Lionel Loueke "Heritage"

Artist: Lionel Loueke
Album: "Heritage"
Label: Blue Note
Year: 2012
Tracklist
01. Ifê (7:37)
02. Ouidah (6:23)
03. Tribal Dance (7:14)
04. Hope (7:34)
05. Freedom Dance (4:40)
06. Chardon (6:12)
07. Farafina (5:29)
08. African Ship (2:47)
09. Goree (3:41)
10. Bayyinah (9:24)
西アフリカはベナン共和国出身のジャズ・ギタリスト、リオーネル・ルエケによる新作がBlue Noteよりリリースされました。
彼は、あのハービー・ハンコックにより見出されデビューしています。
そして、今作ではレーベル・メイトであり、何度か当ブログでも取り上げたロバート・グラスパーがルエケ本人との共同プロデューサー&鍵盤奏者として参加しており、そうした辺縁情報だけでも随分と期待値が上がりますね。
この人の特徴は、というとなんといっても、土着的なアフロ・フィーリングです。
ギター、そしてヴォーカルのいずれもが、むせ返るようなアフリカン・ミュージックの香りに満ちており、実際今までの作品ではかなりその色が濃かったようです。(未聴)
個人的には、アフリカン・ミュージックといっても、アフロ・ビートではなくむしろジュジュの影響が濃いように感じました。あのキング・サニー・アデそっくりのウィスパースタイルのヴォーカルや、小気味良くありながらも酩酊的なギターのハーモニクスなどにその片鱗が強く見られます。
しかしながら今作では、恐らくグラスパーの手腕に依るところが大きいと思われますが、そういったアフリカンな要素はある程度抑えられ、ジャズのフォーマットの中に巧みに組み込まれています。アフリカンな要素が苦手な方でも案外聴きやすいのではないでしょうか。
実際、土着的でファンキーな熱気は感じ取ることができるのですが、なんというか壁一枚隔てた場所からその熱気が発せられているようで、その熱気とは裏腹に非常にクールな印象があります。
また、これにはベーシストのデリック・ホッジ(Robert Glasper Experimentにも参加)とドラマーのマーク・ギリアナらリズム隊の功績も大きいと思います。ファンクや、そしてHIPHOP通過後のグルーヴは、熱気とクールさの両方をとても自然に兼ね備えており、プロデュースの方向性とよく合致し、アルバム全体の空気感を強めるのに一役買っています。
この作品は、『伝承/伝統』というアルバムタイトルの示す通り、アフリカン・ミュージック-ジャズ-ファンク/HIPHOPというブラック・ミュージックの一つの流れ、あるいは伝承/変遷の過程が濃縮されたものです。
ルエケとグラスパーの、レトロスペクティブかつパースペクティヴな視点がよく現れた名作であり、まさに今、「とても面白い」と思える作品に仕上がっていると思います。
↑動画タイトルは'Freedom Dance'とありますが、実際は'Tribal Dance'です。
![]() | Heritage (2012/09/03) Lionel Loueke 商品詳細を見る |
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