Sade "Love Deluxe"

Artist: Sade
Album: "Love Deluxe"
Label: Epic
Year: 1992
Tracklist
01. No Ordinary Love (7:20)
02. Feel No Pain (5:08)
03. I Couldn't Love You More (3:49)
04. Like a Tattoo (3:38)
05. Kiss of Life (5:50)
06. Cherish the Day (5:34)
07. Pearls (4:34)
08. Bullet Proof Soul (5:26)
09. Mermaid (4:23)
贅肉を削ぎ落したかのような、無駄のないサウンド。
そう言い表される作品は多くありますが、真にそれを達成したもの、というとそう多くはないように思います。
少ない音数で楽曲を構成するということは、すなわち文章で言えば使える文字数が限られているようなもので、当然ながら微妙なニュアンスを伝えるためには、聴き手/読み手に様々なことを想像/妄想させるような「間」をどう取り扱うかが非常に重要な問題となります。
そして、その点においてUKのソウル・バンドSadeと、そのフロントマンであるヴォーカリスト シャーデー・アデュと並ぶものはいないと言えるでしょう。
80年代半ばにデビューしたこのバンドは、徐々に作品発表のスパンを長めており、デビューから約30年経つ現在でもその作品数は多くありません。ここ20年で見れば、この作品を含めても3作しか発表していませんが、そのどれもがリスナーにとってはそれだけの時間がかかっても是と言うしかないほどに説得力のある作品に仕上がっています。(最新作の"Soldier of Love"は未聴です汗)
彼女達の作る音楽には、その音数の少なさとは裏腹に、常に言いようのない悲しみや狂おしい程の愛が息づいています。
ドラムスとサブマリン・ベースの作る確固な土台を軸とし、ギターがゆるやかに反復しながらも残響を以ってして繊細な、言い表しがたい感情の動きを表現します。シンセサイザーやピアノの響きは時にロマンティックですが、またある時には凍てつくような鋭さをもって楽曲を彩ります。
それらの音は非常にシンプルで、まさに冒頭で述べたように無駄がありませんが、その実その「間」と音の濃淡は非常に雄弁であり、下手なヘヴィ・ミュージックよりも重厚とすら言えます。
そして、このバンドの音楽を語るうえで何よりも重要なのは、やはりフロントマン シャーデーの声なのです。
女性にしては低めのハスキーヴォイスは、非常に思慮深く知性に満ちた響きをナチュラルに備えていますが、彼女はその声をもって朗々と歌い上げるのではなく、あくまでクールに抑制の効いた歌唱を聴かせます。
淡々としているようでありながらも、その声の動きには彼女の狂おしい感情がたっぷりと含まれており、それはヴォーカル・ラインの動きに応じるようにその声から漏れだし、彼女の歌う「愛」のストイックさ、凄まじさを物語ります。
最小限の動きのなかに感情を込め、全てを出しきるような彼女のスタイルは未だかつて誰にも真似のできないものであり、これこそが彼女、そしてバンドの音楽を唯一無二のものとして成立せしめています。
(以前紹介したRhyeのマイク・ミロシュとは声は似通っていていも正反対)
この作品に渦巻く、クールでありながらも情念にまみれた世界観には本当に圧倒されるものがあります。
90年代のソウル・ミュージックを聴くのであれば何はさておき押さえておくべき名作でしょう。
![]() | Love Deluxe (2000/11/23) Sade 商品詳細を見る |
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