないでしょう。
原始的な反復と揺らぎに満ちた演奏が徐々に上り詰めていくその様には、キリスト教徒でもない一般的な日本人である私ですら、『神』のような絶対的な存在への強い希求を感じ取ることができます。
フリー・ジャズの筆頭として目されることの少なくない彼ですが、今までの土台を捨て去り根源的なものへと回帰しようとしたそれらの動きとは違い、彼は最初からその位置にいたように思います。
彼は『回帰』などするまでもなく、恐らく最初からずっとその「根源」を求めていたのです。それは我々が与えられた生命と、それを全うするしかない運命そのものが孕むブルーズ・フィーリングということもできるかと思います。
そして、今回紹介するソニー・シャーロックもその特徴を十分に備えており、まさに「サックスからギターに持ち替えたアイラー」と呼ぶことができそうです。
今作は、ファラオ・サンダースやドン・チェリー、ウェイン・ショーター、そしてハービー・マン、さらにはマイルス・デイヴィスなどのサイドマンとして十分に経験を積んだ後のデビュー作で、ヴォーカリストである妻のリンダも参加しています。
彼は、フリーキーなリズム隊とピアノ(曲によってはトランペットが参加)の音塊の上で、ただひたすらに音を生成し続けます。
ノイズや不協和音をたっぷり含み、全ての定石を無視し、踏み荒らさんというように猛烈な演奏で、鬼気迫るというか、非常に原始的な(端的に言えば頭の悪そうな)迫力があります。
しかし、その演奏には間違いなく神々しい何かが宿っています。トレモロ奏法で痙攣するギターは彼の「祈り」そのままであり、彼はギターを媒介とするシャーマンのよう振る舞います。
妻リンダの歌声もそれに拍車をかけます。
スピリチュアルなオノ・ヨーコ(笑)とでも言うべき野卑で美しい声にはゴスペル・フィーリングが宿ってます。
その歌声はバンドが生み出すノイズと折り重なって重層化し、クワイアとすら化すのです。
原始的で根源的であるからこそ、強く心を打つ「何か」が確かに存在する作品といえるでしょう。
「音楽は理屈じゃない」というのは、間違いなく真実なのです。
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