Antonio Loureiro "Só"

Artist: Antonio Loureiro
Album: "Só"
Label: NRT/quiet border
Year: 2012
Tracklist
01. Pelas Águas (8:38)
02. Reza (8:04)
03. Cabe na Minha Ciranda (6:55)
04. Lindeza (5:26)
05. Só (8:09)
06. Parto (3:26)
07. Passagem (4:06)
08. Antídotodesejo (3:20)
09. Boi (5:26)
10. Luz da Terra (5:37)
ブラジルはミナス出身のSSW、アントニオ・ロウレイロの2nd。
昨年の11月末に発表され、各所で話題を呼んだようですね。1stの、セルフタイトル作品の時点ですでにかなり評判だったようですが、私はこの作品でようやく知ることとなりました。
一度聴いてみて、何よりも印象深かったのは、そのミクスチャー感覚の素晴らしさと、それを実現する作曲能力の高さです。
故郷であるブラジル/ミナスのサンバ、ボサノヴァ等の音楽やコンテンポラリー・ジャズ、クラシック/現代音楽、フュージョンやソウル、映画音楽/舞台音楽などを含む、非常にプログレッシヴなハイブリッド・ミュージックとなっていることは一聴して分かるのではないかと思います。
楽曲展開も一筋縄ではいかない上、テンションの上下も激しいです。
演奏の悦びに満ち溢れた、複雑な即興演奏を繰り広げた次の瞬間には、まるで思索に耽るように、ピアノ弾き語りで独白のような歌をぽつりぽつりと呟いたるするわけなのですが、それが無理な継ぎ接ぎではなく、とても自然に感じられるのです。
彼の音楽性に影響を与えたと推測されるミュージシャンとしてエルメート・パスコアルおよびエグベルト・ジスモンチが挙げられます。私はジスモンチの方を未聴で片手落ちではあるのですが、楽曲展開の複雑さ、奇天烈さについては間違いなくパスコアル並と言えるでしょう。(もしかしたらより複雑かも…)
エレクトリック・マイルスのような混沌とした音像も見え隠れしますが、音の感触は総じてオーガニックで心地良いです。
科学や哲学などを取り扱っていると思われる複雑かつ抽象的な歌詞はジルベルト・ジルも思い出させますね。
大体インストと歌の割合が半分ずつのアルバム構成ですが、ぼんやり聴いていると全曲歌があったような、あるいは全曲インストだったような不思議な感覚も覚えます。楽曲単体だけでなく、アルバム全体の構造も非常に自然に作られていることの証左ではないでしょうか。
これは丁寧かつ緻密につくられた、現代随一のプログレッシヴ・ミュージックと言っても過言ではないでしょう。
ロウレイロによる複数楽器の演奏だけでなく、同郷や、あるいは隣国アルゼンチンのミュージシャンも起用しており、海や都市(ミナス)の匂いだけでなく、世界を視野に入れたような広がりも感じさせる作品です。
現代ブラジル音楽の中でも、とりわけランドマークとして評価されるべき作品であると思います。
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